新型コロナウイルスの影響で2020年春、県立学校などで一斉に休校措置が取られ、同6月に学校が再開されてから1年がたった。その後も感染拡大の波が押し寄せているが、各校は感染対策を取りつつ、子どもの学びの機会を守っている。和歌山県内小学校で922人(14日現在)と最も児童数が多い和歌山市栄谷の市立藤戸台小の感染防止の取り組みを取材した。【橋本陵汰】
休憩時間、折り紙やけん玉などを楽しんでいる子どもたちの姿が見られた。2時間目と3時間目の間の大休憩(20分)と昼休憩(25分)、運動場を使える学年を曜日ごと分け、密になることを防ぐ代わりに、教室でできる「一人遊び」が推奨されているからだ。「外出できない時期、退屈せず家で過ごせることにもつながったのが、新しい発見だった」。松嶋大祥教頭は取り組みを振り返る。
同校では20年度から市教委とも相談を重ねつつ、接触を減らし、密にならないようにする工夫を考えてきた。水道の蛇口に手をかざすと自動で水が出るタイプに変更したほか、教室や廊下、トイレの床にテープやシールで印を付けているのもその一つだ。先生に提出物を渡すため列になるとき、トイレの順番待ちをするときなど、一定間隔を空けるためだ。
黙食は「食材を味わう勉強に」
給食時には教師と児童数人の当番が一人一人の分を準備し、廊下で待つ児童が順番に受け取って席に着く「ドライブスルー方式」を採用。食事中は声を発さず、「黙食」を徹底する。松嶋教頭は「食材を味わいながら食べることも勉強の一つ」と話す。
一方で対策に伴い、配膳や手洗いの時間を確保するために、授業時間を45分から40分に短縮し、休憩時間を増やした。保健室を体調が悪い人と、けがをした人とで出入り口を分け、利用者が交わらないようにし、職員室は飛沫(ひまつ)を防ぐため、ビニールカーテンも取り付けた。ホームセンターで材料をそろえ、堀本純平校長と松嶋教頭の2人で製作したものという。堀本校長は「3密対策しながら、児童はもちろん教職員の安全も図る必要がある」と語る。
長引くコロナ禍で、徹底した対策とともに学校の負担軽減が求められる状況が続く。子どもたちの清掃活動は自らの教室のみとしたため、トイレや理科室などは教職員が担当するなど負担が大きくなっていたが、同小育友会から自動掃除機17台が寄贈された。堀本校長は「大変ありがたい。あらゆる場面で活用したい」と話し、「対策について保護者の理解を得て、協力してもらうことが重要だ」と強調する。
市教委によると20年度、市内小中学校から「新型コロナ対策で負担が大きい」といった声が寄せられていたという。市は20年度、消毒液など備品購入をはじめ学校のコロナ対策に計約9億5000万円の予算を計上し、一部は21年度に繰り越した。市教委は「多くの人が触れるところを中心に消毒するだけで、感染リスクを抑えられる」などと助言をしてきたという。21年度、学校からの要望は減ってきているが、「エアコン使用時の換気など、時機を見て注意点を伝えていきたい」としている。
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