子どもの「性」どう教える 自分を守り相手を尊重する”境界線”とは – 西日本新聞

基本問題

 子どもの性被害や意図せぬ妊娠を防ぐため学校現場で何をどう教えるか、模索が続いている。昨年度から3年間を性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」と位置づける国は子どもを性暴力の被害者にも加害者にも傍観者にもしない「生命(いのち)の安全教育」を推進。福岡県も昨年、外部講師を学校に派遣する授業を始めた。一方、専門家には根本的な課題を指摘する声もある。 (本田彩子)

 「あなたの体はあなたのもの。どう行動するかはあなたが決めていい」

 福岡県内の小中高校などで行われる「性暴力について知る授業」。発達段階によって教える内容は変わるが、授業の冒頭に講師たちは「一番大切なこと」として必ずそう語りかける。

 小学校で最初に学ぶのは、自分と相手の「境界線」について。体、持ち物、気持ち、考え方。人はそれぞれ境界線を持ち、相手の境界線を勝手に越えてはいけない。それが自分を守り、相手を尊重することにつながる。動画やイラストを使って繰り返し伝える。

 「境界線が『ピンチ』の時はどんな時?」。児童の答えはさまざまだ。

 「お姉ちゃんが勝手にゲームを使った時」「手を挙げていないのに、先生に当てられた時」-。その時どんな気持ちになったかを聞きながら、「性の境界線」の話題に入っていく。

 紹介するのは「プライベートゾーン」。一般的に「水着で隠れるところ」とされるが、福岡県の授業では性別を問わず「体操服で隠れるところ」が「自分だけの大事なところ」。そして「性の境界線」も勝手に越えてはいけない-。

 中学生の授業では「性的同意」や「対等な関係」を考えさせ、同意のない性的な行為や発言はすべて性暴力であることを学ぶ。性被害に遭った際、経口の緊急避妊薬が使用できることや行政や民間の相談先があることも伝える。

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 福岡県の授業は「県性暴力根絶条例」に基づき昨年10月に開始。今年8月までに児童養護施設を含む計114カ所で実施した。

 「性暴力対策アドバイザー」と呼ばれる講師は現在53人が登録。養成講座を受けた「性暴力被害者支援センター・ふくおか」相談員や臨床心理士が担う。

 同センターは24時間体制で性被害の相談を受け付ける。昨年寄せられた相談は525人。うち4分の1(129人)が10代以下だ。子どもに性的な動画や写真を撮って送らせるなど会員制交流サイト(SNS)を使った被害も目立つ。

 子どもは被害に遭ったこと自体に気付けず、保護者が異変を感じて相談につながることも少なくない。相談員のコウさんは「性暴力とは何かを正しく理解することが第一歩。人権の問題として伝えたい」

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 性について、学校では学習指導要領に基づき主に保健体育で教えている。小4で月経や射精、変声などの体の発達と変化を、思春期に差し掛かる中1では体の変化は妊娠に必要なものであることを教える。中3では性感染症予防としてコンドームの使用を、高校では家族計画の大切さと中絶の危険性などを学ぶ。

 文科省は今年4月、幼児期から大学まで発達段階に応じた6種類の「生命の安全教育」教材を作成。全国の教育委員会に学校現場で積極的に活用するよう呼びかける。教材が伝えるのは生命の尊さや素晴らしさ▽自分や相手を尊重し大事にすること-などだ。小学校高学年では人との「距離感」やSNSの危険性など、中学校では恋人間の暴力など、高校ではセクシュアルハラスメントなどを学ぶ。

 11月以降、手を挙げた全国の学校や幼稚園など13団体49校でモデル授業を実施する見込み。同省は実践校の具体的な取り組みを集めて公表する方針だ。

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