教育課程部会(第125回) 議事録:文部科学省 – 文部科学省

教育課程部会(第125回)-議事録:文部科学省-–-文部科学省 花のつくりとはたらき

1.日時

令和3年7月15日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式 ※傍聴は,Webex Eventsでの参加のみとなります。

3.議題

  1. STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬部会長】 皆さん、こんにちは。部会長の荒瀬でございます。


定刻を少し過ぎましたが、ただいまから第125回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会を開催いたします。第11期といたしましては、第3回の教育課程部会でございます。


本日は、大変御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本部会につきましては、報道関係者から写真撮影及び録画・録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきいただきたいと思います。


議事に先立ちまして、先月28日に千葉県八街市において発生した飲酒運転による交通事故により、尊い命を落とされたお子様に深くお悔やみを申し上げますとともに、けがをされましたお子さんの一日も早い回復を心からお祈り申し上げます。


子供の命がこういう形で失われるということは、あってはならないことでありますので、本当に心を痛めていらっしゃる方はたくさんいらっしゃると思いますが、本当に二度とこういうことがないようにということを願っております。


また、静岡県熱海市における土石流災害をはじめ、全国的に大雨による大規模な災害も起きております。お亡くなりになった方の御冥福と、被災された皆様が一日も早く平穏な生活を取り戻されることを心からお祈り申し上げたいと思います。


それでは、議事に入ります。本日の議題は2つございまして、まず、STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について、2つ目といたしまして、学習指導要領実施状況調査について、御説明をいただくということにしております。


では、本日の資料及び会議の説明につきまして、石田教育課程企画室長から御説明をよろしくお願いいたします。


【石田教育課程企画室長】 それでは、初めに、会議の留意事項を御説明申し上げます。本日は、Webex Eventsを使用したウェブ会議と対面による会議を組合せた方式にて、開催させていただきます。そのため、御発言に当たりましては、インターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただく、御発言の都度、名前をおっしゃっていただく、御発言以外はマイクをミュートにしていただく、御発言に当たりましては、手を挙げるボタンを押していただき、発言が終わりましたら、手を下げるボタンを再度押していただき、手を下げていただくよう、御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。


続きまして、本日の資料について御説明をいたします。議事次第が、今、映ってございますけれども、本日の会議資料は、資料1から資料3まで、及び参考資料1から2-5までがございます。


参考資料2-1から2-5につきましては、先日の初等中等教育分科会におきまして、幼児教育の質的向上及び小学校教育との円滑な接続に向けた方策の検討のため、初等中等教育分科会の下に、「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」が設置されておりますので、関連する資料を配付させていただいております。初等中等教育分科会全体の動きとして、御承知おきいただければと考えてございます。


事務局からの説明は以上でございます。また、御不明な点がございましたら、事務局までお申しつけください。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


それでは、議題の(1)に移りたいと思います。


繰り返しになって恐縮でございますが、今期の教育課程部会では、新学習指導要領の着実な実施に向けて、議論を行っていきたい旨を申し上げてきたところです。


令和3年1月26日の中央教育審議会答申におきましては、新学習指導要領の下での探究的な学びの充実に向けて、高等学校の新学習指導要領に新たに位置づけられた「総合的な探究の時間」、あるいは、また新設されました「理数探究」等を中心として、STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進が提言されております。


これを踏まえ、本日は、事務局と相談の上、STEAM教育等の教科等横断的な学習を議題として取り上げさせていただくことといたしました。


また、第10期の教育課程部会での議論も踏まえつつ、本日は、まず、文部科学省における取組の現状を御説明いただくとともに、具体的な学校・教育委員会における取組につきまして、兵庫県教育委員会、兵庫県立加古川東高等学校、高知県立山田高等学校に、御発表をお願いさせていただいております。


委員の皆様には、こうした発表を踏まえて、新学指導要領の下での学校教育におけるSTEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について、闊達な御議論をお願いしたいと考えております。


では、まず、事務局から、文部科学省の取組の現状につきまして、御説明をいただきたいと思います。


滝波教育課程課長、よろしくお願いいたします。


【滝波教育課程課長】 教育委員会や学校からの御発表に先立ちまして、私のほうからは、資料1に基づきまして、これまでの議論と取組の現状につきまして、かいつまんで御説明を申し上げたいと思います。


画面共有されておると思います。


まず、我が国の学校教育において、STEAM教育への関心が高まっているというあたりの背景につきまして、1ページのところですけれども、御説明したいと思います。


我が国におきましては、中学校から高等学校にかけて、生徒の授業への満足度が低下する傾向があるということ。


また、2ページですけれども、高校生の学校外の勉強時間が二極化するというような傾向があるということなど、生徒の学習意欲に関する課題が指摘をされているということがございます。


また、3ページになりますけれども、理数教育に関しましては、TIMSS、国際的な学力調査の中で、高い成績は収めているわけですけれども、一方で、数学や理科の勉強が楽しいと回答する児童生徒の割合につきましては、小学校と中学校を比べますと、大きく差があるというようなこと。


4ページになりますけれども、数学や理科を使うことが含まれます職業に就きたいと回答する子供たちの割合が、国際平均に比べますと、大変低いということ。


こういったような課題が指摘をされているところでございます。


5ページでございますけれども、さらに平成28年の中教審答申ですけれども、学校における探究学習の中心となります総合的な学習の時間をめぐりましては、児童生徒の学習の姿勢の改善に大きく貢献するという評価がされている一方で、各教科等との関係が学校によって明確ではないということ、また、高等学校におけるさらなる充実が求められているということなどの課題が指摘をされているということがございます。


6ページですけれども、こういった課題を踏まえまして、今般の高等学校学習指導要領の改訂におきましては、「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」と改めまして、資質・能力の三つの柱に沿った目標の整理、あるいは、教科等横断的な視点で育成する資質・能力との関係の整理といったことを行ったところでございます。


7ページですけれども、これまでのスーパーサイエンスハイスクールの実践の蓄積などを踏まえまして、共通教科「理数」というものを設けるなどの改善を図ったところでございます。


8ページになりますけれども、一方で、STEAM教育につきましては、現在、学校の内外、あるいは初等中等教育段階に限らず、様々な取組や実践が行われております。


経緯といたしましては、アメリカ等におきまして、STEM教育にAを加えるというような形で発展をしてきてございます。このAの意味するところは、芸術から広く人文・社会科学へと広がってきているということがあるかと思います。


9ページになりますけれども、第10期の教育課程部会におきましては、STEAM教育と今般の学習指導要領の改訂で設けられました「総合的な探究の時間」、あるいは、共通教科「理数」が、その狙いとするところ等におきまして、多くの共通点があるということについて、整理がされたところでございます。


10ページになりますけれども、そういった上で、今年の1月の中教審答申におきましては、記載のような事柄が盛り込まれたところでございます。


まず、文系・理系といった枠にとらわれずに、各教科等の学びを基盤としながら、それを統合して、課題の発見・解決、あるいは、社会的な価値の創造に結びつけていく資質・能力の育成が求められるということ。


STEAM教育につきまして、人材育成の側面のみならず、STEAMを構成する各分野が、複雑に関係する現代社会に生きる市民として必要となる資質・能力の育成を志向する側面に着目いたしまして、STEAMの中のAの範囲を幅広く捉えて、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進するということが重要であるということ。


次の11ページにもありますけれども、2つ目の丸だと思いますが、実社会での問題発見・解決に生かしていく高度な内容となるものであるということから、高等学校で重点的に取り組むべきものであるけれども、その土台として、小中学校での教科等横断的な学習の充実等に努めることも重要なんだということ。


12ページですけれども、1つ目の丸ですが、高等学校においては、「総合的な探究の時間」、あるいは「理数探究」などを中心に、関係機関と連携して取り組むことが期待をされているということ。


3つ目の丸ですけれども、国においては、事例の収集・周知などを進める必要があるということ。


こういったことが、今年の1月の答申の中で盛り込まれているところでございます。


13ページでございますけれども、また、答申の中では、高校改革についても盛り込まれておりまして、これを踏まえまして、各学校でスクール・ポリシーを策定をしていくということ。


「普通教育を主とする学科」としまして、「学際領域に関する学科」や「地域社会に関する学科」などの設置を可能とすること。


14ページにわたりますけれども、これらの学科では、関係機関と連携して教育を行っていくということなどの制度改正が行われまして、来年4月から施行されるということになってございます。


15ページになりますけれども、このような議論ですとか、背景を踏まえまして、学校教育におけるSTEAM教育等の教科等横断的な学習の推進についての考え方を、このページにまとめてみました。


今、御説明してきたような内容のことが、上の箱書きのところに書いてございます。これを踏まえまして、学校や教育委員会等における取組につきまして、この資料の中央部分、ブルーの背景のところに構造化をして整理して記載してみました。


右側のところですけれども、教育委員会等の設置者におきましては、学校への助言等を行いますとともに、ICTの活用に関する支援ですとか、または関係機関や人材、コンテンツ等の学校外のリソースとのマッチング等を通じまして、各学校の取組を支援することが期待されているということがあると思います。


その左部分ですけれども、各学校につきましては、まず、文理の枠を超えた教科等横断的な視点で、教育課程を編成・実施するとともに、各教科の教師の専門性を生かした協働体制の構築、あるいは教師の負担軽減に配慮した外部リソース、あるいはICTの活用などのカリキュラム・マネジメントを行っていくということ。


左下のところになりますけれども、教育活動としまして、各教科等における探究的な学習活動を充実して、各教科等の学習を深めるということ。その右のところになりますけれども、「総合的な探究の時間」や「理数探究」等を中心に、それらを総合的・統合的に生かしていく探究活動を充実させるということを、相互に関連づけながら実施をしていくということが重要なのかなと考えております。


また、こういったことを通じまして、下段の部分になりますけれども、生徒の知的好奇心ですとか、探究心を引き出して、学習意欲を向上するということ、また、文理の枠を超えた複合的な課題を解決する資質・能力を育成するということ、また、高校の多様な実態を踏まえた探究学習が充実をするということなどによりまして、新学指導要領の目指しております「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた、新しい時代に必要な資質・能力の育成につなげていくということができればいいかなと考えております。


16ページのほうになりますけれども、文科省では、こういった取組を支援するために、当面、16ページのような内容の取組を行っていきたいと考えております。


まず、左上ですけれども、すぐできることとしましては、各地の学校ですとか、教育委員会等で進められつつあります実践について、情報を収集して、ウェブサイトを通じまして、周知を図っていきたいということを考えております。


本日、そのためのウェブページをオープンすることにしておりまして、この中では、今日、この後、御発表いただきます兵庫県教育委員会、あるいは高知県の山田高等学校などの取組について、御紹介をしていきたいと思っております。


今後、各地の多様な学校の実態を踏まえまして、事例の充実を進めていきたいと思っております。


右側のところですけれども、各地の教育委員会におけるカリキュラム・マネジメント等の支援に係る相談体制を整備したいと思っております。高等学校の各教科等の専門的知見をお持ちの方々を協力者に位置づけまして、各地からの相談に対応して助言ができる体制を構築していきたいと考えております。


