老朽化した学校のプールを改修・新設せず、公営や民間の屋内プールでの水泳指導に切り替える自治体が出てきている。東京都葛飾区教育委員会は、2021年度以降に改築する小学校にはプールを造らず、校外の室内温水プールを活用する。区教委は「猛暑の影響などで、屋外プールでの水泳指導が思うようにできなくなってきている」と理由を説明する。(加藤健太)
今秋からの学校改築に合わせ、校内の25メートルプールの取り壊しが決まった区立水元小学校など、現時点でプールを造り直さない方針が決まったのは3校。プールがない学校は、区営のスポーツセンターや民間施設に徒歩かバスで移動して授業をする。施設のインストラクターも教員と指導にあたる。水元小の児童は来年度から、学校から約1キロ離れた区営スポーツセンターの温水プールを使う。
屋外の学校プールは、熱中症に気をつけるほか、水着姿を外から見られないよう配慮する必要もあり、学校の負担が大きい。区教委の学校施設担当、森孝行さんは「学校のプールがどうあるべきかを自治体が考える時に来ている」と話す。
区教委はコスト面の長所も挙げる。学校プールを造り直すよりも、利用料を支払って屋内プールを使う方が、1校につき年間約260万円を抑えられると試算する。
区立小に通う4年生の子がいる母親(46)は「炎天下で具合が悪くなった子もいたと聞く。屋内プール利用は時代に合っているのでは。インストラクターに習うことができるのも良いかも」と理解を示す。「移動に時間が取られ、プールに入る時間が短くなってしまわないか」と心配も口にした。
◆神奈川、埼玉、千葉では?
学校プールの廃止は各地で進み、授業自体をなくす自治体も出てきている。
神奈川県海老名市は、2011年度までに19小中学校のプールを全廃した。市営の屋内プール4カ所に徒歩やバスで移動し授業を行う。移動しても時間が確保できるよう授業は2~3時間の連続にしている。
同市教委の担当者は「屋外プールでは6~7月の間に授業をしなくてはならなかったが、5~10月までに広げられ、計画通りに進めやすくなった」と利点を挙げる。
埼玉県加須市は少子化を理由に21年度から小学校のプールの統廃合を進める。廃止する小学校の児童は、存続する近くの学校か民間のスイミングスクールで授業を受ける。中学校では22年度から水泳の授業を取りやめる。隣接の同県羽生市も20年度に全中学校のプールを廃止した。
千葉市は19年度から、試験的に民間のスイミングスクールの利用とスクールの指導者による授業を始め、本年度は9校で実施予定だ。市教委は「多くの児童が意欲的で、プロの指導で上達を実感している」と手応えを感じている。
課題は成績評価と移動だ。同市教委保健体育課の担当者は「学校とスクールでは評価の基準が違う。判断基準の作成を綿密にする必要がある」と話す。スポーツ庁の担当者は民間施設の活用に「安全面に考慮し、指導要領に示された内容を適切に実施していれば問題ない」とする。(今川綾音、寺本康弘)
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