資料3、4に基づいて、事務局より説明があった。委員の意見は以下のとおり。
【委員】
・総論部分のうち、段階的な試行・検証はぜひとも入念に行っていただきたい。今年の春、本校の第6学年180名が、タブレットPCを使って一度にアクセスしようとしたが、30%ぐらいの子供がタイムアウトしてしまうという現象が発生した。1クラスのみ行っても、何人かはうまくいかないような状況が生まれてくる可能性がある。調査日だけでなく、学校でも事前に状況を確認できるようなツール等をぜひ開発していただきたい。
・また、システム面で問題が発生した場合に対応できる教員の育成もかなり時間がかかるだろう。このような点も、段階的な試行・検証の中では非常に重要な部分ではないか。学校現場の対応力といったところも含めて検討していただきたい。
【委員】
・段階的な試行・検証は、CBT化を進めていく中で重要であると考えている。今後の試行・検証の中で、合理的配慮の在り方について取り組む必要がある。ぜひ特別な支援の必要な児童生徒も含めての試行・検証を進めていただきたい。
・p3「(2)端末による学習環境への習熟と発達段階などへの考慮」について、CBT化を進めていくという技術的な部分もあるが、やはり指導改善への活用の側面を考えると、校長会等にもお願いをしながら指導をしっかりと行っていくことがあるとよいのではないか。
【委員】
・総論最後の体制整備について、教育委員会・学校現場では、CBTやIRT等の技術面、特にサーバなどのシステム面について、具体的なことが全然分からないという方も少なくない。人材育成の観点も考えておかないと、厳しいのではないか。教員養成カリキュラムの中にCBTに関わる事項は含まれていないし、教員養成大学にそれらを担当できる教員が配置されているわけでもない。このままだと、学校の教員も行政も技術面はまったく分からないという状況が起こるだろう。教員養成カリキュラムの観点も含め、人材育成についてぜひ検討していただきたい。
【委員】
・「(3)CBT化による学校現場への負担の考慮」に関連して、今後CBTをやっていくに当たっては、いわゆるICTに関わる色々な相談やトラブルシューティングなどを担う、恒常的なサポートセンター的なセクションが必要になってくるだろう。それをどこかに設けるという点を記載してもいいのではないか。
【委員】
・「タイピングスキル」には、キーボード入力だけでなく、かな漢字変換なども入っているのか。変換ソフトがいくつかあるので、それによってスキルの習熟度が違うなど、困る状況が出てくるのではないか。この辺り、どのような認識でおられるのか。
【事務局】
・令和3年度の試行・検証の詳細は、事務局において検討しているところ。片仮名、平仮名、数字、アルファベット等が一通りタイピングできるかどうか検証した上で、調査問題の解答状況を見ることを検討している。ご指摘いただいたとおり、端末等の違いなども含めて、今後検討していく必要がある。
【委員】
・TIMSSのときには、キーボードを使ったタイピングだけでなく、フリック入力も認めて調査を行っていたと思う。現状でも、中学校3年生にはキーボードのみでも調査できると思うが、小学校6年生にはフリック入力についても同様に調査してはどうか。
【事務局】
・文字入力については、令和3年度の試行・検証の中で取り組んでいけたらと思っている。文字入力方法について、現時点でキーボードに限っているということではない。現時点では、様々なパターンを試行してみることが重要ではないかと考えている。
【委員】
・タイピングスキルに関連して、調査問題への解答だけでなく、例えばCBTシステムにログインする際の全角半角の区別やパスワードでの大・小文字の区別、あるいは特殊な記号の区別についての知識も必要である。そういった文字入力部分は習熟した状態でCBTに臨むことが望ましい。
【委員】
・p8の「出題方法」について基本的に賛成。p8に記載があるCBTならではの出題方法はとても重要。国語の場合、今まで全国学力・学習状況調査問題でも、文字で学習場面を設定していることが多くあった。映像や音声等を使えば、そのような場面について子供たちがより現実味を持って、想定しながら問題を考えることができるであろう。子供たちが興味を持つような、より実際の学習に即した問題について検討していただきたい。
・p8にある記述式問題の出題は、とても重要だと思っている。技術の進歩、成果を取り入れた試行等をぜひ行っていただきたい。
・日々の学習の中でコンピュータが使用される場面が増えていくと考えられるため、日常的な学習評価の参考となるような問題も意識したらよいのではないか。
【委員】
・悉皆調査において複数の問題冊子を使用することについて、第2回CBTWGにおいて、出題のパターンについて色々と御紹介した。問題バンクを使う方式やIRTとCBTを組み合わせた形はよく知られているが、全国学調が持つ波及効果や問題作成のコストなどを考えたとき、複数の問題冊子を用意することは理想形としつつも、長期的な課題として考えなければならないだろう。まずはCBTでの調査実施を安定軌道に乗せるということ、調査問題のメッセージ性も含めた国の事業としての在り方について、総合的にバランスを取るということを考えると、実施日程に即して、少数の分冊を使うというところからが第一歩ではないか。一方で、データ駆動型教育といったことも言われ始めたので、シンプルなデータ収集デザインから指導改善に生かせる情報をフルに得るということを考えていければと思う。
