夏休みが終わり、高校受験生であるわが子の志望校決定の時期が近づいている。コロナ禍での遅れこそあれ、学校でも三者面談が始まった。
ここでわが子の成績ランクを詳細に暴露するのはさすがに控えるが、授業の理解度も高く、「学ぶ」こと自体も嫌いではないようだ。
突然の「通信制高校」の話題に戸惑う親たち
そんな中、先日の夕食の場で、突然「通信制高校」が話題にのぼった。同じ塾で同じクラスに通う友人のAさんが、通信制高校への進学を視野に入れているという。40代も半ばの私は「通信制高校」と聞くと、つい「学校に通えない不登校の子の進学先」と結びつけてしまう。中学3年間、風邪で数回休んだ程度のわが子には無縁の学校だと思っていた。
しばらく会話を進めると、かつてと比べて積極的に通信制高校への進学を検討する子が明らかに増えているということがわかった。わが子のクラスでは4人が志望しているらしい。不登校ではなく、毎日教室で授業を受け、部活動も全うしている顔ぶれだ。
通信制高校にどのような変化が起こっているのか。昨今の子供たちが希望する学びのスタイル、そして通信制高校の今を知るために、2021年9月11日に開催された「バーチャルスクールフェス2021 ワオ高等学校編vol.2」に参加してみた。
「あさ活」から始まる新概念の連続
ワオ高等学校(以下、ワオ高校)は、2021年春に開校したオンライン高校。1976年に創立し、能開センター、個別指導Axisなどを全国に展開する「ワオ・コーポレーション」が運営母体だ。
オンラインイベントはバーチャル空間「oVice」で行われた。バーチャル空間の画面上で、自分のアイコンを移動させ、近くにいる相手のアイコンと会話ができる。マイクのオンオフや画面のオンオフなども直感的に操作しやすく、何より画面上でアイコンが動くようすを俯瞰で見ることで、自分の居場所や行くべき場所がわかりやすい。ワオ高校では、今後日常の学校生活にもoViceを導入し、学生と教職員とのコミュニケーションを図る予定だという。
イベント開始と同時の10時「ワオ高生のモーニングルーティン~あさ活番外編~」のセッションが始まった。登壇したのは川本潤氏と教頭・河本尚氏。ワオ高校では平日9:45~10:00に「あさ活」を行っているという。「通信制というと『いわゆる学校のような時間割がなく、生活のリズムが崩れてしまわないか』と考える保護者の方もいらっしゃると思います」(河本氏)。まさにそれを不安視していた私は、食い入るように登壇者2人の会話を聞いた。強制こそしないが、ワオ高校では毎日の生活リズムを整えるための機会を設けているという。
軽快な会話はラジオ番組のパーソナリティのようだ。毎日のあさ活も、日替わりで教員がMCを担当するという。たとえば「ほかほかエクササイズ」の1つとして紹介されたのは、画面に無秩序に散らばった数字の中から1から50までを目で追う数字探しゲーム。保健体育の担当教員が「跳躍性眼球運動」の解説とともに実施するという。他にも、日本の流行語を英語で言い換える「朝からE-Time」、国語の担当教員が噺家さながらに「めざまし国語箚記」などが開催されるそうだ。頭の体操と学問への興味喚起が同時に行われ、一石二鳥のルーティンといえる。
バーチャル空間で「体」を移動する、極めてリアルに近い学校説明会
11時から始まったのは「オープンスクールを10倍楽しむための学校説明会」。登壇したのは校長の山本潮氏。セッションの最初には、バーチャル空間の床面のエリア区分を使ってアンケートを実施。「生徒だけで参加している方はA、保護者だけはB、親子で参加している場合はC、その他はDに移動してください」の発声のもと、アイコンがざわざわ移動する。Cのエリアにアイコンがやや集中し、親子で参加しているご家庭が多かった。子供の志望校を一緒に探したいと思ったとき、思春期で親子での外出を避けがちな子供とも、心置きなく自宅から参加できるバーチャルオープンスクールの可能性の高さを感じた。
進学指導歴20年の校長先生が語る「子供たちが望む学び」
続いて、山本氏から紹介されたのは、2019年10月に文科省から発表された「不登校児童生徒への支援の在り方について」の一部。それによれば、かつては不登校児童に対し「学校に登校する」という結果のみを目標に指導していたが、今後は「児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す」という。山本氏は「それぞれの子供たちが自分にあった場所、自信をもって自分が成長できるような場所を活用する時代になってきている。さらに最近の特徴では『独自の学びをしたい』『もっと新しい勉強をしたい』と意欲的に取り組む子供たちも増えてきた印象」と話した。進学指導で実績のある能開センターで20年間講師を務めた経歴をもち、多くの子供たちと接してきた山本氏の言葉は、非常に説得力がある。さらにワオ高校では、効率化されたカリキュラムにより、通常の高等学校での学習内容を25%程度の時間で完了し、残り8割ほどの時間で自身の興味の赴くまま、専門的な学びができるという。
学力偏重の勉強だけでは描けない未来
通信制高校は応募すれば入学できる。そう、漠然と思っていた。入学に際してどんな課題が課されるのか。13時から実施された「答えのない問いへの挑戦~ワオ高入試チャレンジ~」を聴講してみた。
登壇した入試担当・吉田和弘氏は学校における学力と社会で必要とされる力のギャップを紹介したうえで、日本企業における面接の質問サンプルを紹介した。「友人が試験でカンニングしたらあなたはどうしますか」「社長とあなたが大事な交渉に臨むとき、社長が来なかったらどうしますか」。つまり、社会で求められているのは「直感(Sense)で問題を見つけ、解決可能な課題に切り分け(Segment)、解決策(Story)を考える」力だと吉田氏は解説した。
吉田氏から提示された面接試験のサンプルは「行列のできるお店に1時間並んでいます。あと2人であなたの順番になりますが、突然誰かが割り込んできました。あなたならどうしますか」というもの。まず自分の立場を「A、声をかけて後ろに並び直してもらう」「B、何も言わない」「C、お店の人に言う」「D、その他」から選ぶ。その後、その行動をとった理由を説明してもらうことこそが、ワオ高校の入試の問いだという。「自分の行動に意味をもつ、背景を説明したうえで自分なりの解釈を表現できることが大切」と吉田氏は話した。
これからは「閉塞感のない学校」の時代
午前10時から午後15時までの5時間。お昼前後、家事で「ながら視聴」をしつつも、ちょうどお昼の時間帯に実施された「1期生によるワオ高公開会議」をはじめ、内容はほとんど頭の中に残っている。関心のあるテーマだったことも1つの理由だが、教員・スタッフ同士や教員と学生との会話が各セッションで和気あいあいと進み、いわゆるオンライン学校説明会では体験できない臨場感を感じられ、つい聞き入ってしまったからだ。
当日は紹介した他にも、データサイエンティストコース、起業コース、大学受験コース、留学コースの各専門コースの紹介セッションや、経済探究・科学探究・哲学探究などの体験型公開授業も開催された。
今回バーチャルオープンスクールに参加したことで、通信制高校・オンライン高校への認識がガラッと変わった。学びのワクワク感だけではなく、このご時世だからこそ注目したい遠隔教育・オンライン教育に関する蓄積されたノウハウも感じられたのは、学校に子供を預ける親としても非常に安心できた点だ。今さらながら「学校」の固定観念を払拭できたことで、あらためて子供の高校受験に向き合えそうな気さえする。
ワオ高校によれば、次回は10月7日を予定しているという。わが家も次回は他のご家庭同様、子供も誘って親子で参加してみようと思う。
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