中央教育審議会(中教審)初等中等教育分科会の教育課程部会が9月30日開かれ、コロナ禍のオンライン授業について、高校入試での柔軟な対応や、授業としての質の見極めを求める意見が相次いで出された。末冨芳・日大教授は高校入試について「公立、私立を含め、入試での出席停止、今年度の観点別評価の取り扱いを大幅に柔軟化すべきだ」と主張。戸ヶ﨑勤・埼玉県戸田市教育長は「オンライン授業は可能性がどんどん生まれている一方、さまざまな課題が明らかになってきた。授業として認めていいのかと思われる単なる配信もある。出席の扱いについては、高校入試等で不利益にならないための対応を一層徹底する必要がある」と述べ、現状ではオンライン授業を対面授業と同等に扱うべきではないと指摘した。
末冨教授は「(コロナ禍の)第5波が今収束しつつあるが、地域によって感染状況は全く異なる。現在、出席停止の運用が自治体によって必ずしも一致していない。高校入試については、公立、私立を合わせて、一体この出席停止がどのように不利になり、感染症予防もしくは濃厚接触等による出席停止が観点別評価に対して大きくマイナスにならないか、と心配する声が多い。マイナスになってしまうのであれば無理をしてでも学校に行く、という相談が寄せられている」と指摘。
その上で、「公立高校のみならず、私立高校も含めて、入試において出席停止、あるいは今年度の観点別評価の取り扱いを大幅に柔軟化すべきだ。これは第6波の予防に対しても必須のことになる」と主張した。
戸ケ﨑教育長は「各学校でオンラインを活用した学習に積極的に取り組んでおり、日常的なさまざまな授業モデルの実践が日々蓄積されている。新たな学びのモデルを構築していくイノベーションの大きなチャンスであり、特に習得型の学びを中心にて、多様なニーズのある子供たちに手を差し伸べられる可能性がどんどん生まれてきている」とした上で、オンライン授業について「実践を通しながら、さまざまな課題が明らかになってきている」と問題を提起。
具体的な課題として「対面での学習に比べて、オンラインでは非言語のコミュニケーションや、グループワークが大変難しくなるため、授業の質が十分に担保されない」「どうしても画面上の見える範囲が限られるので、一覧性とか俯瞰(ふかん)性に弱点がある」「学習者の感情的なものとか、学びのプロセスとか、(児童生徒が)学んでいる手元を確認しながら、定着につなげていくことが困難で、教師が学習のサポートをタイムリーにできない」と例示した。
さらに「対面による授業は、人間社会を体験する場であり、教師と子供の、また子供同士の働き掛けの機会だからこそ、協働的な学びなどを通じて『生きる力』を育むことができる。休み時間のたわいもない会話などが、本来大切な要素とも考えている。150年の長い歴史を持つ対面の授業に比べ、義務教育でのオンラインの学びは、まだ1年程度の浅い実績しかない。その学習の質は正直さまざまであって、果たして授業として認めていいのかと思われるような単なる配信もあるのも現実と思っている」と続け、現状ではオンライン授業を対面授業と同等に扱うことはできない、との見方を示した。
オンライン授業の出席の扱いについては「教員や保護者の心情も理解できる。国としては、欠席にはならないことをこれまで以上に周知を徹底してほしい。都道府県教委は、高校入試等の調査書で、欠席のみを記載するなど、(受験者が)不利益にならないための対応を一層徹底する必要がある」と指摘した。
文科省は、コロナ禍におけるオンライン授業について出席扱いではなく、校長の判断で「出席停止・忌引等」として扱い、指導要録に「オンラインを活用した特例の授業」として記録することができると通知している。また、来年春の高校入試では、出席扱いとならなかった中学生が不利にならないように、調査書における出席日数などの取り扱いについて高校側に配慮を求めている。ただ、政府の規制改革推進会議子育て・教育・働き方ワーキンググループ(WG)では、オンライン授業を受けた場合に出席扱いではなく、出席停止・忌引等の扱いとなる現行の対応について、複数の委員から「理解しづらい」との声が相次いだ。
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