【特集】メモ習慣と時間管理が身に付く「チェックノート」…本庄東 – 読売新聞

花のつくりとはたらき

 本庄東高等学校附属中学校(埼玉県本庄市)は、中1、中2の指導にオリジナルの「チェックノート」を活用している。宿題や持ち物の連絡、家庭学習の計画、1日の振り返りなどを細かく記録することを通して、メモの習慣と時間管理が身に付くだけでなく、生徒、保護者、担任をつなぐコミュニケーションツールとしても役立っているという。このノートの実際の活用ぶりを取材した。

生徒と保護者と先生をつなぐコミュニケーションツール

「生徒や保護者とのコミュニケーションツールにもなっています」と話す村越先生

 同校は附属中学校が開校した16年前からオリジナルの「チェックノート」を導入している。中2学年主任の村越
健仁(かつのり)
先生は、「忘れ物防止と、メモの習慣を付けるために始めたものです」と話す。

 チェックノートは学期ごとに1冊配られる。表紙の裏に時間割を貼り、最初のページには、「学期の目標と決意」、主要5科目の目標のほか、英検、漢検、数検それぞれ何級合格を目指すか、などを書く。

 次のページからは1日1ページずつ学習状況を記入する作りになっていて、生徒はめいめい授業の科目と理解度、家庭学習の計画と達成度、1日の振り返りなどを記入する。日曜日には1週間を振り返って、今週の学習内容から理解度が低いものをチェックし、次週の予定や、やりたいことを書き込む。また、その週の反省を書いて、保護者から生徒へのメッセージを書いてもらう。

チェックノートはかごに入れてクラスごとに提出し、毎日担任に見てもらう

 これを毎朝のホームルームでかごに入れて集め、日直の生徒が職員室前に持っていく。担任は授業の空き時間に
捺印(なついん)
してコメントを書き、帰りのホームルームで生徒に返却する。

 「いつも丁寧に書く生徒が雑に書いていると、何かあったのかな、疲れているのかな、と気付き、声をかけることができます。また、保護者から生徒へのメッセージに『いつもお手伝いしてくれてありがとう』とか『書いているより、もっとゲームしてるよね』などと書いてあると、家での様子も分かります」と村越先生は話す。

 保護者から先生への連絡が書いてあったり、手紙が貼ってあったりすることもある。「生徒と保護者と教員をつなぐコミュニケーションツールとしても役立っています」

失敗を繰り返さないように改善するツール

 チェックノートのページの一番上には、その日の時間割と授業内容、それに対する理解度、宿題や提出物を記入する欄がある。次いで「HRでの連絡」欄があり、「本日の家庭学習計画」欄と平日の「放課後の過ごし方」欄、週末は「1日の過ごし方」欄が続く。

 「本日の家庭学習計画」欄では、学習する内容に優先順を付け、それぞれの集中度、理解度をA~Cで自己評価する。「放課後の過ごし方」欄には13~24時、「1日の過ごし方」欄には6~24時の表があり、学習時間と学習内容を計画し、その結果としての計画達成度を書き込むようになっている。そして最後に「1日の振り返り」欄があって、その日のプラスとマイナスに評価される行動と、改善策を書き込む構成だ。

科目ごとに色分けしてある篠原さんのノート

 篠原
心海(ここみ)
さん(中2)は、「チェックノートのおかげで、勉強に計画性が出て、勉強と休憩のメリハリがつきました」と話す。

 篠原さんのチェックノートを見ると、期末テスト期間中の日曜日、「1日の過ごし方」欄には、朝7時に「起床」とあり、9時には「理科」から勉強が始まっている。科目名は色分けしてあり、休憩をはさみながら数学、英語、技術家庭科、国語、社会と勉強していく様子がはっきり分かる。

 その日の勉強時間は、8時間45分の計画に対し、実際は合計8時間15分だったため、計画達成度は控えめに「90%」と書き込んであった。「1日の振り返り」欄には「いつもより集中してできた」とあり、担任の村越先生は「計画的に勉強することは大切なことですね」とコメントしていた。

 翌日のテスト当日のページには、「1日の振り返り」欄に「理科はなぜ間違えたかしっかり分析する」と書いてあった。篠原さんは「分析したら、ケアレスミスだったので、次のテストの目標は、ケアレスミスをしないように見直しをしっかりすることにします」と話す。

 村越先生は「中学生ですから、もちろん失敗します。ですから、失敗を気付かせるツールであり、失敗を繰り返さないように改善するツールでもあるのです」と話した。

 チェックノートは、長期的な目標計画にも役立っている。篠原さんは中学に入学してから英語を本格的に勉強し始めた。宿題や小テストの勉強のほか、実用英語技能検定の単語を覚える時間をほぼ毎日作り、中1で英検3級、さらに準2級を取得した。チェックノートの目標には「今年中に英検2級合格」と書いてあった。「チェックノートに書くから勉強しよう、とモチベーションにつながっています」と篠原さんは言う。

時間管理が上達し、勉強にも部活にも効果

勉強内容を数字で整理してある大矢君のノート

 篠原さんが学習内容を科目ごとに色分けしているのに対し、大矢
礼翼(れいと)
君(中2)は、「テスト2週間前に作る計画表には、問題集のここからここまでというページに番号を割り振って書き込んでいます」と工夫を説明する。

 大矢君のチェックノートを見ると、期末テスト前の平日の「本日の家庭学習計画」欄に、「英 プリント(1枚)」「期末勉(1~3)」「期末勉(4~7)」などと書いてある。丸括弧の中が問題集のページを割り振った番号だ。

 その日は6時間勉強し、計画達成度は100%だった。ただ、「1日の振り返り」欄では、「期末勉で簡単な問題ばかりやってしまった」とマイナスの振り返りがあり、改善策として「分かっている問題なら難しいものにチャレンジする」と書き込んだ。

 これに対し、村越先生から「難しいものにチャレンジすることも一つですね」とコメントが返ってきて、大矢君は早速翌日には難しい問題にチャレンジする時間を作ったそうだ。

 大矢君はチェックノートを使うようになってから時間管理が上手になったという。「部活でもこの時間はこの練習をやろう、と時間配分を決めて練習したら、野球も上達しました」

 「大矢君は、野球部は大会などで忙しいのに、時間を見つけてよく勉強しています。チェックノートを活用して成績が上がり、習熟度の高い1組にクラスが上がりました。頑張り屋です」と村越先生は評価する。

 忘れ物防止とメモの習慣を付けることを目的として導入されたチェックノートだが、時間管理を身に付けることも大きな目的となっている。「時間を可視化し、時間を無駄にしない方法を身に付けてほしいのです。例えば、中間テストに比べ科目数の多い期末テストでは、時間の管理が甘いと好きな科目だけしか勉強せず、できた科目とできなかった科目の差ができてしまう。時間を管理することで、それをなくしてほしいのです」と、村越先生は話す。

 チェックノートで生活管理の習慣を身に付けたら、中3からは市販の中高生用手帳「スコラ手帳」を使う。中学でメモの習慣と時間管理を身に付ければ、将来必ず大きな武器になる。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:本庄東高等学校附属中学校)

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