左下になりますけれども、今後、「総合的な探究の時間」に関する手引の改訂を行いまして、STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進に資する観点を盛り込んでいきたいと考えております。


右下になりますけれども、さらに、STEAM教育につきましては、いろいろな政府全体の議論の中で、例えば経産省の産業構造審議会ですとか、あるいは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議などといったところでも、議論がなされておりますので、これら関係機関等との連携も図りながら、取組を進めていきたいと考えております。


まず、文科省としての説明は以上でございます。よろしくお願いします。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


今、資料の1を使って、御説明をいただきました。15ページに、全体のまとめという形で、書いていただいています。新学習指導要領の着実な実施ということでいいますと、まさに高校生の一人一人の学習意欲をどう向上していくのかと、そこにつながっていくということが、非常に重要ではないかと考えます。


では、その具体のお取組ということで、兵庫県教育委員会、兵庫県立加古川東高等学校、高知県立山田高等学校の御発表をお願いしたいと思います。


最初に、兵庫県教育委員会、西田高校教育課長、兵庫県立加古川東高等学校、志摩校長先生にお願いをいたします。よろしくお願いいたします。


【兵庫県教育委員会(西田)】 兵庫県教育委員会高校教育課の課長の西田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。


今、映していただいております画面のロゴにつきましては、兵庫型STEAM教育のロゴを作りました。STEAMの各領域の融合をイメージして、デザインをしております。


次、お願いいたします。


本日の発表の流れですが、まず、県教育委員会から説明させていただいた後、県立加古川東高等学校の取組について、志摩校長から説明をさせていただきます。


次、お願いいたします。


まず、概要からです。兵庫型STEAM教育につきましては、文理融合型のカリキュラムを開発し、新たな価値や課題解決への道を切り開く人材を育成するということを目的としまして、令和2年度にモデル校3校を指定し、協力校1校とともに、カリキュラム開発に取り組んでいます。


モデル校3校の選定に当たりましては、兵庫県という広い県でございますので、地域的なバランス、そして、これまでの探究活動のノウハウを持っているというSSH等の指定校というところから、考慮をいたしました。


この事業では、まず、一つに、文理融合型のカリキュラム開発、2つに、STEAM学科の新設、3つに、文理融合型カリキュラム・マネジメントの全県展開を目指しております。


兵庫型STEAM教育の特徴としましては、このSTEAMというものを基本としまして、Eの部分については、Englishを追加をいたしまして、英語で成果を発表するなどの活動を加えて、取り組んでいるところです。


また、取組につきましては、SSH等で実践をしております仮説検証型と生徒個々の発想力に重点を置く課題解決型が両輪となるよう、探究活動をカリキュラムの中心に位置づけて、展開することを目指しております。


また、AのArtの領域につきましては、アート(芸術)とリベラルアーツの軸の幅の中での取組と、それから、理解「知る」、「知ること」、応用・活用、「つくること」の2つの軸の中に、それぞれの探究活動を位置づけることを意識して、取り組もうということを、共通認識として、進めてきております。


次、お願いいたします。


令和2年から3年間の全体のスケジュールになります。STEAM教育の広報、教員の資質向上のための海外研修、カリキュラム開発、3つの項目に分けております。


ただ、新型コロナウイルス感染症拡大によりまして、教育活動には大きな影響を与えておりまして、最初の予定よりは変更を余儀なくされているという状況はございます。


次、お願いいたします。


県教育委員会では、モデル校での取組を充実するために、支援を行っております。


そこに挙げております、1と2にありますハード面につきましては、昨年度、全県立高校に対して、校内通信環境の整備や大型提示装置の配備等を行いました。


それに加えまして、モデル校に対しては、パソコンや工作機械を効率よく活用できるラボ、STEAM ROOMと呼んでおりますが、整備をしております。ここには、3Dプリンター、レーザーカッター、ドローン、ヒューマンロボット等の機器を、各校の内容に応じて、配置をし、探究活動を効率的に展開しております。


3のところのオーストラリアでやっておりますSTEAM教育への理解を深めるというために、オーストラリアへの派遣を予定をしておりましたが、できない状況になりましたので、メルボルン大学で活躍中の兵庫県出身の方に依頼をしまして、これまで3回にわたって、オンラインでの教員研修会を開催をいたしております。


4は、実際に指導に当たる教員が共通認識を持って、効率よく取り組むということが大切になってきますので、そのための情報交換会を定期的に開催することや、各校の進捗状況や課題を共有できる時間を設けて、進めてきております。


次、お願いいたします。


5の本事業を進めるに当たっては、企業や自治体等との連携は欠かせないということになります。本県の取組に協力していただけるSTEAMアンバサダーを構築する必要があると考えています。兵庫県出身の企業家や地元自治体と連動した取組を重ねることで、協力の輪を広げるとともに、活用のノウハウを蓄積していきたいと考えています。


6の本県の特徴であるE、Englishにつきましては、英語を母国語とする外国人教員を、今年度から初めて2名を採用いたしました。そのうちの1名をモデル校に配置をしまして、英語だけではなくて、探究活動の指導までしていただきたいと思っております。


7の兵庫型STEAM教育を全県に普及するために、中学生、小学生、その保護者に対して、広報ということが、重要になると考えております。


リーフレットの配布や動画を作成をいたしまして、それらをホームページに掲載したり、あるいは、神戸市の中心街にある大型スクリーンで、放映をするというようなことをしております。


次、お願いいたします。


モデル校の選定に当たりましては、普通科と理数科を設置して、国のSSHであったり、地域との協働事業の指定を受けている高校を選定をいたしました。STEAMに関しまして、それぞれの学校の特徴を踏まえて、構想を立てて、取り組んでおります。


そこにそれぞれの学校の取組を載せておりますが、例えば兵庫高校は、地域と連携した探究活動等と関連づけるように、情報等において、ビッグデータの活用についての学習を充実させています。


加古川東高校は、後ほど、また御説明させていただきます。


豊岡高校では、平田オリザ氏が学長を務めます、今年度開校しました県立芸術文化観光専門職大学の協力も得ながら、演劇的手法を取り入れた取組や「教養の深化」を図るようなカリキュラム開発をしているところです。


最終的に、この事業は3年間でございますが、この3年間の事業終了後においては、STEAMに特化した新学科を設置するということであったり、モデル校が開発しましたSTEAM型カリキュラムを活用し、県下全域における文理融合型カリキュラムの展開、これらを目指しているところです。


兵庫県の取組としまして、私からは以上となります。


【加古川東高校(志摩)】 それでは、兵庫県立加古川東高等学校の校長の志摩と申します。どうぞよろしくお願いします。


続きまして、加古川東高校での取組を御覧いただているような流れで、御説明いたします。


本校では、STEAM教育導入の以前から、長年、探究活動を推進してきた土壌がございましたので、まずはその取組を紹介させていただいた後に、STEAMでの取組について説明を進めてまいりたいと思います。


次をお願いします。


本校は、大正13年設立、旧制加古川中学校を前身とする創立97年目の学校でございます。


普通科が各学年7クラス、理数科が各学年1クラスで、約1,000人の生徒が在籍しておりまして、卒業生は、国内外で活躍しております。


特色ある行事としましては、生徒会が中心となって、企画・運営まで行う体育祭ですとか、文化部発表会、生徒が司会・進行を進めていきます人権ホームルームなどがございまして、一貫して、生徒の主体性を育んでいるところでございます。


海外との交流についても、長年続けてまいりましたアメリカ研修は、コロナ禍で、この2年、中止とさせていただいておりますけれども、台湾にございます台中女子高級中学校と、今年度もオンラインで交流を続けておりまして、今年度については、共同研究も行う予定でございます。


5年前から、探究活動を全生徒で展開しておりまして、指導体制も全教員が関わる形にしております。今では、本校の特色の一つとなっております。


卒業生対象の調査でも、本校教育の中でよかったことという問いに対しては、約8割の生徒が、課題研究を一番に挙げるまでになっています。


次のスライドをお願いします。


本校の現3年生の教育課程です。本校では、理数科、普通科ともに、探究活動を中心に据えて、カリキュラムを展開しています。


多くの学校と同様と思いますけれども、普通科は第2学年から、文系、理系に分かれて、学習する形としています。


赤字で示しております科目については、本校が特に力を入れて研究開発を行ってきた特色ある科目です。理数科の課題研究、普通科の探究については、3年間を通して活動をしているところです。


次のスライドをお願いします。


本校は、3期16年にわたって、スーパーサイエンスハイスクール、SSHの指定をいただいております。


課題研究を含めた特色ある科目の研究開発については、このSSH事業が大きなきっかけとなっています。SSHでは、1期目は理数科を主対象としまして、2期目は自然科学部を加え、さらに3期目では、普通科を加えて、徐々にその対象を全校に広げながら、研究開発を進めてまいりました。


特に3期目が始まった5年前から、全校生徒が、ここに示す形での探究活動に取り組むようになりました。


次のスライドをお願いします。


また、本校では、従来から、通常の授業においても、探究的な活動を取り入れてまいりました。ここに挙げてございます家庭科と保健体育科の取組は、10年以上継続しておるものでございます。


家庭科では、夏休みの宿題を「ホームプロジェクト」としまして、家庭内で実践した内容をレポートとして提出させています。家庭の中で問いを探すことで、家庭内での会話も生まれ、場合によっては、保護者にも協力してもらうなど、コミュニケーションの場にもなっています。取組例にあるような面白いテーマでの実験をするという生徒もたくさんいると聞いています。


保健体育科では、図書館を利用して、各自で、健康・スポーツ・保健に関する研究を行っています。文献調査をするというところが特徴で、2年間の保健の学習の集大成となっています。


地理歴史科は、比較的新しい取組ですが、昨年度のSTEAM特別講座の取組の一部を授業に導入したものです。内閣府が提供するRESASと呼ばれるビッグデータを可視化するツールを用いて、加古川市と人口規模等が比較的似ている市等を比較し、課題を見つける授業としています。


この授業の中で、花卉生産が宝塚市の特徴だと気づき、その歴史を調べる中で、それが、平安時代から続く伝統栽培であることに気づいた生徒もいました。


これら通常授業での取組と探究の時間とを、今後も関連づけていこうと考えています。


次をお願いします。


普通科での探究活動を示しています。


第1学年では、SDGsを大きなテーマにしたミニ課題研究を実施して、その中で、問いの立て方、仮説の立て方、分析の仕方など、研究の流れを学びます。


第2学年では、一から問いを立てて、研究に取り組みます。これらの取組を充実させるため、各教科にその内容の学習機会、時期などを合わせてもらうなど、いわゆるカリキュラム・マネジメントを行っているところです。


例えば、数学Ⅰの統計分野を学習順序を入れ替えて、つまり、少し早めて、9月に学習したり、理科では、生徒実験の方法を工夫して実施し、自然科学分野の研究の精度向上に取り入れるなどの工夫をしています。


