「調べ学習」が宿題や課題で出されることが増えてきています。とはいえ「何をどう進めればわからない」「どうやってまとめるの?」など悩んでしまう子どもも多いものです。そこで、調べ学習の進め方やまとめ方のコツ、保護者ができるフォローについてご紹介します。
調べ学習の進め方4ステップ
「調べ学習」とは、自分で決めたテーマについて調査をし、結果や自分の意見をまとめ、報告(発表)するという学習のこと。2000年代に入り「総合的な学習の時間」での取り組みが進み、小学校で2020年度、中学校で2021年度からスタートした新学習指導要領で、さらにその重要性が高まってきています。
とはいえ、子どもにとっては具体的にどう進めればいいかがわからず、迷いがちなもの。そこで、4つのステップによる進め方を紹介します。
1:テーマを決める
テーマ決めは、実は悩む子が最も多いもの。普段の授業や学習では、与えられた課題に取り組むことが多いため、戸惑ってしまうようです。
よいテーマ設定のポイントは、お子さまの興味・関心を起点にすることです。学校で習ったことや、お子さま自身が好きなことを手がかりに、疑問や興味関心がかきたてられるような質問をしてあげられるとよいでしょう。
たとえば、虹についてであれば「虹ってどんなふうにできるんだろう?」「どうして7色なのかな」「他の国では何色で描かれているんだろう?」といった問いかけをして、最も興味を持ったものを調べ学習のテーマにするのがよいでしょう。
2:テーマについて予想を立てる
テーマを決めたら、まずは予想を立ててみましょう。予想を立てることは、社会でも求められる仮説を立てる力につながるものです。お子さま自身が知っていることや、習ったことを手がかりに自分なりの予想を立てることをサポートしてあげてください。予想を立てることで、調べた結果についての驚きや発見も大きくなるもの。そのため、記憶にも残りやすく、学びを深められるはずです。
3:調べ方を決めて、必要な情報を収集する
調べ始める前に、調べ方の全体像を考えることが大切です。そうしないと、行き当たりばったりの調査になってしまいます。何について、どんなことをどんな順番で調べるかを計画しましょう。
一般的には、まず最初に百科事典や図鑑で基本的な知識を確認します。そのうえで、その他の資料で深掘りしていくと良いでしょう。調べる材料となるのは、次のようなものがあります。
・百科事典・辞典・図鑑
・図書館などの本
・白書などの統計資料
・資料館や博物館
・インターネット・新聞・雑誌
・詳しい人へのインタビュー
なお、調べる際は複数の資料に当たるのが基本原則です。1つの資料だけだと、視点が足りなかったり、偏った内容となってしまったりします。複数の資料を組み合わせて、客観的で偏りのない事実をつかむようにしましょう。
4:集めた情報を整理しまとめる
調べた結果をまとめるときには、「始め(序論)」「中(本論)」「終わり(結論)」の構成を意識しましょう。詳しくは次の段落で説明していきます。
また、集めた情報から自分が考えたことや意見についても自分の言葉でまとめるようにしましょう。ただし、事実と意見・感想を混在させないように注意が必要です。
調べ学習のまとめ方のポイント5つ
調べた結果は、しっかり伝わる形でまとめることが大切です。次の点に注意して、まとめていきましょう。
1:序論・本論・結論の3構成でまとめる
まとめるときには「始め(序論)」「なか(本論)」「終わり(結論)」の3部構成を意識しましょう。自分の頭も整理しやすく、読み手にも筋道を伝えやすくなるはずです。それぞれ何を書けばいいかは、次の通りです。
「始め」(序論)
「何を調べたのか(テーマ)」「なぜそれを調べようと思ったのか(動機)」をまとめましょう。
「中」(本論)
「調査方法」「調べた資料や、実験に使った材料」「調査結果」について書きましょう。実験を行った場合は、実験のプロセスや途中経過についてもまとめられると良いでしょう。
「終わり」(結論)
「わかったこと」と「考えたことや感想」をまとめましょう。客観的な事実と、自分の考えが混ざってしまわないように、見出しなどで工夫することが必要です。
2:見出しを立てる
どこに何が書いてあるかがわかりやすくなるように、項目ごとに見出しを立てましょう。文章を書く前に見出しだけ先に立ててしまうと、整理してまとめていきやすくなります。
3:図や写真など入れてわかりやすく
文章だけでは説明しづらい部分は、図解したり写真を入れたりするなど、視覚的にもわかりやすく伝える工夫をしましょう。実験を行った場合は、実験の途中経過の写真も入れておくと変化のプロセスをわかりやすく伝えられるはずです。
4:参考にしたものもまとめる