・p12にある結果公表や結果提供に関して、海外の学力調査の事例を概観する必要があるだろう。海外の学力調査では、問題を全て公開することなく指導改善に生かせる情報を得ている。それがどのようにして可能になっているのか調べ、日本の学力調査としても反映させたほうがよいだろう。どうしたら問題公開を少数にとどめつつ、統計的な管理をしながら、うまく指導改善に生かせる情報が得られるか、先行事例を踏まえたほうがよい。
・p12の解答のログデータの扱いについて、調査では、正誤や解答類型になったかというデータだけを採点に使うということが、まず考えられるわけだが、ログデータそのものは、児童生徒の学力のありのままの姿を投影したものとも考えられる。一方で、まだ専門的な分析のメソッドが確定しているわけでもないし、様々な分析の仕方があり得るだろうと思うので、これ自体は学術研究の資料としてもとても貴重であろう。従って、このログデータについては、長期的な目線でありながらも、研究資料としての活用可能性というところも少し触れてよいのではないか。
【委員】
・p8「出題方法」には、TIMSS2019のことが書いてある。公開問題で理科の問題が入っており、模擬実験のような形の問題が出題されていたが、CBTを用いることによって、従来のPBTでは測定が非常に困難であったところについて問うことができるのではないか。この部分はCBT化するにあたっての売りの一つになるのではないか。CBTならではの新たな問題と同時に、そこから問える、従来のPBTによる学力調査では問えなかったというところを新しい軸として出されると、このCBT化が一層加速するのではないか。そして、社会的な認知度も上がってくるのではないかと思っている。
【委員】
・このような形で論点を整理すると、個別の論点それぞれについて議論が進んでいく。問題漏洩や同日実施など、色々論点とつながっている部分もあるので、悉皆調査の方に関しては、目的としては指導改善が大事であり、抽出調査の方については、経年的な変化や施策のために反映することが大事だということを目指し、相互に考えていかなければならないということを、どこかに入れておいたほうがよい。今のままだと、論点がばらばらになって捉えられるのではないか。
【委員】
・ここに書かれていることはいずれも、技術的な観点から見てみるとあるべき進化形であり、望ましい方向への変化であると思う。学校現場から見ると、調査の実施方法や結果の受け止め方、指導改善への生かし方が、同時にドラスチックに変わることになるため、非常に丁寧な説明を粘り強くしていかなければならない。
【委員】
・経年調査のことで、資料としてはp14、35行目にあたる。経年調査の方はもう既にIRT、それから分冊方式を取っているので、CBT化は相対的にしやすいというのは分かるが、次の令和6年度調査は、現在のPBT方式も併用して、モードエフェクトの検証をしていただきたい。
・災害等が起きてから3年前後経過すると、メンタルの部分で変化がある時期だそうである。次回経年調査が3年後だとすると、今の小学校3年生が小学校6年生になる時期なので、今の経年調査が持っている仕組みで捉えられるようにしておきたい。新しいシステムや仕組みを作成することを視野に入れつつ、現在の仕組みのよさも担保できるよう検討していただきたい。
【委員】
・p16「学校現場への支援」について、悉皆調査の場合、例えば学校ごとに日を分けるにしても、この日に調査をやり切らねばならないことや、機械の不安定さのようなものが相まって、現場の先生には、今ほどでないにせよ相当のプレッシャーがかかるであろう。できるだけ軽減するような制度設計にする必要がある。また、システム的に受け入れられるところはシステムの側で受け入れるということが、とても大事である。大学入試センターでもリスニングの試験をやっているが、機器の説明をきちっとした後、順を追ってICプレーヤーの操作をさせるということで相当の緊張感がある。そういった過大な緊張感が現場の先生方にないように、その辺りは工夫したほうがよい。一方で、機械はとても不安定であるため、やはりトラブが起きたらトラブルシューティングをしなければならないということも、理解として広めていく必要がある。
【委員】
・CBTを使った実施方式は、全国学力・学習状況調査の場合、その規模からして独特のシステムや体制になるのではないかと思う。その場合、主にシステムのことについてこの論点の中では書かれているが、当然その運用体制、運用スタッフをどういうふうに訓練するか、準備させるかという、人間の側に対する説明とその準備について、実質的にはマニュアルとそのレクチャー、場合によってはシミュレーション等必要になるかもしれないが、それらを業者に全部お任せするのではなく、ノウハウとして、文科省や国研の中で蓄積していくということが重要ではないか。
【委員】
