Surface ProとAdobe Creative Cloudが高校生の「新たな学び」の要に…九段中等教育学校のICT教育 – リセマム

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 GIGAスクール構想により、小中学校におけるICT教育の環境整備が進みつつある。「高校」においても環境整備が進められるなか、今後はどのように端末を活用するかに、より一層の注目が集まることになる。東京都千代田区の中高一貫校、千代田区立九段中等教育学校では、子どもたちが主体的にICT端末を活用して、情報収集から整理、分析、表現・発信ができることを目指している。

 同校の情報科を担当する須藤祥代先生に、Surface とAdobe Creative Cloudを活用した情報科の「情報の科学」での授業実践、高校生に必要なこれからのICT教育の在り方などについて聞いた。

ハイスペックなSurface だから実現できる、Adobe Creative Cloudを活用した授業

 九段中等教育学校では2020年度末の3月に、生徒と教員すべてにSurface Proを一括で導入した。導入から4か月が経った今、生徒たちは授業や日常の学校生活でSurfaceをどのように活用しているのだろうか。今回、事例として紹介してもらったのは、高校1年生の情報科の「情報の科学」で実践された「CM制作」の授業。生徒が使用するSurface ProでAdobe Creative Cloudを活用した授業だ。

アドビのアプリケーションの画面。右上から時計まわりにAdobe Premier Pro、Adobe After Effects、Adobe Audition、Adobe Photoshop


 制作するCMのテーマは「学校紹介」。まずターゲットやテーマの設定、ユーザー分析を実施。その後、1グループ3~4名で話し合いながら、絵コンテを作成し、それをベースに撮影から編集へと進む。15秒あるいは30秒のCMによって学校の特徴や良さをアピールし、いかに興味を持つ児童とその保護者を増やせるかがミッションとなっている。制作したCMは、同校のYouTubeチャンネルにアップする前提のため、著作権なども考慮して作られたそうだ。

 授業のコマ数の配分は画像編集のAdobe Photoshopと映像編集のAdobe Premiereの使い方を1時間ずつレクチャーしたのち、絵コンテを含めて4時間でCMを制作。絵コンテはPowerPoint OnlineのファイルにSurface ペンでイラストを描き、生徒同士が共同編集しながら制作していたという。Surface ProおよびAdobe Creative Cloudをフル活用しながら、本格的なCM制作手順を踏まえてクリエイティブな授業を展開した。

PowerPointで作成した絵コンテはTeamsで共有


Surface Proを文房具のように使いこなす生徒たち

 「CM制作」をはじめとする、九段中等教育学校のPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)の協働学習では、生徒たちがSurfaceを文房具のように使いこなすようすが多く見られるそうだ。

 たとえば、絵コンテを作成する際は、PowerPointで作成されたテンプレートをMicrosoft Teams でグループのメンバーに共有。そして各々Surface ProやSurface ペンを用いて、共同編集しながら絵やセリフを描くなど、すべての工程をデジタルで完結させたという。「撮影に行くときには生徒が各自のSurfaceを持っていき、1台は撮影用、1台は音声収録用、1台は絵コンテ確認用、1台はデータ確認用などと、おのずと役割を決めて取り組んでいました。生徒たちがデバイスを使いこなすようすは、見ていてとても面白いんです」と須藤先生は楽しそうに話す。

撮影用、音声収録用、絵コンテ確認用、データ確認用などとPC1台1台に役割を決めて取り組んでいる


 生徒たちは、クリエイティブな制作に欠かせないアドビのツールとSurface Proの相性の良さについても、身をもって感じていたようだ。

 Surface Proはタブレットとしても使える2 in 1型のパソコンなので、生徒はキーボードを臨機応変に着脱して自由なスタイルで使っている。ペンやタッチパネル、トラックパッドも使いながら制作を進めているそうだ。アドビのツールでは、さまざまなショートカットが使えるので、覚えればキーボードは非常に頼もしい存在にもなるだろう。

生徒は用途に合わせキーボードを着脱して作業にあたる


 須藤先生は、Surface Proのスクリーンサイズにも言及。「画面が大きければ作業を複数同時にできます。これは圧倒的な良さですね。生徒は複数のアプリケーションを同時に使うことが多い。大画面だと、アドビツールの作業領域も広がり、使いやすくなるため、Surface Proのスクリーンサイズはベストだと思います」と、高校生のICT授業では、画面サイズに十分留意することが重要であることを気付かせてくれた。

 なお、授業後に生徒たちに回答してもらったアンケートでは、Surface Proとアドビツールによる動画編集に関して「タッチパネルも利用できるので、普段使っているスマホの動画編集アプリと同じような感覚で使うことができた」「絵コンテをペンで描いて共有できる」「持ち運びやすい」「重くならずスイスイ動いてくれる」「タッチ、ペン、マウスを使い分けられた」「動画の撮影、録音、編集までを1つの端末でできる点がいい」といった、使い勝手の良さに対するコメントが数多く寄せられている。

生徒が作成した動画

受験を超えた「将来に役立つ」という価値

 情報科以外の教科でもICTの活用は活発だ。生徒との日常的な連絡や学習上のやり取りは、Teamsをコミュニケーションのハブとして利用している。美術ではデッサンやラフをデジタルで描き、英語では自分の発音を端末に録音して確認する。テスト勉強では、生徒が自分たちでFormsの確認テストを作るなど、学校生活の一部として自然に活用している姿が見られるという。