情報科の取組では、第2学年の課題研究のまとめの時期に、授業で、図表の作成の指導をし、ポスターや論文作成をさせています。


また、英語科のコミュニケーション英語Ⅰでは、第1学年のミニ課題研究の成果を英語にして、発表する取組を行っています。これは、もともと、理数科の2年生で、英語での課題研究発表を行っていたものを、普通科に取り入れて実施しているものです。


次をお願いします。


これまでお話ししてきましたように、本校では、これまでも様々な取組を実施していましたので、一昨年度、県からSTEAM教育実践モデル校に指定を受ける際に、どのような形で実施していくかについて、校内で議論を重ねました。


そこで、原点に戻って考えようということで、いわゆるグラデュエーション・ポリシーと照らし合わせて、STEAM事業の目標設定をしました。本校は、校訓の明朗親和、自治創造をベースにしつつ、6年ほど前に、育てるべき生徒像、いわゆるグラデュエーション・ポリシーを策定をしまして、「正解」のない社会を切り開く力、そして、9つの力を伸ばすよう、教育活動を展開してきました。また、その力の伸びを、入学時、各年度の末、卒業時、卒業後の調査を基にして、分析してまいりました。


この中で、真ん中のところですけれども、他の力に比べて、新しいことに「挑戦する勇気」の伸びが小さいことが分かり、今回のSTEAM事業では、この力の中の好奇心、関与力、そして、右側にあります課題解決力の向上をターゲットとすることにしました。


次をお願いします。


STEAM事業に取り組む上で、校内の組織も改編をいたしました。本校では、一昨年度までは、理数科SSH推進部と教育企画部というものが別々に存在していましたけれども、これを教育企画部に統合いたしました。


教育企画部では数学の主幹教諭が部長となり、理科、地歴、英語、国語の教員が合計11名在籍する校内で最大の部署となりました。


ここでは、このSTEAM教育を推進する係のほかに、探究係、SSH事業企画運営係、図書係などを置いておりまして、それらが連携して取り組んでいるところです。


中央の企画実施の流れは、この教育企画部で立案の後、管理職を含んだSTEAM教育推進委員会で協議をしまして、会議の議事録は全職員へ配付して、職員からの意見を、教育企画部が取りまとめ、それを踏まえて、企画を再検討した後、職員会議で共通認識を図るという流れを取っています。


また、右の図のように、教科との連携を図るため、実情に応じて教育課程委員会や教科会議で検討していただくこともしています。


次をお願いします。


教科横断型の活動に取り組む上では、教員の理解や研修も大切になってまいります。こういった研修についても、教育企画部が中心となって、開催をしています。


STEAM係としては、昨年度は特別講座の前に、ここに挙げたような研修会を実施いたしました。


また、探究活動についても、探究係が、その企画運営の中心を担っておりまして、例えば、探究の「問いを立てる」という場面での研修会なども実施をしています。


いずれも多くの教員が参加し、共に学び合いながら、研修を進めているところです。


次をお願いします。


ICTの活用については、先ほどの県からの発表でもありましたけれども、昨年、本校も、通信環境を含めたICT環境が整備をされましたので、それを使いながら、SSHやSTEAMで購入した物品を、教育企画部が一括して管理をし、積極的に活用するとともに、貸出しや使い方の指導等にも対応しています。


また、最新機器を購入した際は、まずは教育企画部の教員が使い方を習得して、その後に、先ほど紹介したような教員対象の研修会を実施したり、生徒に対して、機器の使い方等のフォローができるようにしています。


次をお願いします。


学校外リソースの活用についても、教育企画部が中心となって進めています。これも、SSH事業など、今までのつながりを活用したり、また、今回のSTEAM事業を取り組む中では、加古川市役所の職員の方からの紹介などで、新たなつながりも開拓できました。


ただし、こちらについては、教員の負担を減らすことには、まだまだ課題があるのではないかと思われます。教員には、もちろん、まず、授業があり、そして、学校行事、部活動等の指導もあります。生徒の学習指導や進路指導にも対応しなければなりません。


外部とつながることによってのメリットは、大きいことは大きいのですが、一方で、充実した取組とするためには、打合せを複数回、行って、共通理解をしながら進めたりする必要もあり、そのために、かなりの時間を割くこととなります。このように、調整等の負担が大きいのが実情です。


次のスライドをお願いします。


STEAM事業については、校内で繰り返し議論をした結果、最終的には、特別講座というものを中心に実施することとしました。特別講座は、夏季休業中を中心に、課外で、各講座、20名程度、普通科、理数科、関係なく、1、2年生の希望者を対象にということで、実施をいたしました。


昨年度は、夏の特別講座に123名、複数受講した者もおりますので、延べ209名の生徒が受講をいたしました。


特別講座では、接点が少なかった理数科と普通科、そして学年をまたいでの活動が行えたことが、メリットでした。


今年度の特別講座に取り組みながら、そのエッセンスを通常の授業に取り入れ、全生徒、全教員が実施できる形とすることで、裾野を広げようと考えています。


そして、この取組を課題研究の深化につなげていきたいと考えています。例えば、STEAM事業で購入したセンサーですとか、3Dプリンター、レーザー加工機を利用して、データ取得の自動化を図ったり、自作実験器具を作成することができますが、昨年度は、実際に風車模型を作成したり、温度センサーを利用して、室温の変化を追った班もございました。


また、人文科学系や社会科学系の提案型研究では、提案して終わりの場合も多く、せっかくのアイデアが実際に生かされないこともありますけれども、今後はアプリを開発するなどして、実際に活用してもらうなど、実証研究まで深めていきたいと考えています。


次をお願いします。


昨年度の特別講座の様子です。合わせて、10の特別講座を開催いたしました。


また、夏には、STEAMデーといったイベントや地域デザイン発表会を、外部の方にも参加いただいて、本校で開催をいたしました。


また、冬、12月の地域デザイン最終発表会は、加古川市役所で開催をさせていただきました。加古川市の市長様をはじめ、大勢の市の職員の方にも参加をしていただき、生徒たちの提案を聞いていただきました。


次をお願いします。


特別講座では、最終的に各個人やチームで考えたアイデアを形にするということを大目標に、初めに基本的なスキルをトライアルとして身につけさせることをします。例えば、トイドローンの講座では、課題のコースを指示どおりに動くドローンのプログラムを作りながら、操作方法等を学び、その後は生徒の自由な発想で取組をさせました。このとき、できるだけ、生徒たちだけで課題解決しているように、教員はファシリテーターの役に徹してもらっています。


本校の課題研究では、問いを立てる、いわゆるリサーチ・クエスチョンを立てるということを重視しておりまして、毎年、どのグループも課題設定に苦労をしております。


その点、STEAMの特別講座では、具体的な大目標があっての課題設定となるため、生徒たちにとっては、比較的取り組みやすかったようで、短期間ではありますが、自分たちのアイデアを具体化して、成果物まで仕上げてくる班が多く、感心させられました。


次をお願いします。


昨年度の夏の発表会での発表タイトルです。限られた時間の中での実施でしたが、どの班も、ユニークなアイデアを形にしてくれました。


今年度は、8月4日に、オンラインで、こういった発表会を実施する予定です。


次をお願いします。


御覧いただいたように、昨年度は特別講座として実施してまいりましたが、今年度は、そういったSTEAM的な要素を通常の授業に取り入れて、実施しようとも考えています。お示ししているものは、あくまでも案の状態ではありますけれども、できるだけ全教科で、STEAM的要素を取り入れた授業に挑戦しようと考えています。


次をお願いします。


また、特別講座については、今年度も、こういった形で計画をしております。今年度は、行政や企業、大学との連携と実施内容の高度化を目指しています。


昨年度つながりができました加古川市の紹介で、企業と連携した講座を開講することもできました。昨年度、市に提案した課題を実際に解決することを目指す、御覧いただいております⑧番、「オープンデータを使ってアプリを作ってみよう」ですとか、その下⑨番の「自分たちのアプリデザインで加古川市をアップデートしてみよう」といった講座も予定をしております。


こういった講座に、今年度は230名、延べ369名の生徒が申し込んでおるところでございました。昨年度よりも、参加生徒数が増えております。下の表にあるように、特に2年生は、昨年、今年の2年間で、学年全体の40%を超える生徒が、累積して、1つ以上、何らかの講座を受講することとなります。


特別講座という形での実施では、生徒が果たして参加してくれるのはどうかという不安も、当初はございましたけれども、主体的に受講してくれることを信じてよかったと思える結果となっています。


右のほうの⑰「海外へトビタテ!」や⑱「人権フィールドワーク」なども、バラエティーに富んだ講座にするためということで、教員から提案があり、新たに追加をしたものでございます。


理系寄りだった昨年度の講座と比較すると、文系の生徒たちも参加しやすい内容になったのではないかなと考えています。


次のスライドをお願いします。


最後に、STEAM事業のこれまでの評価と今後の課題です。


ここでお示しするものは、生徒の昨年度のアンケート結果です。


まず、生徒の評価ですけれども、「参加してよかったか?」という質問に対して、「当てはまる」と回答した者が95.2%、「どちらかというと当てはまる」が4.8%、合わせますと、全生徒が参加してよかったという回答となりました。


また、ここで挙げたような、実際につくってみる大切や楽しさを感じた生徒や、根拠を持って意見を言えたり、アイデアを出せるようになった生徒もおりまして、今回の活動が普段の生活にまで影響を及ぼしたことは、大変うれしいと感じております。


次をお願いします。


こちらは、生徒のアンケートの分析結果です。特別講座の受講者と未受講者を比較したとき、有意に差が見られた項目が、計画性、独創性、課題発見、分析力、発信力でした。この分析に関しては、大学との共同研究で行っておりますけれども、今後も継続して分析を行い、STEAM、SSHともに発展させていきたいと考えています。


次、お願いします。


昨年は、夏の特別講座の後、8月末に全教員対象にも、アンケートを実施しました。ここに示しましたように、教員も、この取組に意義を感じている結果となりました。中には、「よい刺激になると思い、多くの生徒に参加してほしいと考え、クラス内で宣伝した」といった先生方や、「教員対象の研修会にも意欲的に参加するようになった」といった者もいました。


ただ、「一部教員の負担が増え過ぎているのでは」とか、「理数教育の充実ばかりになっていないか」などの意見もあり、今後解決していくべき課題であると考えています。


次をお願いします。


連携していただいた企業や自治体についても、非常に協力的でございました。例えば、RESASを使って、地域デザインに取り組むグループが3班ありましたけれども、昨年8月の校内発表には、加古川市役所の職員の方々にも参加いただき、御意見をいただきました。


また、その後、12月には、市役所内で、加古川市長、副市長、そして教育長などに御参加いただいた発表会を実施していただきまして、市長様からは、「高校生から、先入観のないアイデアをぶつけてもらい、はっとさせられた。さらに時間をかければ、「形」になる。地域の課題を分析してくれてうれしい」とのコメントをいただきました。


