2年ぶり 青春集う…第45回全国高等学校総合文化祭 31日に開幕 – 読売新聞

2年ぶり-青春集う…第45回全国高等学校総合文化祭-31日に開幕-–-読売新聞 教育関連ニュース

 第45回全国高等学校総合文化祭「紀の国わかやま総文2021」が31日、和歌山県で開幕する。「文化部のインターハイ」とも呼ばれる、高校生にとって、国内最大級の文化の祭典。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は初のウェブ開催となったため、2年ぶりに開催地に集う。演劇、日本音楽、郷土芸能などの19の規定部門のほか、特別支援学校、英語、軽音楽といった開催県独自の三つの協賛部門を加え、計22部門。8月6日までの7日間、感染対策をとりながら、厳しい状況のなかで努力を重ねてきた成果を披露する。

 全国高等学校総合文化祭の第1回大会は1977年、千葉県で開催された。高校生の日頃の芸術文化活動を広く公開する発表の場であり、同じ志を持った全国の仲間と交流する場でもある。


女優



岡本玲さん

 
つらい時こそ 強くなれる

大会マスコットキャラクター「きいちゃん」を手に、笑顔を見せる岡本さん=須藤菜々子撮影
大会マスコットキャラクター「きいちゃん」を手に、笑顔を見せる岡本さん=須藤菜々子撮影

 「演劇が好きで仕事にしている者として、文化活動の大会が和歌山で開かれるのはとてもうれしい」。女優の岡本玲さんは、目を輝かせる。

 和歌山市で生まれ育った。2011年からは県が委嘱する「わかやまパンダ大使」を務め、地元の魅力を発信している。「和歌山の人は控えめで、積極的にアピールするわけではないけれど、縁の下で支える力強さや、受け入れる心の広さがある。『みんなで頑張ろう』という精神もあるので、総文祭の会場に合うのでは」

 自身の子供時代は「やりたいことが多すぎて、時間が足りないタイプ」だったと振り返る。珠算や書道、ピアノに塾と、日曜以外は毎日、習い事の予定がびっしり。「途中で辞めるのが嫌で。負けず嫌いなんです」。珠算で何度も全国大会に出場するなど好成績を上げる一方、中高一貫校の県立向陽中学の受験も突破した。

 12歳でファッション誌のモデルを始め、中学を卒業して上京するまでは、和歌山と東京を往復していた。表紙の登場回数で記録を作るなど、絶大な人気があったが、身長が低いこともあり、モデルとはまた違う、人前に出て表現する仕事をしたいと、芝居のレッスンを受け始めた。

 ターニングポイントとなった舞台がある。上京してしばらくの頃、東京・東銀座の小劇場で上演された「Legend」に出演。過酷な状況を生きる少女の役を演じた。終演後、年配の女性に「めちゃめちゃ良かったです」と、握手しながら言われた。「同世代に見てもらう仕事が多かったけれど、自分の母親より上の世代の方に直接、感想を言ってもらえた。あの喜びは忘れられない」。演劇の素晴らしさを実感した瞬間だった。

 その後、女優としてテレビ、映画など、幅広く活動している。昨年は、自ら出演した二人芝居「ダニーと紺碧の海」で初めてプロデュースに挑戦し、ほぼ満席を達成した。

 「自分が今までやってきたことは間違いじゃなかった。これからも演劇をやっていきたい」と決意を新たにする経験になった。また、「これまでで一番、人とのつながりやあたたかさを感じた。『お芝居は一人じゃできない』と、心底思った」と語る。

 東京の高校時代は、モデルや女優の仕事で学費や生活費を賄っていたため、部活をすることはできなかった。大学受験時も、仕事をセーブしないまま、一般入試で日本大学芸術学部に合格した。

 大変なこともあったが、「自分がやりたいことをやるため。つらいことがあるほど、強くなる。あの時、がんばったからこそ、いまの自分があると思える」と笑顔で振り返る。

 今の高校生は、この1年半、コロナ禍で部活動が何度も停止されたり、他校との交流が制限されたりと、厳しい状況の中、それぞれが「やりたい」と思う部活動を続けてきた。その成果を持ち寄って総文祭へ参加する彼らへのメッセージは?

