生徒指導提要が2010年に作成されて以降、「いじめ防止対策推進法」施行など生徒指導を巡る環境が大きく変わったことを踏まえ、文科省が内容の見直しに向けて設置した協力者会議の第1回が7月7日、開かれた。児童生徒の自殺者の増加傾向など課題は深刻化しているとして、成長を促す「積極的な生徒指導」の充実や、厳しい校則の見直しの必要性を指摘する声などが上がり、年度内の改訂に向けて議論を進めることになった。
文科省が新たに設置したのは、「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」(座長・八並光俊東京理科大教育支援機構教職教育センター教授)。7日の会議では、はじめに文科省側が提要の改訂にあたっての基本的な考え方を説明。▽目前の問題への対応という課題解決的な指導だけではなく、成長を促す指導など「積極的な生徒指導」の充実▽いじめや不登校、児童虐待など個別課題に対する法制度の整備といった、社会環境の変化に応じた対応▽児童生徒の発達支援や、多様な背景を持つ児童生徒への指導など、新学習指導要領やチーム学校等の考え方の反映――といった視点で議論してほしいとの考えを示した。また、生徒指導のバイブルとして必ずしも効果的に活用されていない面もあるとして、全教職員が活用しやすい構成や内容にしてほしいと要望した。
続いて、中学校と高校と生徒指導の課題などについてヒアリングが行われた。三田村裕委員(全日本中学校長会顧問)は「全国の校長会に聞いたところ、『積極的な生徒指導が重要』という意見が最も多かった。現在の提要は、「規律」や「規範意識」などの問題行動への対処や予防に重きが置かれている傾向があるが、学習指導要領に掲げる「子ども主体」や「自主性の尊重」など、成長を促す指導・支援に関する記述が必要だ。また、法やルールを守らせる指導は必要だが、理不尽な校則もあり、学校が見直す努力をする必要があると思う」と述べた。
池辺直孝委員(神奈川県立湘南高等学校長)は「学校と家庭の役割分担を明確にしながら、いかにパートナーシップを築いていくかが課題になっている。いじめ事案などで法的な対応が必要になったときに、教育委員会に弁護士が常駐して対応できるケースとそうでないケースもあり、現場でうまく機能できる法的支援の提言などもいただけたらと思う。また、校則についても社会的に考えると人権を無視するものもあり、不断の見直しが必要だ」と指摘した。
こうしたヒアリングも踏まえて、各委員が意見を述べた。石隈利紀委員(東京成徳大学応用心理学部教授)は「10年間の社会や法制度の変化をしっかり踏まえて、この間に各学校で行われた生徒指導の実践や研究成果が新しい提要に生かせるといいと思う」と提案した。
笹森洋樹委員(国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター長)は「校則の扱いを生徒指導の中でどう扱えばいいかと考えていた。生徒が自ら設計していくというような形で生徒指導をするという視点も、考えられるのではないか」と述べた。
また、栗原慎二委員(広島大学大学院人間社会科学研究科教授)は「これまでの日本の生徒指導は問題対処が中心だったため、生徒指導や教育相談のカリキュラムの視点が欠落していた。教員研修プログラムと子供のためのプログラムを、きちんとカリキュラム化して実行することが重要だと思う」と指摘した。
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