なお、そのうちの「子育て班」では、内閣府主催の「地域創生政策アイデアコンテスト」の全国大会にも進出をいたしました。


加古川市役所の職員の方には、発表会への参加だけでなく、他の企業や自治体へも御紹介いただきまして、今年度、引き続き、連携をさせていただくことができています。


次をお願いします。


最後に、今後の課題としては、地域への普及に向けた取組が挙げられます。現在は、モデル校として、研究開発を進めておりますけれども、今後はその成果を地域や兵庫県下の他校に普及させなければならないと考えています。


ここに挙げましたように、例えば、指導案集を発行して、他校でも実施できるようにしたいとも考えておりますが、企業ですとか、自治体から、多くの外部講師に関わっていただく形での研究開発を行っているため、これをいわゆる自校だけで自走させるといった工夫が必要だと思っております。


本校の通常授業にも導入しながら、持続可能なやり方を探ってまいりたいと考えております。


また、特別講座につきましては、一部の講座をオープンにし、近隣の学校や地域住民の方も参加できるようにしたいと考えておりますけれども、残念ながら、コロナ感染症対策により、今年度も見送らざるを得ない状況になっています。


地域の方々と交流することで、本校の生徒も多くの刺激を受けることができると考えていますので、状況が改善した際には、交流が持てるような形で実施をし、地域へ普及させるとともに、地域でのネットワークも構築していきたいと考えております。


以上で、加古川東高等学校からの発表を終了させていただきます。ありがとうございました。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


では、続きまして、高知県立山田高等学校、正木校長先生、よろしいでしょうか。


【山田高校(正木)】 はい。


【荒瀬部会長】 正木先生、荒瀬でございます。御無沙汰しております。


【山田高校(正木)】 御無沙汰しております。


【荒瀬部会長】 正木先生、大変申し訳ありませんが、少しまとめた形で御説明いただきますと、大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。


【山田高校(正木)】 分かりました。それでは、スライドの3枚目、概要から説明させていただきます。よろしくお願いします。


もう一枚、お願いします。


本校がある高知県香美市は、人口2万6,000人ほどで、面積の88%を森林に囲まれた自然、豊かな町であります。


地元には3つの中学校がありますが、地元中学校からの進学割合は30%程度となっております。昔から高知市内の学校に憧れを持つ地域であり、本校の定員が満たされたことは、しばらくありません。


今年度も、1学年の定員200名に対しまして、105名の入学者にとどまり、充足率は53%となっております。


次のスライドをお願いします。


本校は、創立81年目の学校で、卒業生は1万5,000人となっています。また、定時制課程も併置しております。


現在の全日制の生徒数は325名となっており、定員充足率は54%となっております。


次のスライドをお願いします。


本校では魅力ある学校づくりと生徒確保のために、探究活動を柱とした学校づくりを、平成28年度から進めてまいりました。そのポイントが、総合的な学習の時間の大改革となります。進路指導重視の総合的な学習の時間を抜本的に見直し、地域社会に貢献できる人材を育成するためのプログラムを、管理職主導の下、つくり上げてまいりました。


スライドにもありますように、3年間を見通した地域課題探究学習のプログラムを実践するに当たり、地域住民や行政に積極的に関わってもらうことで、生徒に圧倒的な当事者意識を持たすことができています。生徒たちは、「チームでイノベーション」を合い言葉に、探究活動に前向きに取り組み、自らの進路実現に向けて頑張っております。


次のスライドです。


「さらに「探究する学校」をめざして」、平成30年度から、探究に関する学科の設置に向けた準備をスタートさせ、令和2年度から、新学科を設置する運びとなりました。


次のスライドです。


スライドの左の図は、準備段階の組織体制をまとめたものとなります。


入学定員につきましては、グローバル探究科、80名、ビジネス探究科、40名、普通科、80名となっております。


次のスライドです。


これは、令和2年度、3学科体制になってからの探究活動における校内推進体制について、お示しをしたものでございます。


探究活動を推進するに当たり、教職員からの提案も積極的に受け入れ、トップダウン型でなく、先生方のアイデアを重視するとともに、教員の得意分野を生かした指導方法などを取り入れ、ボトムアップ型の取組姿勢を重視しております。


また、外部との連携については、管理職も全力でサポートする体制づくりを行っております。


次のスライドです。


本校は、平成28年度から学校地域協働本部事業を受託し、地域創生に有為な人材の育成を目指して、教育活動を展開しています。生徒が主体的に行動し、他者と協力して、課題解決に取り組む姿勢を育てることを、ゴール・イメージとしています。


この組織は、外部から支援を得るために大きな力となっており、探究活動を推進するエンジンとなっています。


次のスライドです。


このスライドは、「学校地域協働本部事業」の全体像になります。地域の産業界や行政が、教育機関と連携・協働して、生徒を育てる仕組みを構築しています。


香美市には、小学校から大学、特別支援学校までがそろっており、これらの組織をつなぐ役割が、学校地域協働本部となっています。


加えまして、本校は、昨年度から学校運営協議会も設置し、生徒へのさらなる支援体制を整えています。


次のスライドをお願いします。


このスライドは、学校地域協働本部の具体的な体制をお示したものであります。


運営には、産官学民のトップの方に名を連ねていただいております。なぜトップの方かというと、ここでの決定事項がスムーズに実行されるという利点があるからです。


また、地域連携コーディネーターには、高知工科大学の学生をはじめ、地域住民の方も、たくさん協力してくださっています。


次のスライドをお願いします。


次に、探究活動にはなくてはならないICT環境の整備についてです。校内にはWi-Fi環境を整備するとともに、全ての普通科教室にプロジェクターを常設しております。


また、既存の教室を探究ルームに変更し、ワークショップやプレゼンテーションができるよう、大型ホワイトボードや常設プロジェクターを複数台設置し、外部機関や台湾等の外国の学校と情報交換の場としております。


また、グローバル探究科の生徒は、自費でタブレットを契約し、生徒間同士の情報交換や教員への課題提出などに、タブレットを活用しています。


次のスライドをお願いします。


本校の教員も「総合的な探究の時間」における探究活動だけでなく、様々な機会を通して、探究活動について学びを深めています。


次のスライドです。


このスライドは、音楽の時間に探究活動を展開する設計図となっています。創作活動の一環として、童謡を作るというプログラムを実践しております。


一つの言葉から、たくさんの物事を連想し、歌詞にしたり、言葉のリズムや抑揚を生かしてリズムに変え、それを音符に変えていく。そして、最後は、演奏しながら歌うことで、歌に命を吹き込んでいくという授業を展開しています。


次のスライドをお願いします。


このスライドは、国語の時間を利用しての探究活動となっています。童謡や昔話を土佐弁に翻訳したり、母校のかるたを作ってみることは、国語の力を生かし、表現を楽しむことにつながっている探究活動であると言えます。


次のスライドです。


このスライドは、ブック・クラブの活動の様子です。有志の若手教員がプライベートの時間を活用し、本を読み、意見交換をすることで、参加者全員で、新しい学びのスタイルを考えるという取組を実践しているところです。


外部からは、大学教授も参加し、この会を盛り上げてくれています。この回に参加する若手教員は、意欲も高く、今後が期待されます。


次のスライドです。


次に、グローバル探究科における探究活動について説明してまいります。


次のスライドです。


このスライドは、教育課程表になります。赤で囲んだ部分が、探究活動の時間となっております。右のほうになります。各学年で、2時間、3年で、6時間となっております。


次のスライドです。


本校の探究学習は、全国総合文化祭の「自然科学分野」が、お手本となっております。私も、この発表会に関わる機会をいただきましたが、参加する生徒は、本当にすばらしい探究活動を行っています。ダンゴムシのふんについて研究している生徒の発表を聞いたときは、心が震えました。


次のスライドです。


このスライドには、グローバル探究科で身につけさせたい力を示しています。5つの力と探究に向かう姿勢を、3年間を通して、計画的に身につけさせていきます。好奇心旺盛な生徒、簡単に答えが見いだせない問いを追い続けることができる生徒を育てていきたいと考えております。


また、これらの力を評価するため、ルーブリック評価を用いて、定期的に見取っていくことにしています。


次のスライドです。


このスライドは、グローバル探究科1年生が取り組む探究活動の年間計画を示したものになります。1年生は、チームで探究活動に取り組みます。


次のスライドです。


このスライドは、二、三年生の年間計画となります。二、三年生は、個人での探究活動になります。


次のスライドです。


次に、令和2年度グローバル探究科1年生の活動を説明していきます。


このスライドは、チーム力を高めるため、探究運動会を開催したときの様子です。仲間と一緒に目的を達成する喜びを実感してもらうために、計画しましたし、本校は、平成28年度から、「チームでイノベーション」を探究活動の合い言葉にしています。新しい学科においても、その方向性はぶれることなく進めております。


次のスライドです。


このスライドは、グローバル探究科16名の生徒が4班に分かれて、各チームで課題設定を行っている場面となります。


次のスライドです。


このスライドは、夏休みを使って、生徒がフィールドワークをしたときの写真となります。生徒たちが汗をかいて集めた情報こそ、生きたデータとなり、価値のある探究素材になると、私は考えております。


次のスライドです。


このスライドは、県内大学と連携している様子となります。生徒たちは見たこともない大学の実験装置を使わせていただき、物事を科学的に捉える貴重な体験をさせていただきました。大学での本物の調査研究の一端を、のぞかせてもらったのではないでしょうか。


写真は、中国の塩からマイクロプラスチックを抽出しているところでございます。


また、年齢が近い大学生のサポートを受けながら、探究活動を進められたことは、生徒たちにとって、貴重な経験になったと思われます。大学生の考え方や物の見方を知る、よい機会になったのではないでしょうか。大学との連携を通して、生徒たちは、大学の魅力を肌で感じたはずです。そして、生徒たちの学習意欲や進路意識は、確実に変化したと思います。


次のスライドです。


このスライドは、検証実験の一こまとなっています。生徒たちは必要となる研究素材を、自分たちの力でそろえ、綿密な調査や実験を行い、様々なデータを科学的に収集しました。この検証実験を通して、データ収集や比較分析が、いかに大変であるかを学ぶと同時に、物事を科学的に見ることの大切さを学んだと思います。


次のスライドです。


このスライドは、校内での成果発表の場面となります。探究してきたことを、自分の言葉でしっかりと他者に伝えることを重視しています。また、質問に対する受け答えも、当然、重視をしております。発表形式は、京都の堀川高校に倣い、ポスターセッション形式を取り入れております。


次のスライドです。


このスライドは、学校外で発表しているときの様子です。発表会の機会を一つでも多くし、場数を踏ませ、生徒の表現する力を育てています。


次のスライドです。


ここでは、探究活動における成果についてお伝えします。このスライドは、県外の発表会に参加した際の記録です。他県の生徒たちとの交流は、もちろんですが、金賞を頂いたことで、生徒たちは自信を持つことができました。探究の取組が、苦労からやりがいに変わった瞬間だったのかもしれません。


次のスライドです。


このスライドは、お茶班が作った「お茶班新聞」になります。「チームでイノベーション」を掲げ、1年間、取り組んできたことが、このクラスの勲章になっていると思います。一生忘れられない1年間になったと確信しております。


