岩手県内の学校で新学期が始まってから1カ月が経った。コロナ禍になって以降、今月28日時点で学校を起因としたクラスターは10件起き、そのうち4件は今年8月以降の2カ月間で確認された。児童や生徒は行事の中止など様々な制約の中で学校生活を送り、教職員は子どもの安全を確保しながら「学ぶ機会を確保したい」と試行錯誤している。(西晃奈)

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 9月末の午前10時過ぎ。盛岡市立杜陵(とりょう)小学校の校庭では、マスクを着けた児童が駆け回り、楽しそうな声が響いていた。でも、2週間前は、違う風景だった。

 人口10万人あたりの直近1週間の新規感染者数が15人を超えるという指標の「ステージ3(感染急増)」。その水準の日々が続いた8月中旬、県教育委員会は県立学校と市町村教委に感染対策強化を依頼する通知を出した。夏に人の動きが活発化し、家庭内感染が増えていたためだ。

 同校は、学年を越えた交流は避け、時間帯や曜日で校庭と体育館で遊べる学年を決めた。たとえば月曜なら、校庭は朝に3、4年生が使えて、体育館は1年生か2年生のどちらか1学年が遊べるといった運用だ。

 全県的に感染者が少なくなってきた9月中旬、校庭の制限をなくした。解除日には、大勢の児童が屋外ではしゃぐ光景が見られた。吉田信一校長(60)は「胸が苦しくなった」と話す。

 ほかにも、マスクを着けて間隔を空け、換気をした教室や体育館で音楽、体育の授業をしてきた。児童が楽しみにし、8・9月に予定していた異学年で交流する校外活動や水生生物観察会は中止や延期に。一方、10月の音楽発表会は開催に向けて準備をしている。

 また、大半の先生が担任についており、授業を継続させるため、教職員の感染防止徹底にも注意を払う。

 吉田校長は「子どもの命を守る。その上で、どんな状況でも学びの機会を保障したい」。制限とふれあいの差配に苦慮している。

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 コロナ禍においてICT(情報通信技術)活用を進める学校もある。

 一戸町立一戸中学校では、タブレット端末が1人1台行き届いている。研究主任の山本留美子教諭(42)は理科の授業で、生徒のタブレットに小テストを映した。全員が解き終えると、スクリーンに棒グラフが映し出された。どの答えを選んだのか、集計結果が即座に分かった。「この問題は間違えやすかったね」「ここに引っかからなかったね」。山本さんはミスの多い設問を振り返り、生徒に効果的に復習させた。

 ICT活用授業は、密にならなくても、生徒間で話し合ったり、先生とのコミュニケーションが進んだりする面がある。挙手ではなく、画面に各自が意見を書けば、全員参加の雰囲気がつくれる。端末で調べ学習をすることで、楽しんで授業に臨めることもある。

 密になるグループ学習が敬遠される中、端末を使えば「話し合いで気づき、学ぶことは多い。画面上でみんなの考えを集約すれば、話し合いやすい下地ができる」という利点がある。

 工藤久尚校長は「コロナ禍で、授業に制約が生まれている。学びを止めない方法として、タブレットも含めて工夫したい」と話す。

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 県内で確認された新型コロナの感染者約3400人のうち、公立学校の児童生徒と教職員の感染者は310人(28日時点)で全体の9%を占め、3月末時点から4ポイント増えた。児童生徒の感染者は7月末までは123人だったが、8月末時点では233人となり、1カ月で110人も増加したことになる。佐藤博・県教育長は「お盆で帰省が増え、家庭内での感染が広がった」とみている。