・「準備期間と進め方」について、国際学力調査の開発例が載せてあるが、開発期間としてこの程度かかると思われる。経年変化分析調査の開発にも3年かかり、平成25年に初めて実施して、基盤ができたのは平成28年。開発開始から考えると6年間もの時間を要した。これまでの議論にもあるように、乗り越えないといけない課題が山積なので、この国際学力調査の例の10年というのは、本当にそのとおりだと思う。この辺りも含めて、何をどのような手順でやっていくのか、ロードマップのようなものを今の段階でつくったほうがよいのではないか。当然、途中で変更はあると思うが、このような大きな規模の試験というのは、最初のプランニングのところがすごく重要である。
【委員】
・実施体制について、今後かなりMEXCBTに依存した動きになってくると思う。MEXCBTがこれから日常的に利用されていくのであれば、あまり負荷やサーバなどについては気にしなくてよくなっていくだろう。しかし、逆にこれがあまりうまく利用されていなければ、調査の時だけアクセスが集中し、トラブルになることも考えられる。MEXCBTの開発や今後の運用について、随時報告していただきたい。日常的にどの程度利用され、どれぐらい稼働しているのかということが非常に大きい。
【教育DX室】
・参考資料1のp15にMEXCBTの概要を掲載しているが、令和2年度はプロトタイプを開発し、300校で実施した。今年度は、機能を強化しながら、希望する全ての学校で利用できる状態を年度内につくり上げていくという状況である。その中で、日常における使い方についても確認させていただきながら適宜御報告させていただきたいと思っている。まさに日々の使い方の中で、パブリッククラウドを使っているため、サーバへの負荷については、今年度の試行の中で、ボトルネック等を確認し、このシステムを使った上で、どこで引っかかり得るかというところを確認しながらやっていきたい。
【委員】
・「実施方式」について、「WAN方式」、つまり、インターネットを使う方式を基盤にするということだが、学校の中が十分に整備されていたとしても、外部に出る部分がボトルネックになっていることもある。その辺りは地方自治体が主体となり、ぜひ解決に向けて進めていただきたい。クラウドの活用について注釈部分に書かれているが、今どきのサーバということもあるので、クラウドを使うことをぜひお願いしたい。
【委員】
・「地方自治体との連携」における成果の活用について、早い段階から地方自治体の方々の御意見も伺いつつ進めていく必要がある。悉皆調査についても、結果公表が早くなれば、自治体の指導改善に向けた取組が今までと変わってくるであろう。一方で、その結果提供の在り方が変わってくることに伴い、これまでのやり方では、各学校に結果の活用がうまく行き渡らないということも考えられる。実際にCBT化されていく中で、自治体としてどのようにその結果活用を図っていくのかということについて、かなり早い段階から御意見を伺いながら、先行的に取り組んでいただけるところには取り組んでいただくというようなことが必要なのではないか。
【委員】
・工程に関する考え方についての案に賛成する。多方面から様々なことを開発していく必要があり、優先づけも必要だと思う。ぜひ「工程に関する考え方」の方向で進めていっていただきたい。まとめ案について、議論の中で様々な委員の皆様方や外部有識者の方々の御意見をいただきながらコンセプトがかなり明確になってきて、それをビジョンに落としていただいたまとめ案だと思う。CBT化に向けてクリアになっているビジョンを、工程表という形で明示していただきたい。
【委員】
・工程表について、特に工程の進捗状況については、現状も含めて見える化をお願いしたい。工程表の中での現在地について、このワーキングや専門家会議で御報告いただければと思う。(6)にも書かれているが、色々やっていく中で変更が生じることは織り込み、その中で柔軟に見直しをしていただくことを前提としたらよいのではないか。
・英語の「話すこと」調査に関して、児童生徒が解答を音声ファイルで送るということになった場合、ファイルの扱いやサイズ、録音環境の確認の仕方、周りの解答が聞こえてきてしまうという問題をどのように考えるかなど、CBT化する中でも非常に大きな課題を含んでいるため、当面試行・検証を続けることをお願いしたい。その中で、課題の抽出とそれをどうやって解決したらいいかという検証は、絶えず行っていくという前提に立っていただければと思う。
・(2)にある、可能なものからCBT化を順次進めることについては賛成。特に質問紙調査の解答のしやすさや画面の見やすさは、適宜改善を図っていただきながら進めていただきたい。
【委員】
・タイピングスキルと関わってくるが、小・中学校のうち、どちらから導入する、ということも考えたほうがいいのではないか。小学生だと、どうしてもICTの活用能力がなかなか身に付いていない部分もあると思うので、まずは中学校のほうから導入することも考えてもいいのではないか。また抽出である経年調査と悉皆では、明らかに悉皆のほうが難しいため、経年調査を先にCBT化することで我々の方のスキルを身に付け、それから悉皆をCBT化していくという、制度自体の持っている複雑さと、子供たちの持っている発達段階の両方の交互作用も考えて工程をつくられるとよいのではないか。
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