 「大変な状況下だからこそ、できる喜びや楽しさ、人と一緒に何かをつくる難しさをより感じられる。物事に敏感になって、いろいろなものをキャッチ出来る、すてきな機会になるよう祈っています」

 1991年生まれ。小学6年の時にファッション誌「ニコラ」の専属モデルオーディションを経てデビュー。女優として、ドラマ「純と愛」「わろてんか」「わたし旦那をシェアしてた」ほか、映画や舞台など、多くの作品に出演。珠算や書道、漢検など、多くの資格を持つ。中学3年の時、高円宮杯全日本中学校英語弁論大会で県2位になった。現在、東京・世田谷区の世田谷パブリックシアターの舞台「森 フォレ」に出演中。8月27日から横浜市・KAAT神奈川芸術劇場の「湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。」に出演予定。

日本音楽

 
箏の音色 大河のよう…モットー「心はひとつ」 橋本(和歌山)

息の合った演奏をする橋本高邦楽部
息の合った演奏をする橋本高邦楽部

 
ジュニアプレス 出場校を取材

 子ども記者団「ヨミウリ・ジュニアプレス」では毎年、総文祭を現地取材してきました。しかし、コロナ禍で首都圏から和歌山県に行くことが難しくなり、今回は断念しました。そこで、総文祭取材としては初となるオンライン取材を試み、日本音楽部門に出場する和歌山県立橋本高校邦楽部のみなさんにお話を聞きました。

 同部は、全国大会の常連で、総文祭では2014年に最優秀賞にあたる文部科学大臣賞を受賞。一昨年も2位の文化庁長官賞を受けています。

 私たちは同校と首都圏の自宅をオンラインで結び、練習を見学しました。演奏されたのは、様々な川の流れを
(こと)
の合奏で表現した「大河」という曲。先輩たちも演奏したという部員あこがれの曲で、1年から3年まで20人の部員が五つのパートに分かれ、演奏します。

 深い和音が響き合い、自然の偉大さを伝えます。箏の弦をたたいて岩に激しくぶつかる水を表現する、高度な演奏方法が組み込まれていたり、演奏中に
(こと)()
を動かして音を変えるなど、繊細、かつ滑らかな音色、一糸乱れぬ大迫力の演奏に、圧倒されました。

 大人の演奏指導者の声かけに加え、演奏中に気になる点があったら、3年生がすかさず助言します。経験の浅い1年生には、問いかけるようにやさしく話しているのが印象的でした。

 練習後、部長の三島優依さん(2年)と、松尾星夜さん(3年)に、話を聞きました。

 同部のモットーは「心はひとつ」。曲を演奏するにあたって、作曲者の自然への価値観をくみ取り、イメージを部員同士で話し合うなど、コミュニケーションを大切にしています。「少し曲のとらえ方が違うだけで、箏の音色が変わります」と、松尾さんは言います。

 演奏中も、他の部員の音をしっかり聴くことを心がけているそうです。練習の合間には、部活以外の相談ごとをすることもあるなど、学年を超えて、とても仲がいいそうです。

 練習は平日3時間、土日は7時間にもなることがあります。勉強との両立が難しそうですが、三島さんは「忙しいけれど、その分、時間を有効活用しようという意識を持つことができるようになった」と話します。

 昨年3月からしばらく、休校になったときなど、練習が思うようにできない時期がありました。その時は部員が各自、箏を自宅に持ち帰り、演奏風景を動画で撮影し、部員同士でアドバイスしました。

 それでも、合奏を再開した時には、音を合わせるのが大変だったそうです。厳しい状況のもと、工夫して時間を有効に使い、仲間と協力して作品に取り組んできたのです。

 箏の魅力について、三島さんは「単調ではない様々な音が出せること」、松尾さんは「一般的には古典的で堅苦しいイメージがあるが、実際は幅広い曲があって面白いこと」と語ります。「残酷な天使のテーゼ」や「パプリカ」といった最近の曲に挑戦することもあると聞き、箏が身近に感じられました。

 総文祭への意気込みをたずねると「地元開催はなかなかない機会。だからこそ、優勝をつかみとりたい」と、2人は声をそろえました。

 日々努力を重ね、生徒が力を合わせて主体的に演奏を完成させる。年に1度の舞台にかける部員の皆さんの思いが、箏の音色にもこもっているように感じられました。

 ※「ヨミウリ・ジュニアプレス」は、読売新聞が運営する子ども記者団です。前身の子ども記者団の発足は1984年で、作文、面接などの審査に合格した首都圏の小5~高3約40人が活動しています。


郷土芸能

 
オリジナル曲 和太鼓で りら創造芸術(和歌山)

真剣な表情で練習するりら創造芸術高の和太鼓部員
真剣な表情で練習するりら創造芸術高の和太鼓部員

 初出場のりら創造芸術高(和歌山県)は、「郷土芸能部門」のトップバッターとして和太鼓を演奏する。大きさの異なる「
附締つけしめ
太鼓」「
おけ
胴太鼓」「長胴太鼓」の3種を、「和太鼓部」に所属する1~3年生の男女14人がたたき、低く響く音色から軽やかな音色までを奏でる。

