昭和生まれはビックリ!家庭訪問にブルマー、プールまで「学校から消えたもの」(2021年9月11日)|BIGLOBEニュース – BIGLOBEニュース

花のつくりとはたらき

 体操着といえばブルマー、プールが楽しみで、家庭訪問は成績のことを言われるから憂うつ……。そんな昭和生まれのアラフォーにとって当たり前だった学校の風景は今、様変わりしつつある。「遊具の遊び方を知らない」「マッチを擦れない」子どもが増える中、意外なものまで姿を消していた!

■いまどきの学校から消えたもの

 今、学校からプールが消えつつあるのをご存じだろうか? 老朽化に伴い廃止するケースが全国的に増えているというのだ。それだけではない。家庭訪問をやめたりニワトリを飼育しなくなったり、週女の読者世代がよく知る姿からは一変している。学校現場の実態に詳しいジャーナリスト・渋井哲也さんと、教師歴30年超のベテラン先生とともに、いまどきの学校から消えたものを追ってみた。

 昭和の子どもだった読者世代が学生時代に着用していた体操服といえば、ブルマー。実は、明治時代からあったものだというが、平成に入った1990年代からハーフパンツに切り替える学校が増えていった。

 渋井さんが分析する。

「’80年代に巻き起こったブルセラブームの影響が大きい。盗撮が増えた時代でもあり、ブルマー姿の女子が性的な対象として見られ、性犯罪につながるとして世間から騒がれ始めたのです」(渋井さん)

 学校現場では、どう考えていたのだろうか? 埼玉県の小学校で校長を務めた経験がある元教員・Sさんが言う。

「女子の身体の発育は年々早くなっていき、小学校中学年くらいで初潮を迎える児童も多くいたんです。体育の授業中、生理用ナプキンがずれてブルマーからはみ出るのを気にする女子もいて、かわいそうでした。ハーフパンツに変わって安心しましたね」

 夏の風物詩・プールも学校から姿を消している。文部科学省の調査によると、屋外プールを持つ小学校は1996年には2万111校あったが、2015年には1万5163校と約25%減少。中学校でも同様の傾向にある。

「高度経済成長の時代には学校が多くつくられ、プールなどの施設も充実させていました。それが地域のためになると考えられていたからです。しかし、施設の老朽化が進む現在では改築にかかる費用負担が大きく、そのうえ少子化も進み、コストパフォーマンスが悪くなってしまったのです」(渋井さん)

 今年はコロナ禍でプールの使用を控えている学校が多い。それでも「維持費がかかる」とは、前出のSさん。

「たとえ使っていなくても、メンテナンスは1年間を通して必要。実はコストがかかる施設なんです」(Sさん)

■シーソーのこぎ方を先生が教える

 プールの廃止に伴い、公営プールを使用したり、民間のスイミングスクールに委託したりする学校も増えている。

「民間委託の場合、個人情報の漏洩や、どのように安全に配慮するのかという問題が残ります」(渋井さん)

 同じく老朽化に伴い、校庭にあった遊具も次々と姿を消している。Sさんが実情を教えてくれた。

「法改正などもあり安全対策が年々厳しくなっていき、使用禁止にせざるをえない遊具が増えました。シーソーや回転するジャングルジムは、実際に事故が多かったんです」

 事故が起これば学校の責任が問われ、裁判に発展することも。渋井さんが言う。

「リスクを考えると最初からないほうがいい、という発想になる。老朽化したら撤去して、新たにつくらない学校が目立ちます」

 埼玉県の小学校で30年以上にわたり教壇に立ってきたMさんからは、驚きの発言が。

「最近は遊具で遊んだことのない子どもが増えています。小学1年生の担任になると授業の一環として、シーソーのこぎ方や登り棒の登り方など、校庭にある遊具の使い方をひと通り教えるんです。公園でも遊具を撤去する地域が増えているせいかもしれません」

 安全面の理由から消えたものは、ほかにもある。

「理科の実験でおなじみのアルコールランプに代わって、文部科学省はカセットコンロの使用を推奨しています」(渋井さん)

 実際、学校ではアルコールランプによる事故が多発し、問題視されてきた。手や髪、衣服などへ引火してヤケドを負うケースのほか、爆発事故や死亡事故も起きている。

「アルコールランプは日常生活ではまず使いません。カセットコンロを使ったほうが実用的だという考え方もあるのだと思います」

 と、渋井さん。ただ、理科の実験でカセットコンロの使用が主流になると、“あること”ができない子どもが増えてしまったそう。

「いまどきの子どもはマッチを使えません。触ったことがないので、擦る方法もわからないんです」(Mさん)

■「家庭訪問」から「表札訪問」へ

 校庭の片隅にある飼育小屋で、“生き物係”がニワトリにエサやりの当番─、こんな風景も今は昔。動物を飼育する学校自体が減りつつあるうえ、なかでも「ニワトリを飼う学校は少なくなっている」(Mさん)からだ。

「’04年に流行した鳥インフルエンザが影響しているのでしょう。動物アレルギーの子どもや教職員への配慮もあると思います」(渋井さん)

 昭和の時代には、夏休みなどの長期休暇中は子どもたちが順番で世話をするのが定番だったけれど、いまや「当直の先生がエサやりや掃除を行っています」(Sさん)。先生の長時間労働が問題となる中、負担を減らすため飼育をやめる学校もさらに増えていくかもしれない。

 新しい学年になるたび、定期的に先生が生徒の自宅を訪ねる「家庭訪問」。これを廃止する学校が増えている。昨年からはコロナ禍の影響で中止した学校も多いようだ。

「共働き家庭が増え、日中に時間を割いて家へ招く負担は大きい。指定された時間に家にいられない保護者も増えたためでしょう」(渋井さん)

 代わりに行われているのが「表札訪問」。一体、どういうもの? Mさんによると、

「教員が各生徒が暮らす町へ出向き家の表札を確認─、つまりどこに家があるのか把握できればOKというわけです。そこで保護者と話し込む必要はありません」

 そのほか、先生が各生徒の住んでいる地域を見回る「地域訪問」を行う学校もあるという。

「子どものことで話がしたい場合は、保護者に学校へ来てもらい個別面談を行っています」(Mさん)

■アップデートされていく学校

 個人情報保護の観点から姿を消したものもある。子どもたちの住所や電話番号が記載されている「連絡網」は、今ではメールの一斉送信に切り替えられた。

「学校・学年・クラス単位で送ることが可能で、休校連絡などが主な使い道。学校によっては“手紙を配り忘れました”“宿題を変更します”など、細かな連絡をしているところもあります」

 とMさん。個人情報の保護が重視され始めたのは1990年代から。

「当時は学習塾や着物業者などによる名簿の買い取りが頻繁にあり、罰則もありませんでした」(渋井さん)

 同じく個人情報保護や子どもたちを不審者から守るために、名札の取り扱いも変わりつつある。

「名札をつけて登下校させることはやめました。学校内にいるときだけつけるように指導しています。そもそも名札の目的は、教師が生徒を褒めたり注意したりするとき、名前を呼べるようにするためなので」(Sさん)

 時代とともに学校もアップデートされているのだ。

〈取材・文/高橋もも子〉

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