歴史や校風、卒業生のネットワークまで、名門校の知られざる姿を通してその秘密に迫る「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。MCに登坂淳一、角谷暁子(テレビ東京アナウンサー)、解説におおたとしまさを迎え、「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。
今回紹介するのは、福島屈指の名門「県立福島高等学校」。卒業生で俳優の佐藤B作さんをスタジオゲストに迎え、その秘密に迫る。
人口およそ28万人の福島県福島市。市内には梅や桜など70種類もの花が咲き誇る「花見山」や、「日本の道100選」に選ばれたドライブの名所「磐梯吾妻スカイライン」、そして、東北を代表する温泉地「飯坂温泉」はB作さんが生まれた土地。
そんな魅力いっぱいの福島の名門校が「県立福島高等学校」。校訓は「清らかであれ 勉励せよ 世のためたれ」。明治31年に「福島県第三尋常中学校」として開校し、今年で123周年。開校して以来男子校だったが、2003年から男女共学に。現生徒会長・佐藤くんが校内をリポートしてくれた。
現在は制服がなく、生徒たちは自由な服装で登校。明治41年に造られ、校歌の歌詞にも登場する「心字の池水」。生徒たちが代々大切にしてきたが、東日本大震災により壊れてしまったため、枯山水のように白い石を入れて整備したという。
福島高校について、生徒たちは「県内有数の進学校。得意な勉強をますます伸ばしていきたかったので入学した」「何かに打ち込んだり挑戦する人が多い。そういう人から刺激を受け、自分の積極的な行動に繋がった」「真面目な時はみんな一生懸命取り組み、楽しむ時は全力で楽しもうとする…切り替えがいいと思う」とその魅力を語る。
スーパーサイエンスハイスクールにも指定され、独自の理系教育も。生徒たちが小学生に理科を教える特別講座や、「エッグドロップコンテスト」というユニークな催しも。3階ほどの高さから生徒が落としたのは、生卵が入った落下傘。物理の知識を活かし、卵を割らずに着地させることができるかを競い合う。
OBには、「フェイスブックジャパン」味澤将宏代表、「東北電力」樋口康二郎社長、タレントでプロレスラーのゴージャス松野さんなど、各分野で活躍する面々を輩出。
かつてはバンカラ一色の男子校で、生徒の多くが下駄履きで通学。そんな下駄履きの生徒たちの中には、「カルビー」の伊藤秀二社長も。「大声での校歌・応援歌の練習。そして下駄履きを指導され、すぐに自由・バンカラな生活に染まっていきました。勉強でも遊びでも、”やりたい事は自分自身で行動しなければ何も成し遂げることは出来ない”という事を学びました」とメッセージを寄せた。
伝説のバンド「BOØWY」のドラマー・高橋まことさんも福島高校のOB。「人に言われたことしか出来なくなっちゃダメ。やりたいことをやろうと思うと躓いたりするけど、ヘナッとならないぐらいの気持ちを強く持とうよ」と高橋さん。高橋さんは応援団だけに許された「高下駄」に憧れて入部し、団長にまで上り詰めた。
福島高校が守り続ける伝統「応援団」。100年以上の歴史があり、新入生が入学すると、まず応援団から「応援歌講習」を受ける。男女共学になってもバンカラな伝統は受け継がれ、現在の団長は歴代3人目の女性団長。
応援の伝統は東日本大震災でも力を発揮。そこにはOBたちが母校のために力を合わせた「梅の絆の物語」があった。
福島高校は「梅高」と呼ばれるほど梅を象徴としている。その理由を佐藤弘樹校長先生は、「寒さに耐えて百花に先駆けて花をつける。花の後にも実がなり、(その実が)薬や果実として世の為に立っている。梅のシンボルは本校の大切な考え方。『清らかであれ 勉励せよ 世のためたれ』は本校にある梅章の教え。これからの世の中のために、役立つリーダーを育てていきたい」と語る。「世のためたれ…」その教えが活かされた出来事があった。
2011年の東日本大震災。福島高校も校舎が損壊した。生徒たちは教室を使えず、高校生活3年間を仮設のプレハブで過ごすことに。
当時の生徒会長・本田さんは、「震災にどう向き合っていくかは福島高校生みんなが考えていた。プレハブ小屋で過ごし、納得がいかない時もあった。だけど、少なくとも僕らは、3年間で思い出がないとか残念だったなって人はあまりいない」とコメント。厳しい環境での3年間だったが、それでも皆、前を向いて卒業できたという。
その力となったのが、OBたちからの「梅」の贈り物だ。
福島県でエネルギー関連の会社を経営しているOBの篠木雄司さんは、「後輩たちに何かひとつでも良い思い出を作ってあげたい。福島高校を卒業する誇りになることをやってあげたい」と、梅の木を贈ることを決意。「梅の花は厳しい寒さを耐え忍び、春の一番最初に咲く花。大変な状況の中で学んできた子どもたちが、前向きに自分たちの花を咲かせようとする姿が、梅の花と重なった」と振り返る。
今こそ母校の教えが活かされる時…。「どうせなら日本で最高の梅を贈ろう!」と、学問の神様・菅原道真を祀る「太宰府天満宮」の梅を贈ることを思いついた。しかし、「太宰府天満宮」1000年以上の歴史の中で、神社以外に梅の木を譲ったことはなかったという。
「門外不出の梅だったので、アポを取ると絶対に断られる」と考えた篠木さんは、手紙を持参し、突然「太宰府天満宮」を訪問。第39代宮司・西高辻信良さんは「現役生徒の辛さや悔しさを、同窓生が自分のことのように感じているのがすごい」と、その思いに心を打たれたという。
こうして、5本の梅が福島高校へ。道のりは1400kmにも及び、輸送は運送会社を営むOBが引き受けた。費用は同窓会が全面支援。梅の絆は、OBたちの手でバトンリレーされたのだ。
「良い学校には条件があり、そのひとつが先輩と現役とが繋がっていること。梅の木が大きくなるのと同時に『自分たちも成長して夢を実現していこう』という現役生たちの姿を見て感動した」と西高辻宮司。
おおたは「先生から生徒に何かを教えるだけではなく、先輩後輩の縦の繋がりの中での教育力というのが、名門校たる所以。その象徴が福島高校の場合は梅であり、自分たちらしさみたいなものに置き換わる。自分たちの拠り所になっている」と解説し、B作さんも「いい先輩が沢山いますね。生徒たちを元気づけようと、自分の仕事だけではなく、そういうところにまで目が行く。頭が良いだけではなく、人間的にも素晴らしい人が多いんですね」とコメント。
さらに、原発事故から10年が経ったことを受け、B作さんは「復興も遅れているし、福島の子が戦いながら生きてきた10年だったのではないか。故郷を元気づけようと東京で作った芝居を持って行ったりすると、こちらが元気づけられる。歓迎して応援してくださるので、逆に励まされている」とその想いを語った。
最後にB作さんは、「生きるというのは、良いことばかりではなく辛いことの方が多かったりするけど、物事を投げないでコツコツ頑張る。少しずつ毎日努力することが必要だと、福島高校時代に教わった気がする。芝居や演劇作りで失敗することもあるが、『これで負けちゃいけない、次はこの何倍も面白いものを作ってやるぞ』と思える人間に育ててもらった。これぞ梅高!! 梅に導かれ、梅に応援されて強くなれた。梅があっての高校」と伝え、番組を締めくくった。
他にも、B作さんの青春時代や人生を変えた友情、応援団・女性団長からのエール、福島高校の校歌など、盛り沢山でお届けする。
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