水泳授業相次ぐ中止、“専用マスク”でも炎上→取り外しへ 頭抱える教員ら「水への対処法どう伝えたら」(まいどなニュース) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

基本問題

 5月中旬に統計史上最も早く梅雨入りしたはずが、連日暑さが続く近畿地方。6月には気温が30度を超える「真夏日」の日もあり、大人でもプールが恋しくなります。そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は中止していた水泳の授業も、今年は多くの学校で感染対策を講じながら再開しているそうです。

【写真】コロナ対策として開発された「プール用マスク」。開発者の思いは

■水泳用マスクで授業→「行き過ぎたマスク信仰」と“炎上”

 しかし、6月中旬、茨城県日立市の学校で2年ぶりに行われた水泳授業が新聞やテレビで報道されると、インターネット上で物議を呼びました。なんと、子どもたちがマスクを着用して授業を受けていたのです。

 「マスクをつけてプールサイドから落ちたときどうするの?」「行き過ぎたマスク信仰」「恐ろしい事態やめさせて!」。ネットのコメント欄には非難が殺到しました。

 日立市教育委員会によると、子どもたちが着用していたのは水泳専用のマスクで、同市が市立小中学校の全児童生徒に購入したものです。プールサイドで教諭らからの説明を聞く際には口に装着していますが、泳ぐ際にはあごの下にずらすことができるタイプで、「水泳授業が始まってから、学校現場から『危険だ』という報告は上がってきていない」(同市教委の担当者)といいます。

 ところが、報道後に同市教委などには1日あたり50件ほどの苦情が寄せられ、水の中に入る際はマスクを外してタオルと保管するよう方針を変えたそうです。同市教委の担当者は「海に隣接している茨城県で2年続けて水泳の授業をしないということは、学びの保障にもつながらない。感染予防も取りながら何とか学びを続けたい」と話します。

■水難事故コロナ禍で増、陸上でもできる「エアスイム」など対策を 

 水泳の授業については、生徒や児童同士が2m以上間隔を取るよう、文部科学省が各都道府県の教育委員会などに通知していますが、屋外であってもプールサイドは運動場より狭いのが現実。更衣室では密になりやすく、予防対策にどの学校も頭を悩ませています。そのため、神戸や西宮市など感染が拡大している地域を中心に、2年連続で水泳の授業を取りやめた自治体も少なくありません。

 こうした状況に、教師や水泳指導者らの有志で作る「学校水泳研究会」で代表を務める鳴門教育大大学院(徳島県鳴門市)の松井敦典教授(61)=保健体育=は「成長過程でやるべきことをやらなければ、水中での安全な技能を身に付けずに大人になってしまう可能性がある」と危ぐしています。

 警察庁によると、減少傾向にあった全国の水難事故が、昨年はコロナで多くの海水浴場が閉鎖されたにもかかわらず、前年より微増したそうです。松井教授は「授業だけでなく夏休み中の学校プールの開放もなくなり、公営プールも軒並み閉まった。水の中での動作を学ぶ機会がなく、水への理解がない中で、川や水辺で事故に繋がったのではないだろうか」と推測します。

 学校水泳研究会のホームページでは、小学校教諭や大学の専門家らが考案したコロナ下での水泳指導法も掲載されています。

 たとえば、小学生向けであれば、水の中と陸上ではどのような違いがあるのか、子どもたちに考えさせ、水の特性や溺れた際の対応などを学ばせる授業事例を紹介。教員を目指す大学生向けの研究報告ではありますが、陸で泳ぐ動作をまねする「エアスイム」の方法など、水中練習ができない子どもたちにも参考になる指導法が載っています。

 気象庁によると、2021年の夏(7~9月)の平均気温は、西日本で「平年並み」または「高い」確率がともに40%。北・東日本、沖縄・奄美では「高い」確率が50%とされており、今年も猛暑となりそうです。

 ウィズコロナの生活が当分続きそうな中、今年の夏休みも遠方への旅行を控え、川や水辺など身近な自然の中で涼を求める人が増えることでしょう。コロナ前よりも、水の危険性やいざという時の対処法を理解しておく必要があるかもしれません。

(まいどなニュース特約・斉藤絵美)

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