学習指導要領の改訂で英語の学びが大きく変わっています。小学校では2020年度から5、6年生で外国語科(英語)が教科になり、国語や算数と同様に評価の対象になりました。英語の教科化は、中学入試にどう影響するのでしょう。
英語入試の実施中学は7年で約10倍に
首都圏模試センターによると、2021年春の一般入試(帰国生入試を除く)で英語を導入した首都圏の中学校は143校(私立142校、国立1校)あり、14年の15校から10倍近くに増えた(下のグラフ)。北一成教育研究所長は「首都圏には私立中学は約300校あり、私立中では、およそ半数が英語入試を導入した計算になります。来年はさらに増えるでしょう」と予想する。
試験の方法はインタビュー形式やグループワーク、英語プログラミング入試、英語1科入試など様々で、定員の一部を英語入試に充てる場合がほとんどだという。「教科化を機に英語に触れておけば、受験の選択の幅が広がります」(北さん)
理社なしの「英語重視型」入試が人気
西大和学園中学(奈良県河合町)は15年から、帰国生入試とは別枠で「英語重視型入試」を始めた。渉外室主任の谷口弘芳教諭は「小学校時代から英語を頑張ってきた子やインターナショナルスクールに通う子、海外在住経験のある子など、英語力に秀でた多様な生徒を受け入れたいと思った」と狙いを語る。「英語重視型」は理科、社会の試験がなく、算数の問題も少し易しいという。年々人気が高まっており、今年は同方式で61人が受験した。
谷口教諭は「英語重視型で入った生徒は、最初のころは理科、社会に苦労することもあります。けれど、どの方式で入った生徒も苦手分野を意識して努力するのは同じです。卒業の時点で学力に差が出たり不利になったりすることはありません」と話す。
江戸川学園取手中は英語の受験を必須に
英語を必須の入試科目とした中学もある。江戸川学園取手中学(茨城県取手市)は22年度入試(22年度入学者向け)から、英語を全員に課すことにした。入試担当の遠藤実由喜教諭は「20年度から小学校で英語が教科となったので、その年の5年生が受験生となる22年度の入試で英語を必須にしました。グローバル化を踏まえ、英語に興味・関心を持って学んでほしい、小学校での授業を大切にしてください、という本校のメッセージでもあります」と狙いを語る。
来年の入試は初めての実施なので受験生の負担を考慮し、出題はリスニング問題(20分、50点満点)のみとし、教科書の内容を理解していれば8割程度は得点できる難易度にする方針だという。
中学入試に詳しい安田教育研究所の安田理代表は「英語入試を何らかの形で実施する私立中学は増えていますが、必須の受験科目にする学校はまだ少ない。児童が小学校でどのような英語力を身につけるのかが見えず問題が作りにくいので、しばらくは様子を見るという学校が多いようです」と話す。
大手進学塾サピックスの広野雅明教育事業本部長も「受験生全員に英語を課す入試が急速に広がる可能性は低いでしょう」と言う。「受験生の負担が増えるので、多くの学校は慎重に見ています。小学校時代の英語力は家庭環境で大きな差がついてしまう、という点を考慮している学校もあるようです」
サピックスでは英会話教室を運営するイーオンと提携して昨年9月、中学受験を想定した英語講座を始めたが、いまのところは通常のカリキュラムに組み込まず、希望者が選択するオプションと位置づけているという。
広野さんは「英語を全員に課すような大きな変更は導入の数年前に発表され、サンプル問題も公表される場合がほとんどなので、慌てることはありません。中学受験を目指す場合は当面、4教科の力をきちんとつけることが基本になります」とアドバイスしている。
斉藤純江 EduA編集部
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