聖火、亡き次男と運ぶ…「家族が前へ進んでいることが伝われば」 – 読売新聞

基本問題

 東京オリンピックの聖火リレーは18日、広島県福山市の市総合体育館で2日目が行われ、同県内での日程を終えた。

 福山市立駅家中教諭の中林日登美さん(58)(府中市)は、5年前にがんで亡くなった次男・士さん(当時27歳)の写真をしのばせて臨んだ。スタート直前、腕を突き上げて空を見上げた。「これから行くよ。一緒に走ろうね」と士さんに語りかけた。

無事に聖火をつなぎ、士さんの写真を掲げる中林さん(福山市で)

 士さんは県立府中高で野球部の主将を務め、九州共立大に進学。2012年に北九州市内の中学校の保健体育教諭となり、野球部監督として生徒を指導していた。

 1年後に右太ももに骨肉腫が判明。友人らの支援でリハビリに取り組み、大学の後輩にあたる広島カープ・大瀬良大地投手も見舞いに訪れて励ました。しかし、がんが肺に転移して容体が悪化。16年2月、「ありがとう」とつぶやいて眠るように亡くなった。

 中林さんは「大勢の仲間の支えで闘病生活を送れた。感謝の気持ちを伝えたい」と聖火ランナーに応募した。今年2月、サッカーの授業中に右足のかかと付近を2か所骨折したが、リハビリを続けて間に合わせた。

 この日は、士さんの腕時計とネックレスも身に着けた。夫の一人さん(72)、長男の大さん(34)が見守る中、バラで彩られたコースを走り、「やったよ」と再び士さんに思いを伝えた。「家族が前を向いて進んでいることが仲間に伝わったらうれしい」と晴れやかな笑顔を見せた。

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