情報以外の授業でも端末を積極的に使用


 行事でもこれらのICTの活用が欠かせない。生徒たちによるオンライン会議や進学ガイダンスなどのライブイベントの配信 、部活動での資料作りや定期演奏会のパンフレットの作成、体育祭では物品発注管理のためにExcelのマクロを組んだり、演舞の審査に動画撮影を利用したりと、まず生徒たちが自分たちのやりたいことができるかを考えたうえで、目的に応じてツールやアプリケーションを選んで実践している。

 このような積極的な端末の使用について、保護者の目にはどのように映っているのだろうか。須藤先生に聞くと、「オンラインを活用した学びは、一見すると遊んでいるように見えてしまう。そのため保護者の理解は欠かせません。ですので、これはどういう授業なのかを生徒自身が自分で保護者に説明するようにと伝えています」という。

 「生徒の姿を見ていると、止まることなく生徒同士でひたすら学び合っています。以前、『情報はまだ受験科目ではないのに、どうしてこんなに一生懸命にやるのか』と生徒に尋ねたことがありますが、彼らは『社会に出て必要でしょう』と言ったんです。生徒たち自身がその必要性や学ぶ価値を感じてくれているのは、とても素晴らしいことだと感じました」とICT教育の意義を生徒の姿から受け取っているようすだった。

グループ内で役割分担をし、適材適所でCM制作を進めたという。生徒同士で学び合う場面も


最適な環境を生徒に提供して支援に徹する

 このようなICT教育の取組みについて須藤先生は「生徒には今まで『学び方を学ぶ』ことをテーマとして伝えて続けてきました。授業で教えることは一部でしかありませんが、インターネット上には使い方に関するたくさんの情報があります。常日頃から、自分がやりたいと思うものがあれば、自分で調べてどんどんやってごらんと話しています」と言い、生徒自身が自ら学びを獲得していくことを学校として推進していることが窺えた。

 こうした教育の在り方を実現するためには、生徒が不便・不自由さを感じることがないようなICT環境の整備が重要だ。

 今回、すべての生徒と教員に「Surface Pro LTEモデル(i5/8/256)」を導入したが、GIGAスクール構想の標準仕様よりも遥かに高いスペックを選択した理由について、「高校生という年齢や将来的な活用を考えると、動画編集や複数のアプリケーションを起動させての作業、さまざまな情報を検索して調べるといった、これからの時代に必須と考えられるスキルを身に付けることが必要でした。そこでこうした用途に合わせた高いスペックが端末に求められるということを、千代田区にもご理解いただきました」と須藤先生は説明した。

 また、「グラフィックでクリエイティブな活動をスムーズに行うには、CPUやメモリといったスペックが高いパソコンが特に必要。生徒たちの現状の使い方を見ていると、高校生にGIGA推奨のスペックでは到底足りず、結果として学びの可能性に制限がかかってしまいます。そう考えた時に、学びを阻害する要素にならないSurface Proは、より生徒の可能性を開くものだったと思います」と語ってくれた。

今回、お話をうかがった情報科を担当する須藤祥代先生


生徒の可能性を拓くICT教育へ

 須藤先生は「生徒はプレゼンテーションにせよ何にせよ、とても上手に作ります。ただそれ以上に、ただ撮影した画像を使うのではなく、必要ならばそれをAdobe Photoshopで加工して使うなど、やりたいことに合わせて使うものを選択しながら『一から作る』という体験が増えることが望ましいと思います。アプリケーション自体も自ら選択をして、たとえば音声の加工や文化祭などでWebページを制作するとなったときでも、生徒がシームレスに使いこなせる環境を整えてあげると良いと思います」と、ツールにしばられることのない柔軟なICTの活用を見据えていた。

 また大学入試が変化してきていることにも触れた。「昨年から大学入試でも、自己プレゼンテーションの動画の提出を求めるところが出てきました。こうした社会背景を見ても、今後は高校生がある程度のクリエイティブなスキルをもつことは必要だと考えています。もちろんスマホでもできますが、やはりパソコンで高度な編集ができる環境がある方が良いでしょう。その意味では、高負荷な作業ができるSurface Proのような端末を持ち、Adobe Creative Cloudを使った動画編集などクリエイティブなスキルを身に着けることは、今後、一層大事になってくるのではないでしょうか」。

 生徒が表現したいものを実現するために望ましい環境を考え抜く。地道にクリエイティブな活動を支援していく。そうした高校生活での経験の積み重ねから、大学生や社会人になった時にさらにやってみようと繋がっていく。須藤先生は「環境があれば、生徒たちはどんどん使っていきます。そこに整った環境があることで新しい発想が生まれてきています」と生徒の可能性をさらに拓くSurface やAdobe Creative Cloudに期待を寄せていた。

 今後も全国の高校におけるICT教育の環境整備は進むと考えられるが、高校生に対してのICTを活用した教育の在り方や日常にどう浸透するかについては、数多くの先生方の模索が続くものと思われる。九段中等教育学校の取組みをはじめとして、今後もさらに高校生の可能性を拡張していくICT教育の進展を期待したい。

高校向け Surface for Education  学びのデバイスも、次のステージへ

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