横浜翠嵐が躍進
この10年で最も合格者が増えたのは、横浜翠嵐(神奈川)で90人増でした。10年前には38人しか合格していませんでしたから、3.4倍に増えたことになります。内訳を見ますと、東大が9人から50人、京大が1人から7人、北海道大が3人から13人、東北大が8人から23人など、10年前と同じ合格者数の名古屋大を除いて、残り8大学すべての合格者数が増えました。
同校は2017年10月、神奈川県教育委員会が「県立高校改革実施計画」に基づく「学力向上進学重点校」に指定。重点校となってから入学した生徒が初めて、大学受験に臨んだのが今年でした。合格実績が著しく伸びています。
2位は北野(大阪)で66人増です。京大の95人は全国トップの合格者数で、10年前から44人増えました。今年の京大と大阪大の合格者数合計は150人で、全合格者の75.8%を占め、地元大学に強いことが分かります。10年前は、この2大学の占める割合は71.5%でしたから、それよりもさらに上がっています。
今年の入試では、コロナ禍による地元大学志向が高まったため、その影響もあるとみられます。大阪府では、2011年に進学実績向上を目標にする「文理学科」が府立10高に設置されました。その中で、もともと実績の高かった北野に優秀な生徒が集中し、実績が大きく伸びたと見られます。
3位は日比谷(東京)の57人増です。10年前と比べると、東大は29人から63人に倍以上の伸び、京大は2人から10人、北海道大は3人から14人に増えています。日比谷も東京都教委の進学指導重点校に指定されてから、順調に実績が伸びています。
ここまで述べた上位3校はいずれも、トップ公立高でした。東大トップ10常連の開成、筑波大付属駒場、麻布(いずれも東京)、灘(兵庫)などの有名私立や国立学校がこのランキングに出てこないのは、10年前も既に実績があり、伸び代が大きくないからでしょう。逆に、公立校は改革によって、実績が回復してきています。
私立高トップは、4位の東海(愛知)で54人増です。医学部に強い学校として知られ、今年も国公立大医学部合格者数は1位で、これで14年連続のトップとなりました。次いで、5位の市川(千葉)です。10年前は合計22人しか合格していませんでしたが、今年は75人で3.4倍に増えました。東大が4人から22人、京大が1人から4人など、表に挙げた9大学すべてで合格者が増えています。
また、12位には、東京都市大付属(東京)が入っています。10年前には北海道大3人、東大と東北大各1人の計5人しか合格していませんでした。それが今年は43人増の48人で、9.6倍に激増しています。同校は東京都市大学の付属である男子校ですが、この春の併設大への内部進学者は8人にとどまっています。内部進学の権利を持ったまま、国公立大や私立大の受験が可能で、そのため、進学校として知られています。
表中、公立高、しかも大都市圏の学校が多くなっているのが特徴です。これは、今年だからというのもあるかもしれません。今年の高校卒業生は2015年に中学受験を迎えた世代です。ところが、2015年はここ数年の中では、中学受験の志願者数が底だった年です。東日本大震災以降の不況によって中学受験を断念し、公立中高へと進んだ優秀な受験生が多かったのではとみられています。
そうなると、来年は中高一貫校が伸びるのか、はたまた、公立高の伸びが止まらないのか、気になるところです。
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