どんな資料を参考にしたかという出典も忘れずに示すようにしましょう。出典を示すことは、レポートや論文などでも求められる基本ルールです。本や新聞記事のタイトルを書くだけでなく、誰が書いたか、いつどこで書かれたものかも一緒に示しておくようにしましょう。
5:引用のしすぎに注意してまとめる
参考資料を引用することはOKですが、引用のしすぎには注意が必要です。引用部分が多すぎたりすると著作権侵害となってしまいます。引用は必要最低限にとどめ、引用部分には「 」を付け、出典を示しましょう。
さらに発展した調べ学習にする3ポイント
発展的な調べ学習とするには、次の3ポイントもまとめていきましょう。より深掘りした上級編の調べ学習にできるはずです。
1:今後の課題
今回わかったことに加えて、調査・実験をしたことで生まれた新たな疑問や課題について記しておきましょう。
2:注意点
実験を再現する際の注意点や、調べた内容について考慮しておくべきポイントなどもまとめます。「2020年までの数字を調べてまとめていますが、最新の2021年の数字はまだ公表されていないため、注意が必要です」といった形で書いておくとよいでしょう。
3:発展研究
テーマから派生して行った実験や、調べたことについても紹介すれば、より深掘りされたまとめとなります。ただし、それらのボリュームが多すぎると、何についての調べ学習かのしピントがズレてしまうため注意しましょう。
自由研究にもおすすめ!調べ学習のテーマ例12選
調べ学習のテーマ例をご紹介します。「理科」「社会」「自分が好きなもの」について、それぞれ4つずつ合計12のテーマを紹介しますので、お子さまと一緒に見て、テーマ選びの参考にしてみてください。
理科の調べ学習テーマ4選
1:雲ができる仕組み
夏は入道雲や積乱雲などさまざまな雲が現れる季節。雲がなぜできるのか、どんなときにどんな雲ができるのかを調べるのはもちろん、実際にペットボトルの中に雲を作ってみるのもおすすめです。
2:ウイルスとワクチンの働き
コロナ禍だからこそ、興味喚起しやすいテーマです。ウイルスに感染するプロセスやなぜ流行するのか、感染を予防するワクチンの働きなどをまとめてみましょう。自分が考えた予防策をまとめるのもおすすめです。
3:ヒートアイランド現象の仕組みや影響
ヒートアイランド現象を実感していたり、「なんでこんなに暑いの?」と疑問に思っている子どもにおすすめです。打ち水や屋上緑化といった対策の効果について調べるのもよいでしょう。
4:燃料電池
環境問題に関心のあるお子さまにおすすめです。二酸化炭素を出ださないクリーンなエネルギーとして注目されている燃料電池の仕組みを調べるだけでなく、実際に作ってみるのもよいでしょう。
社会の調べ学習テーマ4選
1:今日食べたものはどこからきてる?
1日に口にした食べ物の食材がどこで採れたものか、どこで生産されたものかなど調べ、地図にまとめましょう。食べ物を起点に世界とのつながりに気づくことができるはずです。食料自給率をあげるための方法についてまで考えられると、より発展的な調べ学習とできるでしょう。
2:ピクトグラムの使われ方
視覚的に意味を伝えるピクトグラムは、身近にありながらも意外とよく知らないもの。オリンピックを機に追加されたものもあるため、タイムリーな調べ学習となるはずです。町中で見つけたピクトグラム、オリンピック・パラリンピックで使われているもの、ピクトグラムの歴史や変化などをまとめましょう。
3:姉妹都市を調べよう
コロナ禍で旅行になかなか行けない代わりに、自分が住む街の姉妹都市について調べて旅行シミュレーションをしてみましょう。姉妹都市について調べるだけでなく、自分の街との比較もできるとより学習が深まるはずです。
4:スーパーやコンビニでお客さんの購入意欲を高めるしかけ
普段よく訪れるスーパーやコンビニについてなら、お子さまも興味を持って取り組めるはずです。動線や商品POP、ついで買いをさせる工夫などお客さんの購入意欲を刺激し、楽しい買い物空間を提供する数々の取り組みについて調べてみましょう。
自分が好きなものの調べ学習テーマ4選
1:好きな野菜や果物の生産量ランキング
好きな野菜や果物について、生産量や消費量のランキングを作成してみましょう。統計資料を読み解く良いトレーニングとなるはずです。自分の予想と結果の違いにも新鮮な驚きが生まれるでしょう。生産量が多い県や国については「なぜ多いか」まで分析できると、学習がさらに深まります。
2:城を敵から守る工夫や歴史を調べる
歴史好きな子におすすめ。さまざまな城について、敵に攻められにくくする工夫や、敵の攻撃をかわす工夫について調べてみましょう。場所や建造物、石垣など項目別にまとめて、比較するのもおすすめです。
3:好きな食べ物の歴史