次のスライドです。


このスライドは、お茶班の発表資料となります。山田まんに合う土佐茶を科学的に調査・分析し、得られた情報をマーケティングに結びつける。この探究活動は、企業がやっている本物の調査・分析に近いものがあります。科学的に物事を捉える探究活動は、本当にすばらしい経験であったと思います。


次のスライドです。


探究活動の成果として、3月末に、論文集を作成しました。1年間のまとめとして、論文集を作成したことは、大変意義深いものでありました。


私見ですが、論文の内容は、目標としてきた自然科学の発表会で出される発表資料に近づいてきたのではないかと思っています。生徒たちは、この1年間で、本当に大きく成長しました。


次のスライドです。


生徒や教職員の声を紹介します。


次のスライドです。


このスライドは、生徒の声を掲載しています。自分の意見を人に伝えることができるようになった、自分に自信が持てるようになったなど、生徒の成長した部分が見取れます。


教員側から見ても、学習意欲や進路意識の向上が見て取れました。


次のスライドです。


このスライドは、協力してくださった関係者の皆さんの声です。生徒たちの頑張りに対する評価は、非常に高いものがございました。


次のスライドです。


このスライドは、教員の声をまとめたものです。平成28年、探究活動をスタートさせた時点では、多くの先生が、できるはずがないと言っていました。しかし、生徒たちの頑張りや地域の方々から高い評価をいただいたことで、教職員のモチベーションも上がり、探究活動に積極的に関わるように変化していきました。生徒も教員もこの探究活動を通して、得るものがたくさんありました。


今後は、さらに探究する学校を目指し、地域に愛され、信頼される学校づくりを推進し、全ての中学生が行ってみたい学校にしたいと考えています。


これで発表を終わります。ありがとうございました。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


兵庫県教育委員会、加古川東高等学校、そして高知県立山田高等学校から御発表いただきました。


この後なんですけれども、今、御発表いただいた皆さんには残っていただく形で、質疑応答、意見交換をしたいと思っております。


ただ、途中で御退室になるということを伺っております戸ヶ﨑委員に、まず、御発言をいただきまして、その後、STEAM教育について、教育課程部会で、ずっとこの間、議論を牽引してくださっています大島委員から、御発言をお願いしたいと思います。


では、まず、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。


【戸ヶ﨑委員】 素晴らしい実践発表で勉強になりました。今後のSTEAM教育に大いに期待をしつつ、一方で、学習に困難を抱える子供など多様な児童生徒の実態を踏まえる必要も感じます。


今日は、義務教育段階の立場で意見を申し上げます。STEAM教育や土台の実施においては、各教科・科目等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図ることを求めているわけで、その着実な実施がまずは重要です。さらに、日々の教科等の授業では、教科の世界に没頭していく学びも軽視してはならないと思っています。


従来も現在でも学校現場の教育課程上の「3大課題」つまり、一つは、教科等横断的な学びの充実、2つ目は、総合的な学習の時間の充実、そして、3つ目は、カリキュラム・マネジメントの推進、これらの課題解決を進めていくことこそ、STEAM教育の充実の基盤をつくることになると確信しています。


その上で、これらの課題解決に向けた視点や、「小中学校におけるSTEAM教育の下地づくり」という視点から特に重視すべきと思っていることを5点申し上げます。


1つ目は、各教科等の学びで、「答え探し」の学習から「問いづくり」や「答えづくり」の学びの実践を増やすことです。


2つ目は、各教科等において習得・活用・探究という学びの過程を重視しながら、目指す資質能力を確実に育むとともに、それを横断する学びを行い、更にその成果を各教科に還元するという往還が重要であることです。


3つ目は、各教科等の学びをより一層、実社会や実生活とつなげ、教科等の学びが活用できることを実感を伴って理解することが大切です。つまり、教科等横断的な学びの中で、教科の学びの「粒感」が見えることがポイントです。こしあんではなく、つぶあんの学びになるようにしたいということです。


4つ目は、STEAMの前段階として、2つのPBL(Problem-BasedとProject-Based)型の学びのトライアルを積極的に行うことです。


最後に、数学や理科の授業において、わかる・できるが楽しくないと思う生徒を少しでも減らすために、知的好奇心を引き出し夢中になる学びの実現が急務であることです。


最近よく耳にする「努力は夢中に勝てず」という言葉通りです。そのために、小学校高学年からの教科担任制の導入、産業界等との積極的な連携などが大切であると考えます。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


それでは、続きまして、大島委員、お願いをいたします。


【大島委員】 ありがとうございます。時間が限られていますので、少し論点整理をさせていただけたらと思います。


すみません、タイムの共有が認められていないみたいなんで、させていただけると、ありがたいんですけれども、今、これで、共有ができるようになっている……。できました。ありがとうございます。5分ぐらいで、まとめるようにということだったので、今、見えていますでしょうか。3枚ほどにまとめさせていただいております。


東京大学の大島といいます。私は、大学の立場で、工学、経営のバックグラウンドなんですけれども、STEAM教育について、いろいろな形で、推進してまいりました。


本部会では、部会長がおっしゃられているように、現行の学習指導要領の実習をする中で、STEAM教育をどのように実施していくかということは、大事な観点かと思っています。本日、その中で、3つほど述べさせていただきたいと思っています。


一つは、やはり、STEAM教育というのは、人材育成の文脈で述べられることが多いので、それが、どうしてこういう背景になっているかということを、皆様に共有させていただきたいと思います。


まず、我が国の教育の現状です。学習指導要領に基づいて、各教科の目標や大まかな教育内容が定められて、基準化された教育課程が、国全体に浸透する。これは非常に大きな点でございまして、国際的にも優れた教育水準であり、諸外国から非常に高い評価をされていると思っております。


一方で、学ぶことへの動機や好奇心、社会的な問題解決への関与などが、諸外国と比較して、ちょっと低いということは、先ほど述べられているかなと思います。


一方で、やはり、今、社会的な変化というのは、非常に大きくなっております。グローバル規模での社会、世界的価値の変化があって、今は不安定で、不確実かつ複雑な時代へとなっている。これがCOVID-19により、さらに鮮明化されているということです。


「問題が与えられ、唯一の正解がある」から、「課題の発見と課題解決」と、問題自体を発見していくということです。これは、やはり、知識の習得とともに、どのようにその知識を活用していくかことが重要になっています。


もう一つは、やはり、Tangible(形のあるモノ)からIntangible(形がない、例えば知識・情報)へとシフトしているということです。


それが、やはり、Society5.0の実現であったりとか、SDGsの達成にも反映されていると思っています。やはり、社会課題を自分事として捉えていることが必要であって、Diversity(多様性)とInclusion(包括・包含性)を考えていくということが大事になっているということで、今までの教育とは少し違った観点で考えていくことが必要になってきているということです。


やはり、これまでの学校教育のよい点を継承するとともに、社会的変化を乗り越えた発展、そして、新しい価値を創造するようなグローバルなイノベーション人材という形が必要になっていて、いわゆる令和の日本型学校教育における日本型のSTEAM教育は、必要なんですけど、どうやって今の学校の現場に導入・実践していくかということです。それは、今回のこの部会での大事な点なのかなと思っています。


そういう中では、やはり、各教科等の学びと教科等の横断です。文理融合であったり、リベラルアーツ、そして協働的な学びです。これは、児童生徒同士、同学年、クラスだけでなく、異なる年齢や学校等々です。


あとは、児童生徒対教師であったり、多様な他者です。大学、企業、地域、諸外国も含めた協働的な学び。


そして、今までお話しいただいている探究的な学びです。ICの活用と実験・体験的な活動による実社会に係る課題の発見と、実現可能となる解や案を導き出す課題解決能力です。こういうことが、非常に大事になってきているということです。


そうすると、やはり、学校現場で、これらをImplementationしていかないといけない、実践していかないといけないということで、この2つは、結構大事かなと思っています。


まず、学習指導要領の着実な実施を念頭に置いたカリキュラム・マネジメントです。これから、「総合的な探究の時間」であったり、「理数探究基礎・理数探究」が導入されますので、これは、カリキュラム・マネジメントのファースト・ステップになるかと思います。


各教科と探究を知識の深化、各教科における深化と、それを横串で、教科横断型の統合・活用を循環するような学びのプロセスを、こういう時間の中で、どういうふうに構築していくかということです。


2点目といたしましては、様々な機関との連携体制の拡充による「社会に開かれた教育課程」の実現です。こういう多様なところと協力するような体制づくりが、結構大事になるかなと思っております。


最後に、まとめとしまして、日本型STEAM教育を目指して、本日、兵庫県の教育委員会での特に県立加古川東高等学校と高知県の山田高等学校の事例を示していただいて、非常に充実した、そして参考になる探究活動を御紹介していただいたかと思います。


これは、やはり、いろいろな学校に応じて、自由に構築していくということは、大事かと思っています。日本型教育を目指して、各学校の特徴を踏まえた探究活動の導入です。それには、課題の設定、探究プロセス、評価をどうやっていくかということです。


課題の設定は、学校の特色、地域性、児童生徒の質・能力、教師等を配慮した効果的なテーマ設定。その中で、限られた時間内で探究できる問題への落とし込みが重要になってくるかと思います。


探究のプロセスは、多様性であったりとか、自動的な学びです。これは、発表やディスカッションの場の機会です。それを、教科等横断と各教科との関係づけ、統合とか、総合です。その循環です。それと評価です。いわゆるカリキュラム・マネジメントと体制づくりのやり方になるかと思います。


最後に、やはり、教育、人的・経済的リソースの有効活用と再配分が必要な事項かと思っています。厳しい社会情勢、少子化です。経済も右肩上がりではない、非常に厳しい経済状況の中で、持続可能な発展できる学びへと、どうやって、こういうSTEAM教育を導入していくかということになるかと思います。


そのためには、今まで培ってきた共有リソース共有化、Good Practiceです。今日、御発表いただいたものであったりとか、課題の共有です。あと、SSHであったり、JSTが、様々なこのような事業をやっていますので、その知見であったりとか、経験の共有。


教材です。実験・実習やツールの公開、共有です。これらのライブラリー化も進んでいますので、それは、拡充。


細かい分析が必要になってくるかと思います。資質・能力の育成への寄与の定性的・定量的な把握が、大事になってくるかと思います。


人的リソースです。これは、先ほど、課題でも出てきましたけれども、今、現行の先生の状況でも、非常にお忙しい。そういうことを考えると、さらに忙しくなるということを避けるような働き改革を念頭に置いた改正の整備が必要になってくるかと思います。


教師の横断的な協力、教員研修・要請、外部の講師の活用が結構大変だという言葉もございましたけれども、これをどうやって解決していくかということと、学校内外の産学官民の連携ネットワークです。


これからは、ICTの5G、Beyond 5Gです。AI活用。こういうようなツールを、どうやって、有効活用していくかということです。


最後です。経済的リソース、国の予算だけではない財源の確保ということは、結構大事になってくるかと思っております。企業の参入であったり、例えば、私たち大学では、研究に対する競争的資金がございますので、このように、最先端の研究を教育コンテンツ化するということは、ある程度、例えば、欧米では10%という話もありましたけれども、こういうことを義務化していくことによって、教育コンテンツのさらなる充実化もしていくといいと思っております。


