三田国際学園中学校・高等学校(東京都世田谷区)は来年度、中学高校のクラス・コースを再編成する。2015年度の共学化1期生が、今年度募集の大学入試で出した高い合格実績を踏まえ、「英語」「サイエンスリテラシー」「コミュニケーション」などの力を養成するためこれまで取り組んできた「世界標準」の教育を、さらに高い次元で実現するための布石だという。今井誠副校長に、再編の内容や今後の展望を聞いた。
クラス・コース編成を貫く三つのキーワード
同校はこれまで、中学で「本科」「インターナショナル」「メディカルサイエンステクノロジー」の3クラス体制を取っていたが、これを来年度の1年生から、「インターナショナルサイエンスクラス(ISC)」と「インターナショナルクラス(IC)」の2クラス体制に再編成することを決めた。
中学2年次からはさらに「メディカルサイエンステクノロジークラス(MSTC)」が加わって3クラス体制となる。このクラスは「メディカルサイエンステクノロジー入試」を受けて入学した生徒が優先的に在籍するが、ISCで1年次にサイエンスリテラシーを身に付け、理数分野の専門的な研究に取り組みたい生徒も、選考を経て移籍できる。高校では、これら3クラスの名称を引き継いだ3コース制へと移行する。
今井誠副校長によると、同校のこれらのクラス・コース編成では、「THINK&ACT」「INTERNATIONAL」「SCIENCE」という三つのキーワードで説明される。クラス・コース名に含まれる「INTERNATIONAL」「SCIENCE」の重要性はもちろんだが、全クラス・コースの基盤となるのは「THINK&ACT」だという。
同校では全ての教科で、教員が投げかけるトリガークエスチョンについて生徒が自主的に調べ、ディスカッションして結論を導き、発表する「相互通行型授業」をベースとし、教科横断型授業なども行ってきた。「このように考えたことを行動に移す『THINK&ACT』を繰り返しながら、自立した学びと、創造する力を育てていきます」と今井副校長は説明する。
「INTERNATIONAL」は、多様性を受け入れ学ぶことと、「使える英語」の習得がポイントだ。現在ICの生徒の約3分の1が帰国生であり、来年度からは全てのクラスに帰国生が在籍することとなる。教室では、生徒同士が互いの違いを認め合い、異なる発想に刺激を受けているという。
「SCIENCE」は理科一般ではなく、教養としてのサイエンスを示すという。さまざまな事象を論理的に解明するリテラシーを習慣化させることを目指す。「まず課題を明確にして、解決に必要な情報を収集し、分析します。次に仮説を立て、検証し、解決策を表現して他者と共有する。そこで新しい疑問が生まれたら、また課題を策定していく。このサイクルを回して論理的思考を身に付けます」
ブラッシュアップされた3クラス・コースの特徴
新たに設置されるISCは、これまでの「本科」と「インターナショナル」の特長を統合したクラスであり、これら三つのキーワードをバランスよく反映している点に教育の特徴があるという。
「INTERNATIONAL」の要素を代表する英語の授業は、「Standard」「Intermediate」「Advanced」の3グループに分かれ、「Standard」以外は、ネイティブの教員がオールイングリッシュで指導をする。ホームルームクラスや実技教科は、一般生も帰国生も共に学ぶ。3年次には、希望者向けにオーストラリアでのターム留学(約3か月)を用意している。
「SCIENCE」の要素を象徴する「基礎ゼミナール」は、2、3年生を対象とする探究的な学習だ。文理の枠を超えた幅広い分野から、自分の興味に沿った講座を選び、自ら課題を設定して、調査・研究を行い論文にまとめる。
2年次から始まるMSTCは、研究者、医療者を目指す生徒が学ぶクラスだ。基礎ゼミナールより専門性が高い「基礎研究α」というゼミの授業が行われ、高校1、2年の「基礎研究β」へと引き継がれる。一つのテーマを4年間かけて研究することも可能だ。「基礎研究β」では、大学の研究室や企業を訪れて、専門家から指導を受ける機会が用意され、研究成果を外部で発表し、企業の助成を受けるなど本格的な活動が行える。
リニューアルされたICは、海外の学校のような教育環境の実現を図る。帰国生が多数を占めるクラスであり、ネイティブの教員がホームルームを受け持つ。英語、数学、理科、社会の授業は、英語を自由に使いこなせる生徒が対象の「Academy」と、これから英語を学び始める「Immersion」の二つのグループに分けて実施される。「Academy」は最初から4教科ともオールイングリッシュで授業を行うが、「Immersion」も段階的にオールイングリッシュの授業へと移行する。
また、英語のプログラムとして、帰国生とバディーを組むシステムや、長期休暇の集中講座、イングリッシュキャンプなどが用意されており、3年次にはターム留学、さらには1年間の留学も可能だ。今井副校長は、「これらを活用して、英語がゼロベースの生徒も、中学3年までに主要教科をオールイングリッシュで学べる力を付けていきます」と話す。
高校のICでは、西オーストラリア州教育省と提携したデュアルディプロマプログラム(DDP)を導入している。在学中に同州のカリキュラムに沿った授業を履修することで、三田国際の高校卒業資格と、同州の高校卒業資格(WACE)を同時に取得できる。さらにオーストラリア大学進学統一検定試験(ATAR)を受検することにより、英語圏の海外大学へ進学する選択肢を広げることもできる。
共学化1期生の合格実績が再編を後押し
同校が、来春のクラス・コース編成に踏み切った背景には、2021年度大学入試での共学化1期生の活躍があるという。今春の卒業生186人のうち、13人が国公立大学、20人が海外大学(編入を含む)、29人が早慶上理ICU、60人がMARCHに合格した。学部別では、医・歯・薬・看護・獣医系学部に25人、理学・農・工学系学部に62人の合格者が出ている。
同校は、変化を予測できない社会で活躍できる人材の育成を目標に、さまざまな学校改革を進めてきた。生徒たちが生きて自分の道を切り開くための五つの力を「考える力」「英語」「サイエンスリテラシー」「コミュニケーション」「ICTリテラシー」と定め、それらを育てる学びを「世界標準」の教育と位置付けて「発想の自由人」を育てることを目指している。さらに、「共創」や「探究心」など、身に付けたい12のコンピテンシー(資質・能力)を、学校生活のあらゆるシーンで意識した教育を行ってきたという。
「これらの取り組みが有機的につながった結果が、今年度の大学合格実績となったのでしょう。1期生が証明してくれた、これまでの『世界標準』の教育の有効性を、来年度のクラス・コース再編によってさらに高いレベルで実現し、さまざまな分野で活躍する人材の育成に取り組んでいきたい」と今井副校長は語る。
「社会で活躍できる資質の根源は、その人が持つ個性や潜在能力だと思います。それが本校の学びで磨き上げられ、輝きを放つことができたら、どのような場所でも輝いていける、そんな教育が理想です。そして生徒たちには、その輝きを他者のために使ってほしい。社会で活躍できる力を身に付け、社会に貢献する人に育ってほしいと思っています」
(文:北野知美 写真:中学受験サポート 一部写真提供:三田国際学園中学校・高等学校)
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