 部員の大半は、高校で初めて和太鼓を触ったという。鹿島萌美路さん(3年)は「学べば学ぶほど、和太鼓の音色の多さや深みを感じられる」と語る。

 総文祭で披露するのは、地元・和歌山県ゆかりの戦国武将の真田幸村らに仕え、後に敵味方に分かれて戦った忍者の兄弟をイメージしたオリジナル曲「
あか
の忍」だ。和太鼓を指導する嶋本
りょう
特別講師が作曲した。

 3種の太鼓の音色を組み合わせ、曲が進むにつれて主役となる太鼓が入れ替わっていく。歴史の荒波に
翻弄ほんろう
された兄弟の運命を表しているという。打楽器では難度の高い「悲しみ」の表現にも挑戦する。

 嶋本さんは「優勝したい、という生徒の声に応え、妥協を許さず作曲した」と話す。同校には演劇や殺陣、ボイストレーニング、ダンス、能などの授業があり、将来は表現者を目指す生徒が多く在籍する。「表現したいという意欲が一番大事。本気で和太鼓に取り組む経験を通して得たものは、それぞれの分野にも生きるはず」と力を込める。

 全体での練習は週1回、約2時間半と限られているが、多くが学校近くの寮に住んでおり、夜も自主練習に励んでいる。中筋翼さん(2年)は「トップバッターとしてのプレッシャーもあるけれど、『すごいな、りら』と思ってもらえる演奏をして、優勝したい」と、開幕を待ちわびている。

演劇

 
歌、踊り…パワフルな舞台 市立広島商(広島)

マスク姿で練習に励む市立広島商業高演劇部員
マスク姿で練習に励む市立広島商業高演劇部員

 創立100周年の節目に初出場を果たす広島市立広島商業高演劇部。演じるのは、戦争に
翻弄ほんろう
されながら歴史を刻んだ学びやの重みと、コロナ下を生きる若者のたくましさを伝えるオリジナル劇だ。

 同校は1921年に創立され、「市商」の呼び名で知られる伝統校。顧問の黒瀬
貴之たかし
教諭(57)が「市商らしい作品を」と脚本を執筆し、昨年9月から稽古を続けている。

 物語は商業学校が戦時下、「造船工業学校」に変わったり、生徒が軍人勅諭を暗唱させられたりする場面を通し、戦火が迫る中で学校生活が
変貌へんぼう
していく様子を描く。

 見せ場の一つは、原爆投下後、生徒の目の前で校舎が焼け落ちるシーン。動員先の工場から駆けつけた生徒らが叫ぶように校歌を歌い、消えゆく学舎を見送る。

 演じる側の部員も、新型コロナウイルスの影響で自宅待機を余儀なくされ、目標にしていた文化祭が中止になった。山川結衣さん(3年)は「市商の歴史と自分が生きている世の中が似ている気がする」と、当時と自分たちの境遇を重ね合わせる。

 劇中、生徒たちの感情が高ぶり、同校に伝わる「市商音頭」を激しく踊る場面がある。稽古場で部員たちは2種類の振り付けをマスターしようと、マスク姿で走り回り、跳びはねる。蒸し暑さがこたえる6月の午後。休憩のたびに、床にへたり込む部員もいる。

 本番は目の前。部員同士で厳しい声が飛び交い、張り詰めた空気が漂う。それでも平山晴菜さん(3年)は「全国に市商のことを知ってもらえるチャンス。やりがいを感じている」と目を輝かせ、小畠詩音さん(3年)も「演劇の楽しさを知ってほしい。パワフルな舞台にしたい」と決意している。



マーチング



バンド

 
行進 全国屈指の結束力 大洗(茨城)

様々なフォーメーションを確認しながら練習する大洗高のマーチングバンド部員たち
様々なフォーメーションを確認しながら練習する大洗高のマーチングバンド部員たち

 茨城県立大洗高マーチングバンド部「BLUE―HAWKS」は、全国大会で20回も金賞を受賞している国内屈指の実力校。持ち味は、基本的な演奏技術力と、難易度の高い移動であっても一人たりとも乱れない結束力だ。

 この部にあこがれて県外から進学し、寮生活を送る生徒もいる。部員93人は全員が音楽コースに在籍している。音楽理論や演奏を授業で学んでおり、演奏レベルは高い。

 マーチングバンドの難しさは、演奏するだけでなく、フィールド上で前後、斜め方向に行進し、様々なフォーメーションを展開しなければならないこと。

 長年指導する有国浄光監督は「動きながら演奏しつつ、メンバー同士が接触しないようにするのは大変なこと。基礎練習を繰り返しています」と話す。

 ただ、昨年は新型コロナウイルスの影響で、大会や演奏会が次々と中止になった。練習を重ね、実力を磨いても、場数が踏めなかった。昨年の総文祭も動画収録だっただけに、部長の岡部恵太さん(3年)は「今年は本番で、大洗らしいサウンドを生で聴いてほしい」と意気込む。