少し長くなりましたけれども、私からは以上になります。


【荒瀬部会長】 大島先生、ありがとうございました。


コンパクトにまとめていただきましたが、中身としては、非常に幅が広く、また、これからの学習指導要領の着実な実施に向けて、具体に関わってくる内容が、相当たくさん、ちりばめられていると思います。


こういった方向で、今後も議論をしてまいりますので、もちろん、STEAMは、今日でおしまいというわけではございませんので、今後、また、議論をしていくということです。


今日のこの後の予定でありますけれども、冒頭申しましたように、もう一つ議題がございますので、大変短時間で、申し訳ありませんが、45分頃まで、御質問等をお願いできればと思います。


先ほど申しましたように、兵庫県教育委員会、加古川東高等学校、そして、高知県立山田高等学校の皆様には、まだお残りいただいておりますので、御質問もいただければと思います。


では、手をお挙げいただきたいんですが、中島委員、お願いいたします。


【中島委員】 ありがとうございます。


大変面白い事例で、非常にわくわくしながら伺っていました。ありがとうございました。


せっかくなので、私も、1枚だけ、共有させていただきます。これで、今、見えますか。大丈夫ですか。見えていますか。


【荒瀬部会長】 見えました。ありがとうございます。


【中島委員】 ありがとうございます。


今、大島先生に本当にすごくまとめていただいたので、まさにそのとおりという感じなのですけれども、私のほうからも、本当に端的に、具体的に、せっかく新しい学習指導要領を定着させていくに当たって、中教審から発信していくに当たって、こういうことが、できたらいいなということを話したいと思いました。


各学校については、ぜひ、継続して紹介をもっと伺えればと思っています。


2つ絶対押さえたいなと思うことがありまして、やはり、国がやるということで、格差解消、多様性の確保ということが物すごく大事で、これは念頭に置いておきたいなと思っています。


ただ、格差をなくすということは、一斉にやるというよりは、どちらかというと、多様な場をとにかく用意する。それが本当にちゃんと多様性の確保に至っているかどうかのチェックということ、その辺は、ぜひしっかりやっていくと、やはり国が発信するということの意義があるかなと思っています。


もう一つ、先ほども出ていますけれども、やはり、新しいことが、わあっと始まっている印象があって、各先生方、恐怖感なども多いかと思います。なので、やはり不安を解消していくような、どちらかというと、先生方も含めて、わくわくするような形に、何とか持っていきたい。


だから、そういう発信であり、何かしら提供、支援の可能性も見せていくということが大事かなと思っています。大人の方々も、御自身が受けてきた教育とあまりに違うという印象が、多分、先生方、保護者の方々にあるはずです。ただ、それは、ただ単純に体験をしていないだけで、今まで学んできたこと模索されてきたことが、むしろ生かされる場だと思っているのですけど、やはり、それを耳で聞いただけで、やることは難しい。


なので、そういう体験の場を、できる限り、みんなで構築していくということが必要かなと。産官学連携のエコシステムというものも、やはり、積極的に事例をつくって、その事例紹介から、今度、できれば、モデル化をして、とはいえ多様性が大事なので一律のパッケージにはしないのだけれども、一方で多様なものができるような「モデル」や仕組みを、できるだけ、皆さんとつくっていければいいかなと思いました。


具体的には、ざっとですけれども、下に書いたように、先ほどからも結構出てきていましたけど、やはり、教員研修、問いの立て方、仮説の立て方などが重要です各校ごとに、こういう個別の深い取り組みがされていて、すばらしいなと思っているのですが、現状はできる学校、できない学校が、どうしても出てしまっている印象があるので、こういうことの新しい学び方に対する研修、先生方にとっての試行錯誤体験の場所や機会の提供が大切だと思います。


プロジェクト型学習だと、やはり、実践的なものや企業などと、どういうふうにつなげていけばいいのかというところが難しい。すでに人的ネットワークのある先生方や学校はよいのですが,この辺りでも格差が生じる。


やはり、新リテラシー。先ほど、加古川東さんのほうだと、かなりいろいろな研修をされていることを見て、あれは、多分、先生方も、わくわくされるのではないかと思ったんです。でも、それを学校ごとにやることは、結構難しかったりします。なので、何かその辺りを、もう少し公的な仕組みの中で提供される場や機会があるといいかなと思っていました。新リテラシーの学びがただのお勉強にならずに、それが個別の深い探究・創造につながるような形に持っていけるかどうかということは、やはり、ここの研修の部分、先生方にとって体験の場の部分を準備することが、すごく鍵になってくるかなと思っています。


教員コミュニティーも、既に教科ごとに、教科研究としては、日本は素晴らしいものが出来上がっていますけれども、もうちょっと総合的なもの、新しい探究をどうしょう、情報をどうしようというようなところで、やはり、ちょっと話し合えるようなコミュニティーを積極的に構築していけるといいかなと思っています。


ライブラリーみたいな話が、いろいろ出ていますけれども、こういうある種の多様な教科書がもっと出てくるとよいですね。なお、今の日本の教科書は本当にすばらしいと私は思っていて、ただ、その答えがない、オープンエンドな問いになってからの教科書というものが、まだ見えていないところがあるんではないか。


なので、とにかく多様な教材とか、オープンエンドな問いの例など、そういうものが、企業なども交えて、うまくモデル化されてくるといい。


ハードウエア、ソフトウエア、メンタリングの支援なども重要です。補助金という形がよいのかどうかわかりませんが、例えば今、理科の実験器具ならば、大体、補助金がかなりちゃんとあって、支援されていると思いますが、新しい技術にまつわるハードウェアやソフトウェアの支援はまだまだ乏しい。


その他、もちろんSSHなど、いろいろなところで、お金もかなり投じられていると思うんですけれども、逆に言うと、選ばれし学校は投じられているんだけれども、一般的な学校に、公立校や地方などに、そういうものが届くかというと、使い方も含めてですけれども、なかなか、そこに届いていないという気がしています。


やはり、何かそういう新しいリテラシーのところなどにも、積極的にこういうハードウエアも、ソフトウエアも、メンタリング、研修、コミュニティ作りなど、人によるサポートが必要だと思うんで、文科省さんから、そういうことも含めた支援金がある程度長期的にあるといいなと。


ごめんなさい、長くなってきていますが、残りもう少し、なるべく短くいきます。


先ほどの財源の多様化というものもありましたけど、やはり、大学側のアウトリーチを兼ねてのメンター育成は、大学の予算が使えるんではないか。


企業側も、人材育成を兼ねた形でのメンター育成。こういう地域の学校などに、ちょっとサポートで関わるということが、彼らの人材育成にもつながるということで、企業側の投資になるのではないかと思うので、これは賛否両論など、デリケートな部分があると思うのですけれども、そういう可能性も模索したい。


また、ミュージアムや図書館、科学館、ファブラボなど、そういう地域の場を、できるだけ開いてもらって、学びに活用する。


7番は、星印をつけましたけど、先ほども、やはり、生徒たちも、自分がやったことが、できるだけ、いろいろな人に届いたり、聞いてもらったり、発表ができたりということは、うれしいですし、そういう同じ世代の子たちがつくったものを見るということは、ものすごく刺激になると思うので、こういう探究共有・発表の場があれば、あるほどいいなと。それは、新しい評価やポートフォリオの考え方につながると思っています。


世界との連携ということで、ぜひ、研究発表みたいなことを、積極的に国からもというか、この関係者でしていくことで、世界と発信していくような仕組みが出てくるといいかなと思っています。


ありがとうございます。よろしくお願いいたします。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


先ほど申しましたように、45分までしか、この時間を確保できません。毎度、毎度、同じことばかり申し上げて、本当に申し訳ありません。


ただ、せっかく兵庫県教育委員会、加古川東高等学校、山田高等学校の皆さんがいらっしゃいますので、御質問に限って、受け付けたいと思います。現在、7人の方が手を挙げていらっしゃいます。STEAMに関しては、何度も申しますが、今後も議論を続けてまいります。よって、今、手を挙げてくださっている7人の方の中で、御質問でない方は、大変申し訳ありませんが、手を下ろしていただけませんでしょうか。


すみません。大変ありがとうございました。では、吉田晋委員と松下佳代委員に御質問をお願いしたいと思います。


では、吉田晋委員からお願いいたします。


【吉田委員】 ありがとうございます。


まず、兵庫県教育委員会、加古川東高校、山田高校の先生方、御説明をありがとうございました。


率直にお尋ねしますけど、STEAMのことは、また後日やられるということですが、この探究型の学習は、本当にすばらしいものをやっていらっしゃって、この英語での発信や探究型学習によって、新たな学力、総合的な英語力が、本当に徹底的に学ばれているのではないかと思います。これによって、大学進学に対して、実際、実績として、どうなのでしょうか。


子どもたち、受験生の立場で考えたときに、やはり、高校の教育もありますけれども、大学に進学ということが、目の先に見えてくると思うのです。先ほどの山田高校さんが、定員に満ちていない、募集に苦労していらっしゃるというお話ありましたけれども、やはり、こういった学習が、大学の進学に結びつくような社会というか、高大接続にならなければ、厳しいのかなという思いがありまして、大学進学の状況等について、これによって、変わったかどうかをお尋ねしたいと思って、手を挙げさせていただきました。ありがとうございます。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


では、もうすぐにお答えをいただきます。2校ともお答えください。大変申し訳ありません、簡潔にお願いいたします。


加古川東高校さん、お願いいたします。


【加古川東高校(志摩)】 加古川東高校です。


大学進学につながっているかというと、数字的なものが何もありませんので、分からないということが、正直なところです。


ただ、英語での発表などを通じて、海外の大学に興味を持った生徒は増えてきまして、ここ数年で、2名、3名の生徒が、直接、海外の大学への進学ということは出てまいりました。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


山田高校さん、お願いいたします。


【山田高校(正木)】 本校の進学実績は、徐々には上がってきています。家庭的にも、結構厳しい子供もいますので、国公立大学への進学希望が、こういった探究活動をやることによって、増えてきていることは間違いございません。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


吉田委員、よろしいでしょうか。


【吉田委員】 今日は時間がないので、もう結構です。後日に。ありがとうございます。


【荒瀬部会長】 吉田先生がおっしゃっていることにつきましても、ぜひ、今後も、また議論を続けたいと思います。


では、松下委員、お願いいたします。


【松下委員】 ありがとうございます。


では、手短に質問のみ。


今回、高校は、非常にいろいろな新しい概念や教科・科目ができて、それを実現されていくのに、とても苦労されているのではないかと思います。


STEAMが、当初、アメリカで使われていたときには、結構とがった概念だったと思うんです。ただ、Aがアートだけではなくて、リベラルアーツ、文理融合と広がってきて、教科横断型とか、あるいは、総合とSTEAMの違いが、少し見えづらくなってきたところがあるように思います。


