【特集】117の「土曜講座」に中高生の熱い注目…八千代松陰 – 読売新聞

花のつくりとはたらき

 八千代松陰中学校・高等学校(千葉県八千代市)が、生徒の新たなスキルや思考力を伸ばそうと始めた「土曜講座」が開講2年目を迎えた。昨年度はオンラインと対面を交えて開いた117の講座に多くの中高生が参加し、現在は、午前中に「土曜講座」、午後は部活動に打ち込むという習慣も定着しつつあるという。5月8日、同校を訪ね、スポーツメンタル、理科実験、オーストラリア就業体験などの講座に参加する生徒たちの声を聞いた。

「本物との出会い」が知的好奇心を呼び覚ます

土曜講座の成果を語る金岡先生(左)と飯塚先生

 同校の「土曜講座」は、昨年4月の休校期間に、オンラインによる4講座でスタートした。「探究」「グローバル」「表現」をテーマとした教養講座を主体とし、放課後に補習を行っている英語、数学、国語などの学習科目については、より高度な内容を学ぶ講座を設けている。

 「土曜講座」を担当する高1学年部長の飯塚真吾先生によると、2学期から対面での講座を本格的に開始すると、みるみる活気が生まれ、昨年度は計117講座を開き、中高合わせて延べ2880人が参加した。2回以上参加するリピーターも多く見られたそうだ。「ウェブサイトやホームルームなどで告知を行ったところ、中3生では40%の生徒が参加しました。受験を控えた高3生の参加者も多く、私たちも少々驚かされました」

 取材に訪れた5月8日は、「JTBオーストラリア就業体験」「スポーツメンタル」「実験教室KAIHA―2」「中国語」「ロシア語」「ドバイ・イスラム文化」など12講座と、英、数、国の学年別学習講座が行われていた。

 講座は1回限りのものもあれば、4回、5回と続く連続講座になることもある。受講形式は「オンラインのみ」「対面のみ」「オンラインと対面併用」に分かれている。オンラインの場合、生徒たちは自宅で受講できるし、学校に来て自分のノートパソコンで受講することもできる。飯塚先生ら担当教師は学校で待機し、パソコンのモニター画面で出席を取ったり、接続をサポートしたりしながら、講座の進行を確認するという。

当日参加できなかった生徒のために講座によっては録画も行う

 「土曜日は午後から部活動がある生徒が多く、午前中は『土曜講座』に参加し、午後から部活動に参加するという習慣が定着しつつあります」と飯塚先生は話す。オンラインと対面の併用講座は録画も行っていて、運動部の大会などのため休まざるを得ない生徒は、録画で学ぶこともできるそうだ。

 教養講座の講師は主に外部の専門家に協力してもらう。基本的に外部講師による講座は有料だが、有料講座でも無料のものより人気の高いものもあるそうだ。

 「JTBオーストラリア就業体験」は5回講座で、中高合わせて12人の生徒が参加している。旅行会社JTBのオーストラリア・シドニー支店とネットで結び、現地の観光名所などを画面上で見学すると同時に、「日本人観光客向けのツアープランを作成する」といったキャリア教育につながる活動を行っていた。

 「スポーツメンタル」はオンラインと対面の併用型だ。多くのプロスポーツ選手のメンタルコーチを務めてきた阿部健二氏が、メンタルの鍛え方やチーム内でのコミュニケーションの取り方を教える。受講した30人の生徒たちは、対面またはオンラインで、プロ選手に行われるのと同等の説明を聞きながら、熱心にメモを取っていた。

 「実験教室KAIHA―2」は対面のみで開かれる講座で、同校の物理教師が担当していた。内容は、プログラミングと実験工作を組み合わせた高度なものだが、受講申し込み開始と同時に10人の定員が埋まったそうだ。

 飯塚先生とともに「土曜講座」を担当する国語科主任の金岡辰徳先生は「『土曜講座』では、『本物との出会い』を大切にしています」と話す。「海外をテーマにした講座では、マレーシアやドバイにいる講師とつながることもあります。『土曜講座』では、普段の校内ではできない経験もできる。それが生徒たちの知的好奇心を引き付けているものと考えています」

他学年生や保護者の学習姿勢に刺激を受ける

プロ選手の指導にもあたっている講師による「スポーツメンタル」講座

 「土曜講座」に参加している高1生たちの話を聞いた。硬式テニス部に所属する森本陽大(ゆうた)君は、「実験教室KAIHA―2」を受講している。「授業で環境問題について学んだ時に、自然科学や物理などさまざまな分野が皆つながっていることに気付き、プログラミングと物理の実験がつながっているこの講座に興味を持ちました」。森本君は、午後は部活動の練習に参加しており、「これから受験で忙しくなるので、部活動も今のうちにできることをやっておきたい」と話した。

 昨年度は「サイエンスアカデミー」、今年度は「中国語入門」を受講している宮崎莉杏さんは、「『土曜講座』のおかげで視野が広がりました」と言う。「先生の話や一緒に参加している人たちの意見を聞くうちに、一つのことにもさまざまな見方や考え方があることが分かり、テレビのニュースなどを見ていても、『これとは違う見方があるのでは』と考えるようになりました」

 花岡祐貴(ゆうき)君は、留学生とディスカッションしたり、起業家の講師から情報化社会についての話を聞いたりと、これまでさまざまな講座に参加してきた。「『疑問に思うことがあったら、放って置かずすぐに調べること』という講師の方のお話を聞き、今まで自分が疑問点をそのままにしてしまっていたことに気付きました」。将来は社会貢献につながる仕事をしたいとし、「社会の最前線で活躍している人たちの話を、もっと聞きたい」と考えているそうだ。

プログラミングと実験工作を行う「実験教室KAIHA―2」

 「土曜講座」の特徴の一つは、中1から高3まで学年の枠を超えて受講していることだ。昨年、「映画・書籍からこれからの社会を学ぶプログラム」という講座を担当したキャリア教育コーディネーターの小林誠司講師は、「生徒を小グループに分ける時はできるだけ異なる学年の生徒が入るように工夫しています。そうすることで、高校生が意識してファシリテーションをしたり、中学生の意見に高校生が刺激を受けたりするような場面が生まれています」と話す。

 また、「土曜講座」には保護者が参加できるものもあり、あえて生徒と保護者を別にしないことで、保護者の学ぶ姿に生徒が刺激を受けるという効果も期待されている。これまでに「陶芸教室」や「スマートフォンのセキュリティ講座」などが開催され、6月には「働く女性の心身のケア」という講座も予定されている。

 「週末の部活動の様子を教師間で共有するネットワークがあります。これに『土曜講座』の成果を盛り込み、学校全体で『土曜講座』を活性化させていきたい」と、金岡先生は話す。今年度は、学年別学習講座以外で、年間約150講座を開講し、延べ3000人の参加を予定している。将来的には保護者以外にも地域の人たちが参加できる講座を設け、学校が「地域の教育ハブ」となることを目指しているそうだ。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート)

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