急速に進む社会のデジタル化に対応するため、情報教育の重要性が増している。専門性のある教員の確保が不可欠だ。
2022年度から実施される高校の新学習指導要領で、コンピューターのプログラミングやデータ活用を学ぶ新科目「情報I」が必修となる。
「情報」は03年に必修教科となり、情報モラルを学ぶ「社会と情報」か、プログラミングを学ぶ「情報の科学」を選んでいる。多くの高校は「社会と情報」を選択しており、生徒の8割はプログラミングを学んでいない。
「情報I」では原則1年生が週2回、プログラミングを活用して、三角形の面積を計算するといった課題に取り組むことになる。
デジタル技術は今では、あらゆる産業に関わりがある。プログラミングは、小中学校ですでに必修となっており、より専門的な知識や技能を、高校の段階で身に付けることは重要である。
一方、近年はSNSによるいじめや中傷が社会問題化している。スマートフォンの利用が多い高校生には、情報モラルの学習も大切だ。プログラミングを重視するあまり、こうした教育がおろそかにならないようにしてほしい。
問題は「情報」分野を専門的に教える教員が少ないことだ。
文部科学省の調査では、「情報」を教えている公立高校の教員5100人のうち、1200人は「情報」の免許を持っていない。
数学や理科などの教員が掛け持ちで教えているのが実情である。準備に十分な時間を割けないケースもあるという。
「情報」は、国語や数学、英語といった主要教科ではないため、各教育委員会は、免許を保有している教員を積極的に採用してこなかったとされる。
これまで指導にあたってきた教員の中にも、今後、不慣れなプログラミングまで教えることに不安を感じている人が少なくない。
各教委は、専門性の高い教員の採用に力を入れるとともに、研修などを通じて、指導力の向上にも努めてもらいたい。
大学入試センターは、25年の大学入学共通テストから「情報」を加える方針を公表した。国公私立大に活用を促すという。
「情報」の免許を持つ教員の確保状況には地域格差があり、配置が不十分な自治体も見られる。教員の指導力にも差がある。こうした状況で、大学入試に課すのであれば、生徒が不利益を被らないような配慮が必要である。
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