それで、質問を絞って、加古川東の方に伺いたいと思うんですが、加古川東では、以前から、探究ということを非常に一生懸命おやりになっていて、私も拝見したことがあるんですけれども、この探究活動ということと、新たにSTEAMという概念を使った場合の活動とで、どこが一番違うとお感じになっていますか。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


では、加古川東高校、お願いいたします。


【加古川東高校(志摩)】 探究は、課題設定というところが、一番、肝になりますので、そこから生徒が非常に苦労しておったというところが、正直なところです。


ただ、STEAMは、そこの少し先からスタートして、生徒に取組をさせますので、少し取っつきやすいのではないかという気はしております。


もう一つは、STEAMで、予算を頂いていましたので、そういったもので購入した機器を使って、作成したものを使って、探究活動の自分たちの探究、課題解決につなげていくというところで、相互というか、そういうつながりはできているのではないかなとは思っています。


以上です。


【松下委員】 ありがとうございました。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


それでは、あと、もう少し御質問の方にお願いします。


若江委員、お願いいたします。


【若江委員】 ありがとうございます。


私は山田高校の正木先生に、御質問です。早くからの取組を拝見しておりましたので、やはり、卒業生たちの直接的な進路ではなくて、もっと先々の展開についても、いろいろ調べていただいたらよいのではないかと思います。


一方、ちょっとショックだったことが、定員充足率が50%ということでしたが、本来あるべき姿の授業内容をやっておられているはずなのに、定員が充足しないということは、これは、中学校の進路指導の先生方、中学校レベルの授業内容に対する理解が低いということなんでしょうか。その辺りをお聞かせいただきたいと思います。


【荒瀬部会長】 お願いいたします。


【山田高校(正木)】 私も中学校のほうに出向いて、いろいろと説明もさせていただいているんですけど、やはり、探究は何なのと、いや、それだったら、普通科の授業がいいんじゃないの? というような中学校の先生や保護者の方がおいでになって、なかなか理解を深めてくれないというか、してくれないというんですか、もう非常に、ちょっと……。


それに負けずに、今も中学校を回っています。一生懸命、説明しています。徐々に増やしていきます。頑張ります。


【荒瀬部会長】 若江委員、よろしいでしょうか。


【若江委員】 ありがとうございました。先生、頑張りましょう。


【山田高校(正木)】 ありがとうございます。


【荒瀬部会長】 では、鎌田委員、お願いいたします。


【鎌田委員】 それでは、お願いたします。


SSH校として、3期16年、また、県のSTEAM教育実践モデル校として、成果を上げてこられた加古川東高校に御質問します。


結果から、教員ともに、非常に満足度の高い結果を得られているわけですけれども、SSHの取組を全て実践するということは難しいことですけれども、SSHの取組というのは、今後の「総合的な探究の時間」を推進する上で、大変参考になるものと思っています。


そこで、今後、各校が「総合的な探究の時間」を推進する上で、生徒、教員が手応えある時間とするために、行っていかなくてはならないポイントは、どういう点なのか。これまでのSSHのいろいろな経験上から、教えていただければと思います。


【荒瀬部会長】 では、志摩先生、お願いいたします。


【加古川東高校(志摩)】 先ほど、アンケートの結果なども御紹介をしましたけれども、そういったところでの満足度は、非常に高いものだと考えています。


ただ、それが、先ほどの進学実績ではないんですけれども、具体的に形として見えてくるものがないということが現状で、そこは、どうしたら見えてくるのかなということは、私どもも悩んでいるところです。


ただ、大学に進学しました生徒が、大学進学後に、大学の活動をやっている中で、他校から同じ大学に進学した人たちと比べて、この間に、非常に良い経験を自分たちがしていたのだということが、後になって分かってくるというような事例もございます。


ひょっとしたら、教員たちも、次の学校に移ったときに、加古川東高校で行った実践が、生かされてくるのではないかなというふうには思っております。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


鎌田先生、よろしいですか。


【鎌田委員】 時間がないので、結構です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


では、田村委員、お願いいたします。


【田村委員】 ありがとうございます。端的に質問させていただきます。


兵庫県教育委員会様にお尋ねしたいんですが、例えば、加古川東高校さんのように、SSHを長く続けてこられた御実績を、これから横展開されていくということをお考えだと思うんですけれども、その際、やはり学習につまずきのある生徒さんが多い高校など、多様な高等学校があるかと思うんですけれども、そういったところで、全く同じことをする必要もないし、できないとは思うんです。


探究やSTEAMということを広めていくためには、どのような条件整備をされていこうと考えているのかをお尋ねしたいんです。


STEAMについて、最初に探究の学びが始まったときに、そんなの無理というところから始まったという、言葉が印象的だったんですけれども、そこから、ここまで探究的な学びにされていくためには、どのような問題や課題をどのように乗り越えてこられたかというところを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。田村先生、2つ目は、正木先生への御質問ということでよろしいんですね。ありがとうございます。


では、兵庫県教委の西田課長、よろしくお願いいたします。


【兵庫県教育委員会(西田)】 もちろん、最終的には、全県にこの取組を広げていくということが、我々の目標ですので、今おっしゃったように、学力もなかなか高くないような生徒に対して、どういうふうにアプローチしていくのかということが、次のステップでは、課題になってくると思っています。


ただ、STEAMというのは、そもそも生徒たちに興味があることをしっかり学ばせながら、そして、学力を上げていくという柱があると思っています。全く加古川東でやっていることと同じことができるとは思っていませんけれども、ただ、それぞれの学校に合わせて、その中のある部分に取り組んでいくとか、あるいは、その学校に応じた形をやっていくことで、教科横断型というものは、やっていけるとは思っています。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


では、続いて、正木先生、お願いいたします。


【山田高校(正木)】 最初は無理と言ったことは、やはり、総合的な学習の時間というのは、大体、クラス担任が任されてやるということが普通だったんですけど、大きく内容を変えて、外部の力を借りるということが非常に大きかったです。


本校では、地域連携コーディネーターと言っていますけど、一般の方から始まって、高知工科大の学生や県内の大学生などに力を借りて、みんなで生徒を支援していくという体制ができたことが、やはり、先生方にとったら、一人じゃないよといったところを感じさせたのかなと。


また、生徒が成功して、周りから、非常に褒められる。生徒が褒められるということは、先生が褒められるということなので、それで、先生方にやる気のスイッチが入っていったというふうに、私は感じております。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


田村先生、よろしいですか。ありがとうございました。


では、最後の御質問にさせていただきたいと思います。梶谷委員、お願いいたします。


【梶谷委員】 梶谷です。


加古川東高校の最後のところの課題で、指導案、外部講師に頼らない授業づくりに課題とあったんですが、私からすると、外部と一緒になって、授業づくりをやっていくということが、非常に重要ではないかなと思ったんですが、この辺は、外部講師に頼らないというところは、どういうところなんでしょうか。


【荒瀬部会長】 お願いいたします。


【加古川東高校(志摩)】 ありがとうございます。


もちろん、外部の方の援助をいただきながら進めると、さらに視野が広がって、プラス材料が多いと思いますけれども、例えば、加古川市の方に御協力いただくとなると、距離的にも近いですし、謝金というようなものも発生しませんが、大学の先生方に来ていただいたり、企業の方に来ていただくというときに、交通費ですとか、謝金が発生するということになります。


そうしますと、我々、今年度のように、事業として予算措置をいただいている場合は、助かりますが、今後、実施していくとなると、そういった問題も出てきますので、課題の一つとして、挙げさせていただいたということでございます。


以上です。


【梶谷委員】 ありがとうございます。


私は企業の立場なんですけれども、企業側からすると、学校の皆様方と一緒に、こういったことに取り組むということは、企業にとっても、非常に学びにつながると思いますので、逆に言うと、謝金というようなことはあまり考えなくても、一緒に活動していきましょうという形で、事業がつくり込まれると、すばらしいなと思っております。


ぜひ、こういった外部と連携して、どう事業をつくっていくか、お金をかけずに、逆に言うと、お金をもらいながらというようなところを進めていっていただければと思います。ありがとうございます。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


逆に、時間がまだ2分ほどなんですけれども、ありますので、手を下げていただきました市川伸一先生、もしよろしければ、御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。


【市川(伸)副部会長】 ありがとうございます。


私は、質問というと、どちらかというと、文科省のほうに、事務局側に質問したいなということがありました。問題は、2つです。


やはり、今日、非常にすばらしい実践を見せていただいて、教育としてあるべき姿を追求していらっしゃるという感じがすごくしたんです。ただ、問題は、これから、どうやって、これを全国の高校に普及させていくかというときに、私は、やはり、これまでの教育界の経緯からして、非常に困難があると思っています。


指導要領が変わっても、なかなか高校は変わらないと、何十年も言われ続けたんです。理想的なものを出しても、結局は、だって、大学受験が変わらないではないかと、高校の先生にも言われてしまう。生徒や保護者も、そう思う。となると、こういう教育的なことを幾らやっても、結局は、大学受験のプレッシャーに潰されてしまって、生徒の選択も、進学実績のいいところを選ぶということになりがちです。


特に今回のような実践も、私学の進学校などを含んだ取組に本当になるかどうかということは、非常に懸念しています。私は、なってほしいと思っていますが、教科の学習や受験とも、むしろ両立したり、両立どころか、相乗効果があるというふうになってほしいと、私は思っています。


そういう私学も含めた、こういう普及ということを、例えば今回の指導要領の改定に当たって、文科省も含めて、どれくらいアピールしていくのかどうかということです。むしろ、こういう教育的な取組をやっているところが敬遠されてしまって、やはり、進学校だよねと、私学の中高一貫校だよねというようなことになってしまうと、結局は空回りしてしまうのではないか。これが、1つです。私立を含む進学校に、どうやってきちんとしていくのか。


もう一つなんですが、やはり、これは高大接続の問題だと思うんですけれども、結局、今、入試のような接続の話がたくさん出てきたときに、高大接続はどうなっているのかと。今回は入試を変えますよという触れ込みだったはずが、結局、あまり変わっていない。文科省の出してきたような政策が、結局はうまく機能しないまま、やはり、入試はあまり変わらないということになってしまっているのですが、これについて、高大接続は、一体どうなっているのか、教育課程部会では、ほとんど話が伝わってきていません。


これは、むしろ、どうなっているのかです。入試はどうなるのか、大学教育、今、大学も大事だと私は思いますが、大学での学びと高校でのこういう探究、STEAMは、どういうふうな接続を図ろうとしているのか、入試も含めて、どういう対策がなされようとしているのかを伺いたいと思いました。


【荒瀬部会長】 ありがとうございます。


今、市川先生がおっしゃっていただきましたことは、今後の議論の中で、本当に深めていきたいと思います。私立も含めた進学校と言われている学校に、広がるのかどうかという。


これは、広がらなければ、結果的には、何というんでしょうか、やっているところと、やっていないところが、ただ単に線引きができるというだけになってしまって、それなら、学習指導要領の着実な実施というところには、全然つながらないということになってしまいますし、また、学習指導要領の着実な実施が、高大接続にしっかりとコミットしているといいますか、絡んでいるということが、非常に大事だと思いますので、その点も含めて、今後、教育課程部会でも議論ができればと思います。ありがとうございました。