 総文祭では、「ナイルの守り」「片目の水夫の伝説」「星条旗よ永遠なれ」の3曲を披露する。マーチングの定番曲を選んだのも、自信がある証し。

 7月からは“総文祭モード”に入り、経験の浅い1年生を加えても統一感のあるパフォーマンスができるよう仕上げに努めている。

放送

 
スノーアートを足かけ3年取材 帯広三条(北海道)

雪原で様々なアングルからスノーアートを撮影する帯広三条高放送局の生徒たち(右)
雪原で様々なアングルからスノーアートを撮影する帯広三条高放送局の生徒たち(右)

 北海道帯広三条高の放送局(部)は、地元の中札内村で行われたスノーアートのイベントを足かけ3年、取材したビデオメッセージで、放送部門に参加する。雪原をキャンバス代わりにひとりで4万歩歩き、きれいな模様を描き出すこのイベントを知ったのは、2019年秋。スノーアーティストの梶山智大さんに許可をもらい、練習風景やイベントの盛り上がりを撮影してきた。

 局長の
下里佳輝しもさとよしき
さん(3年)は、「雪を使ったイベントは北海道らしいし、村の冬を盛り上げようという熱意を紹介したいと思いました」と語る。ただ、十勝地方は厳冬期は氷点下20度を下回ることも多く、凍える寒さの中での撮影は、カメラのバッテリーの持ちが悪くなるなど大変。「雪用のスノーシューズを履いていても、足を取られて歩くのもままならなかった」という。コロナ禍前の20年2月のイベントでは、インドネシアからの観光客の感激などもカメラに収めた。

 同校放送局は、氷の塊が海岸に打ち上がるジュエリーアイス、氷で作られた厳冬期にだけ見られる幻の村など、十勝ならではの風景を積極的に撮影してきた。総文祭には12年以来、8度目の参加となるが、コロナ禍で道内他校との交流も難しい状況が続いてきただけに、5人の局員はみな全国の仲間と語り合う総文祭を楽しみにしている。

文芸

 
ホスト役として「和歌浦」を案内 和歌山北(和歌山)

和歌浦の玉津島神社で、和歌山市語り部クラブの人たちに、ガイドの仕方を学ぶ和歌山北高文芸部のメンバー(右)
和歌浦の玉津島神社で、和歌山市語り部クラブの人たちに、ガイドの仕方を学ぶ和歌山北高文芸部のメンバー(右)

 「若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る」(山部赤人)と万葉集に詠まれた和歌山市の景勝地・和歌浦。和歌山北高文芸部は、文芸部門の文学研修3コースのうちの一つ「和歌浦コース」で、多くの文人が訪れたこの景勝地をホスト役として案内する準備を進めている。

 「多くの歌人が訪れ和歌の聖地と呼ばれる玉津島神社で短歌を奉納するなどすれば、歌の世界も身近に感じてもらえると思う。潮が引いたときの干潟の景色にも癒やされます」と藤井
晃杜てると
部長(2年)は意気込む。

 6月初めには、ボランティアで和歌浦などを案内している語り部クラブの人たちについてガイド研修を行った。和歌の聖地・玉津島神社からアーチ形の不老橋を経て、万葉集を学べる万葉館までを歩きながら、ゆかりの天皇のことなど歴史をどう織り込んで説明するか、勉強になったという。

 準備を始めたのは昨年からで、他に紀州漆器作りも学ぶコースの設定は3月に卒業した先輩たちの置き土産。当日は、11人の部員で手分けして約150人に案内する大仕事に挑むが、「全国から来てくれた高校生に和歌浦の良さを知ってほしい」(藤井部長)と見所を案内するしおり作りも進めている。

写真

 写真部門には、47都道府県から計307点の応募があった。受賞作30点のうち、上位5点を紹介する。


 新型コロナウイルスの影響で活動ができない期間が何度もあり、PRイベントがいくつも中止になりました。僕自身も含め、生徒企画委員のモチベーションを保つのが難しい面もありましたが、活動自粛明けの会議には全員が出席し、気が引き締まりました。厳しい状況が逆に、みんなの気持ちを一つにしてくれました。

 大会テーマに「届けよう和の心」という言葉が入っています。高校生でも、いろいろな人を笑顔に出来て、だれかの希望になることができる。大会を通して、その尊さやすばらしさを、多くの人と共有できたらと思っています。

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