花巻市天下田の花巻北中学校(佐藤敦士校長、生徒305人)は24日、復興教育の一環として、東日本大震災に関する講演会を同校で開いた。今春、新採用で同校に着任した保健体育教諭で、震災による津波で自宅を失った中村俊介さん(28)=宮古市鍬ケ崎出身、遠野市=が自身の体験や、災害への備えの大切さを全校生徒に伝えた。
中村さんは震災発生時、県立不来方高校3年生で、岩手大教育学部への進学が決まっていた。実家のある宮古市鍬ケ崎に帰省していた時に地震に遭ったという。今年、念願かなって教員となり、長男も誕生した。
初めに中村さんは「大切な人の命を失った人がたくさんいた中で『家を流されただけ』の私は、これまで声を大にして『つらかった』とは言えず、体験を話せずにいた。だが教員となり、子供も生まれ、経験をつないでいきたいと思った」と切り出した。
講演では、宮古市で津波が堤防を越える様子が撮影された報道写真を示しながら「津波が来る30分前、この道をランニングしていた」と、偶然命が助かったことを振り返った。
2日後に自宅を見に行くと、あるはずの場所にはなく「悲劇だった。現実を受け入れられず、未来を考えられなかった。本当に大学に進学していいのか、家族のために働くべきではないか、とネガティブなことばかりを考えていた」と、当時の思いを明かした。
避難の経緯や避難所でのボランティア活動などについても言及。避難所となった宮古第二中学校では約1カ月、泊まり込みで物資の配分や仕分けなどを行ったといい、「全国からの支援や、人の温かさに気付かされた時間だった」と語った。
つらかった経験を伝えようと思えたきっかけの一つに、復興支援ソング「花は咲く」を耳にしたことも紹介し「命を守るため、防災知識を身に付け、正しい判断ができるように備えてほしい。自分が話して震災、防災、未来、ふるさとを考える機会になるよう願う」と締めくくった。
3年の渡邉優月さん(14)は「災害はいつ起こるか分からない。『自分は大丈夫』と過信しないようにしようと思った」、2年の鈴木智久さん(13)は「先生が被災者だとは知らなかった。震災でつらさ、怖さ、人の優しさなどを感じていたのだと知ることができた」と話していた。
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