そうしましたら、兵庫県教育委員会、兵庫県立加古川東高等学校、高知県立山田高等学校の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、大変丁寧な御説明と、質問への御回答をいただきました。本当にありがとうございました。両校の、また、兵庫県の県立高校のこれからのますますの教育の充実を御祈念申し上げたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。


どうぞ、御退出をいただいて結構でございます。ありがとうございました。


それでは、議題の2つ目に入りたいと思います。


学習指導要領改訂のたびに実施しておりますが、今般の学習指導要領改訂を受けまして、新学習指導要領の実施状況をフォローアップするために、国立教育政策研究所におきまして、学習指導要領実施状況調査を実施される予定です。


国立教育政策研究所、鈴木センター長から御説明をいただきたいと思います。お願いいたします。


【鈴木教育課程研究センター長】 失礼いたします。国立教育政策研究所の教育課程研究センター、センター長の鈴木でございます。


私ども教育課程研究センターは、初等中等教育の教育課程に関する政策に係る基礎的な事項の調査研究、学校教育機関に対する援助・助言といった業務を担う組織でございます。


スタッフとしては、それぞれの教科等の担当する教育課程調査官、全体として40名余りおりますが、また、アカデミックな研究官等を擁する組織でございます。


私どもセンターの関わる児童生徒を直接の対象とした大規模な調査といたしましては、本日御報告する学習指導要領実施状況調査のほか、悉皆の全国学力・学習状況調査の問題作成、結果分析といったものにも携わっております。


本日は、時間の限りもございますので、御覧いただいておりますこの配付資料に基づいて、簡潔に御説明を申し上げたいと思います。


まず最初に、1番の調査目的でございますが、この学習指導要領実施状況調査は、小、中、高等学校の学習指導要領の改訂に資するため、児童生徒の学習の実現状況について調査研究を行う。そこで客観的なデータを得るとともに、教育課程の基準に係る課題を検証・総括するといったことを目的としております。


先ほどのお話のとおり、指導要領の改訂サイクルということに対応する形で、従来も、おおよそ10年に1回のサイクルで、こういった同様の調査を実施してきたということでございます。


2番目の調査内容以下に関して、まとめてお話ししたいと思いますが、平成29年、30年改訂の学習指導要領については、昨年度、令和2年度から順次、実施に入ったばかりという段階ではありますけれども、こういった指導要領改訂に資するという目的の下、今回の改定の基本方針、それぞれの教科等の主な改定事項などを中心として、小中高校の幅広い教科と学年にわたって、無作為抽出によって、ペーパーテスト調査、質問紙調査、さらには、一部教科では、補完的に実技調査などを実施するということを計画しております。


調査対象につきましては、それぞれの学校種で1,000校、児童生徒は10万人を超えるといった規模感ということを想定しておりますが、これは前回の調査にも準じる規模感でございまして、それぞれの調査冊子について、統計的に最低限必要な数と考えられる、おおむね3,000名以上、少なくともそのくらいは確保しようという考え方で、考えているものでございます。


6番目のこの実施時期以降でございますけれども、この実施時期につきましては、本年度の小学校を皮切りといたしまして、各校種、いずれも予備調査、本調査、分析という3年間にわたるプロセスということを予定しております。一番最後となります高等学校の調査の分析をまとめるのは、今から4年後の令和7年度ということを想定しております。


こうしたスケジュールの下、現在、まずは、小学校の調査の具体設計を進めている段階でございまして、こちらの資料の第7項にありますような対象学年、教科について、ペーパーテストの問題作成などに、今、作業を着手しているところでございます。


今回の改訂の趣旨を踏まえた新しい要素としましては、この資料の中で、赤字で表記しておりますけれども、一つには、社会、理科については、第3学年での調査というものを実施するということ、新設された外国語、あるいは、特別の教科道徳等に関する調査というものも、それぞれ実施する予定でございます。


このほか、8番のその他に記しておりますとおり、これは小学校に限らないことでございますが、今次改訂全般を通じたポイントともなっております資質・能力の三つの柱への整理といったことも踏まえて、調査内容・方法を工夫して、課題の把握というものに努めたいと考えております。


今後、こうした計画の下で、学校現場に過度の負担をかけないよう配慮しながら、関係者の理解・協力の下、有意義な成果が得られるよう、調査研究を進めてまいりたいと考えております。


また、取りまとめた分析結果につきましては、教育課程部会の御審議に適時適切に御活用いただけるよう、本省と十分連携しながら、対応していくことを考えておりますので、引き続き、今後よろしく御指導、御助言をいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


今、御説明いただきましたことにつきまして、御質問等がございましたら、お受けいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。


それでしたら、先ほど手を挙げて……。


すみません、大字委員、お願いいたします。


【大字委員】 すみません、時間のないというところで、全国連合小学校長会の大字でございます。


新型コロナウイルス感染症の状況によって、地域間であったり、学校間では、かなり教育課程の実施上の差が生じていると思うんですけれども、その辺りについて、どのようにお考えなのかをお聞かせいただければと思います。


以上です。


【荒瀬部会長】 お願いします。


【鈴木教育課程研究センター長】 現在、基本的な設計段階でありますので、今、御指摘の点についての精査というのは、これからということになります。


一つには、今年度もまさに同じような課題を抱えながら、悉皆の全国学力・学習状況調査実施したばかりでありまして、そこで、まさに御指摘のような影響が、どの程度、どのように出ているかということも、今、分析をしている最中ということでもございます。


その辺りの成果も見ながら、必要に応じて、こちらの調査についても、何らかの工夫なり、配慮というものを検討してまいりたいと考えております。


【荒瀬部会長】 よろしいでしょうか。


【大字委員】 ありがとうございます。


【荒瀬部会長】 では、末冨委員、お願いいたします。


【末冨委員】 重要な調査でありますので、ぜひともお進めいただきたいんですけれども、一つお願いをしたいことは、保護者調査も並行して行うべきであろうと思っています。


これは、調査対象の中から、さらにサンプリングをすればいいと思っておりますけれども、先日の初等中等教育分科会のほうでも、東大の中村先生たちのチームが御報告されたように、教育委員会や学校単位での取組すら、保護者のSESの影響を大きく受けております。


単純に教育課程の実施状況は、学校の教師の努力によって成立するというものではなく、保護者のSESの影響が非常に大きい。それを媒介して、例えば探究的な学びができているか、できていないか、あるいは、生徒の学習意欲ですとか、教師の指導に対する効力感といったものにすら影響を与えているので、それ抜きの調査というのは、恐らく予算の無駄遣いに近いものになると、私自身は危惧しております。


ですので、全国学力・学習状況調査のほうでも、保護者調査が当たり前に行われるようになった時代であればこそ、今回の学習指導要領実施状況調査につきましても、ぜひとも、保護者の調査もしていただきたい。


併せて、学校の働き方改革と関連いたしますので、学校に関する変数、例えば教員数、サポート・スタッフ数等も含めて、丁寧な調査、深化というものをきちんと意識していただければ、大変有効な調査になるのではないかと思います。


併せまして、先ほど市川委員がおっしゃっておられたんですけれども、高大接続はどうなっていますかということですが、私は、大学入試の在り方に関する検討会議のほうの議論で、高大接続の在り方こそ、中教審で、もう一度検討されるべきだと。


その際に、学力の3要素のように理念論だけではなく、まさに学習指導要領の実施状況調査のように、どのような指導法が、高校の現場で行われており、逆に言えば、大学のほうも、IRのデータ等をきちんと情報公開していただいて、どのような入試形態で入った学生、あるいは、例えばスーパーサイエンスハイスクールの出身者が、どのようにスキルを伸ばせたり、伸ばさなかったりするのかということを、カリキュラム上も、個人としてのスキルや能力の形成上も評価できる仕組みを丁寧に構築しなければ、何度、中教審で議論しても同じことになると思っております。


ですから、先ほどの御指摘は大変重要なものと思って、聞いておりましたが、もはや理念の話だけでは、立ち行かないレベルに、この国の教育政策も来ている。せっかくビッグデータの構築ができるところまで来たのですから、高大接続の議論も中教審でされるときには、ぜひとも、学校カリキュラムと個票データと検証を合わせた形での議論が進められると、高校も、大学も、きちんと学習者に対する学びの保障というものができていくと思います。


以上です。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


鈴木センター長、いかがでしょうか。


【鈴木教育課程研究センター長】 ただいま御指摘いただいた、この社会経済的な環境、SESといったものの分析ということについて、重要であるということについて、私どもセンターとしても認識しております。


これは、教育課程にのみならず、教育条件整備、教育方法の改善などに関する教育政策の企画立案全般にわたって、御指摘のような分析といったものの重要性が高まっていると受け止めております。


ただ、その辺りのところの要請に対応するという意味では、本省、研究所におけるいろいろな調査もございますので、特定の調査で、いろいろな調査目的を全て満たすということは、なかなかに難しいという現実もございます。


今回の学習指導要領実施状況調査も、相当のコストを要する調査でもございまして、質問紙調査につきましては、児童生徒、教師、学校それぞれに対するものは予定しておりますが、今のところは、この保護者対象調査は、これまで、そういったものは実施はしてきていなかったということでございます。


ただ、先ほど申し上げた重要性に鑑みまして、国全体といたしましては、御指摘もありましたが、全国学力・学習状況調査の保護者調査の中では、家庭状況、学力の関係について、経年の変化を把握・分析しておりますし、今後、CBT化を契機として、この辺りの分析を、さらに高度に、精緻にやっていこうということも動きとしてはございます。


そういった様々な調査との役割分担あるいは機能連携をしながら、必要な分析を深めていきたいと考えておりますので、また、御理解、御協力をいただければと存じます。


【荒瀬部会長】 ありがとうございました。


御意見あるいは御質問もまだあるかもしれませんが、時間となりました。毎回のように、申し上げておりまして、私も、だんだんと、もっと委員の皆さんの御議論をいただける時間を確保しなければならないということを言うだけではなくて、実際にしていかなければならないと思っております。今後の運営につきまして、また、事務局と相談をしながら、やっていきます。


今日は、まだしもいろいろと御意見がいただけたと思っているところですが、本日、御発言いただけていない委員、手を挙げていただきましたけれども、結果的には下ろしていただいた委員もいらっしゃいますので、御意見や、あるいは、また補足意見等がございましたら、メール等で、事務局までお寄せいただければと思います。


最後に、次回以降の予定につきまして、石田教育課程企画室長から、よろしくお願いいたします。


【石田教育課程企画室長】 次回以降の予定につきましては、後日、事務局から御連絡を申し上げます。また、部会長からも先ほど御指摘がございましたけれども、議論の進め方等を、もう少し先生方の御意見を頂戴できるような運営上の工夫を進めていきたいと考えてございます。


本日は御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。


【荒瀬部会長】 それでは、本日はこれで終了といたします。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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