アイスクリームやグミ、チョコレートなど好きな食べ物の歴史について調べてみましょう。どこで生まれたか、日本に入ってきたのはいつかなど年表にしてみるとわかりやすくまとめられるはずです。また、時代背景がわかるように、歴史的な出来事や当時の文化についても合わせてまとめておきましょう。
4:世界の鉄道
電車好きな子におすすめです。高速鉄道を各国で比較したり、乗客数や線路の長さ、標高など自分ならではの視点でランキング作るのも良いでしょう。また「アフリカ大陸鉄道を作るなら?」など鉄道計画を実際に立ててみるのもおすすめです。
調べ学習の具体例を紹介
実際に調べ学習をする際の具体例を紹介します。グミ好きなお子さまによるグミの研究を例に、調べ学習の4ステップごとにポイントを解説します。
テーマを決める
「グミのぷにぷに食感の秘密を調べる」とします。テーマは大きすぎると、焦点がズレて調べづらくなるため、具体的に落とし込むのがポイントです。
テーマについて予想を立てる
「ぷにぷににするための材料があるのではないか」「スープなどにとろみをつける片栗粉を活用しているのでは?」などお子さまが知っている知識から仮説を立てましょう。お子さまが悩んでいるようなら「他にもぷにぷにの食べ物ってあるかな?」など考えるヒントを与えてあげるとよいでしょう。
調べ方を決めて、必要な情報を収集する
まずは百科事典でグミについて調べます。そこで得られた材料について、さらに事典や本で調べます。食感を決める材料として「ゼラチン」であることが判明したら、ゼラチンについてさらに資料に当たります。
また、作り方を調べるために、レシピ本やレシピサイトのホームページ調査も進め、実際に自分でも作ってみます。
集めた情報を整理しまとめる
ゼラチンにより固まるプロセスは、イラストなどを使って図解しましょう。分子集合の働きで水分が包み込まれる仕組みをまとめて、グミの食感の秘密を解き明かします。
また、実際にグミを作った様子については、写真などを使ってわかりやすく見せます。ゼラチンの分量ごとにグミのかたさにどのような違いが出たかもまとめておきます。
調べ学習の際に保護者がフォローできること
調べ学習は、お子さまもまだまだ不慣れであることが多いため、保護者のフォローが欠かせません。次のようなサポートを心がけていきましょう。
テーマを考えるサポートをする
お子さまが最も悩むテーマ設定については、積極的にサポートをしてあげましょう。ただし、聞き方には注意が必要。「どんなことが知りたい?」だと漠然としていて迷いを増幅させてしまうし、「これについて調べたら?」では強制になってしまいます。
大切なのは、お子さまが興味を持っていること、好きなことを起点にした問いかけを行うこと。「世界で一番速い電車ってなんだろう?」「アイスクリームっていつ生まれたんだろう?」など「知りたい気持ち」を刺激する問いかけを行うようにしましょう。
調べ方のヒントを与える
調べたいことが決まっても、どう調べていけばよいか戸惑ってしまうことも多いものです。口頭で説明しても具体的な調べ方をイメージできないことも多いため、一緒に百科事典をひいたり、ネット検索をしてみたりしましょう。やり方を体感できれば、その後はお子さま1人で進めていけるようになるはずです。
参考になるよい例を教えてあげる
まとめ方に悩んでいるお子さまには、まとめ方のルールを伝えるだけでなく、実際の具体例を見せてあげるのがおすすめです。受賞した自由研究や、わかりやすい新聞記事などを題材に、どんな点がわかりやすいかなどを親子で話せると、どうまとめればよいかを具体的にイメージできるようになるでしょう。
興味深く話を聞く
お子さまにとって最も心強いサポートは、保護者の方が興味深く自分の話を聞いてくれることです。そのため、保護者は「教える」「フィードバックする」という意識でなく、「子どもに質問する」「教えてもらう」というスタンスでいましょう。
「へー、知らなかった!」「これはどうなっているの?」など、お子さまが思わず説明したくなったり、調べたくなるような声かけと雰囲気作りを心がけましょう。
まとめ & 実践 TIPS
「調べ学習」は、お子さまにとってもまだまだ慣れないものであるため、戸惑ってしまうこともあるかもしれません。しかし、自分の興味関心に基づいてアプローチし、わかったことをまとめるという一連のプロセスは、学ぶ喜びや楽しさを感じられるものとなるはずです。テーマ設定や、調べ方、まとめ方など、お子さまが困りがちな部分を適切にサポートし、主体的な学びを深めていってあげましょう。
プロフィール
ベネッセ 教育情報サイト
「ベネッセ教育情報サイト」は、子育て・教育・受験情報の最新ニュースをお届けするベネッセの総合情報サイトです。
役立つノウハウから業界の最新動向、読み物コラムまで豊富なコンテンツを配信しております。
Powered by the Echo RSS Plugin by CodeRevolution.