2025年度に大学に入学する学生から、大学入学共通テストの出題対象に教科「情報」が加わる。これに合わせて、大学の2次試験でも教科「情報」の出題が増える見込みだ。2021年6月12日、大阪市で開催された教育イベント「New Education Expo 2021 大阪」において、「いよいよスタート! 教科「情報」の大学入試に備える」と題したセミナーが開催された。
セミナーには、放送大学 教授の辰己丈夫氏と東京都立立川高等学校 指導教諭の佐藤義弘氏が登壇。日経BPコンシューマーメディアユニットの中野淳ユニット長補佐がコーディネーターを務めた。
まず、放送大学の辰己氏が大学入試でこれまで教科「情報」がどのように扱われてきたか、また、なぜ大学入学共通テストで「情報」を取り扱う必要があるかについて解説した。
現状では大学入試の2次試験科目に「情報」を取り入れているのは、国立大学では高知大学のみ。私立大学では慶應義塾大学、駒澤大学、東京情報大学など11大学の一部の学部の選択科目にとどまる(2021年度に入学した学生の入試)。
高等学校の学習指導要領の改定が施行されて2003年度に教科「情報」が設置されて必履修科目になった。以降、2006年度に大学に入学する学生を対象に最初の情報科の入試が行われており、辰己氏は大学入試ではこれまでも「情報」が選択科目として扱われてきたことを説明した。
文部科学省が高大接続システム改革会議を2015年に設置して以降、情報入試に関しての議論を深めていった。大学入試センターは2021年3月、2025年度に入学する学生が受験する大学入学共通テストから「国語」「地理歴史」「公民」「数学」「理科」「外国語」の6教科に、新たに教科「情報」を追加し、現行の6教科30科目を7教科21科目に再編することを明らかにしている。同センターのWebサイトでは「歴史総合」「地理総合」「公共」に加えて「情報」の4科目のサンプル問題が公開され、問題の狙いなどを解説している。
また、当初実施が検討されていたCBT(Computer-based Testing:パソコンなどで実施する試験)は見送り、従来と同じくPBT(Paper-based Testing:紙の解答用紙で実施する試験)を行い、CBT導入については引き続き調査研究を進める。
辰己氏は「これまで情報リテラシーが高い教員や生徒が、デジタル化の価値を享受してきたが、『情報』が入試の共通テストに組み込まれることで全ての人がデジタル化の価値を享受できるように変わる」と意義を説明した。
都立立川高等学校の佐藤氏は、高等学校の中で教科「情報」がどのように位置付けられているかを紹介した。2003年度に「情報」が必履修科目になってから18年が経過したが、学校現場では今でも「情報」を教えられる教員は少なく、2022年度から「情報I」が必履修科目になるにもかかわらず、指導体制が不十分な状況にあるという。また、学校ごとに「情報」の指導体制にはばらつきがあり、数少ない教員が教えていることで弊害が生じていると話した。
小中学校でのプログラミングの必修化に伴い、高等学校でもプログラミング教育が注目されているが、「情報I」でプログラミングを教えるのは教科全体の12分の1にすぎず、学習指導要領で規定した2単位(法定70時間)では6時間程度しか割けないという。また、プログラミングの教材には無償で提供されているものも多いが、一方で参考書や問題集など大学入試に向けて必要とされる教材はほとんどなく、どのように受験指導をしていくか、また思考力を問う問題にどう対応していくかなどに頭を悩ませていると話した。
2人からの説明を受けて、日経BPの中野ユニット長補佐は2022年度からの「情報I」の必履修化や大学入試共通テストに「情報」が組み込まれることへの備えが必要と話した。また、同社が制作し東京書籍が発行する「情報I」の解説問題集「ニューステップアップ 情報I」を紹介した。同書は、「情報I」の授業や入試対策での活用を想定している。併せて、オンライン教材の「日経パソコンEdu」にも教科「情報」の入試対策コンテンツを提供していくことを紹介した。
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