新型コロナウイルス禍による学力への影響が懸念されている。昨年3月に全国で一斉休校となり、再開後は各学校が夏休みを短縮するなどして授業時間を確保したが、完全に挽回できたという学校ばかりではない。27日には2年ぶりに、文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が実施された。コロナ下の家庭学習の状況によって、学力に格差が生まれているとの指摘もある。
「授業を進めては戻って復習をしてきたが、駆け足になった」。ある大阪市立小学校の校長は、昨年度の状況についてこう振り返る。この日、テストを終えた児童からは「難しかった」という感想もあったといい、「今回のテストだけでコロナの影響は分からない。長い目で見ていく必要がある」とため息をついた。
全国学力テストを受けた大阪府吹田市の小学6年の男児(11)は「家で勉強していたので不安はなかった」と話した。ただ、休校に伴う環境の変化で勉強をしなくなった友人もいるといい、父親(43)は「家庭で勉強の習慣をつけさせるのが親の責任だと実感した」と話した。
中学校はどうか。大阪市立中学校の校長は「今年の3年生は例年より2年の学習内容の確認が必要だ」と話す。3カ月に及んだ昨年の臨時休校の影響について、「家庭や塾で多くの生徒が学びを補完できる学校もあるが、本校は違う。学力テストにも影響が表れるかもしれない」という。
最も心配なのが、高校入試への影響だ。昨年の臨時休校期間は大阪府内全域で一律だったため、今年行われた府内の高校入試では多くの学校で出題範囲が縮小され、「直接的な影響はなかった」という。だが今年は3度目の緊急事態宣言の発令に合わせ、大阪市のみ4月26日から約1カ月間、自宅でのオンライン学習を基本とする措置がとられた。校長は「これから市外の学校に追いつかなければならない。現場には使命感とともに不安感もある」と打ち明ける。
ただ、学力低下の不安を抱える学校ばかりではない。ある京都市立小学校では昨年の休校期間中、オンラインで学習をサポートし、再開後は遅れを取り戻せたという。教頭は「コロナによる危機意識があったからか、子供たちは例年より意欲的に取り組んでいた」。大阪府枚方市の市立中学校では昨秋以降、生徒一人一人に配布された学習用端末を積極的に活用。オンライン学習で生徒が意見を発表する機会が増えたといい、校長は「考えをまとめて伝える力がついた」として学力テストの結果に期待する。
教員経験がある近畿大教職教育部の丸岡俊之教授(教育行政学)は、長期休校があった昨年は授業を急いで進めざるを得ず、「子供によって内容の理解度や到達度に差が生じている」と指摘。コロナ下での学力向上には家庭学習が欠かせないといい、「家庭での勉強のルールを作るなど、前向きに取り組めるような親の声かけも必要だ」としている。
(木ノ下めぐみ、藤井沙織、地主明世)
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