文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」は、同省資料(PDF)によると新型コロナウイルス感染症の影響で前倒しされ、全国の96.5%の自治体で令和2年度内に納品が完了。こども達に一人一台ICT端末の実現が目の前に迫った現在、教育現場では手に届いたIT端末をどのように有効活用していくのか様々な試みが模索されている。
ブロック型ロボット教材やIT実験機器などを販売する国内の学校教材、教育玩具メーカー、アーテックは5月12日から14日まで東京ビッグサイトで開催された教育関連業者のための展示会「教育 総合展(EDIX)東京」内「第12回 教育ITソリューション EXPO」にて、様々なITC教育機材を一堂に展示、総合教育メーカーとしてIT端末を使った学習プログラムの提案を行っていた。同社の提案するIT教育とはどのようなものなのかレポートする。
大阪で創業してから約60年、美術や図工などの学校教材からスタートし、教育関連教材を扱いながらIT分野に進出、理科実験や化学工作教材、知育玩具メーカーとして知られるアーテックは、GIGAスクール構想に合わせて、小学校、中学校、高校、大学、専門学校それぞれの教育環境に対応したサービスの提案を行っている。
今回の展示会場でまず目を引いたのが携帯型ゲーム機を思わせるコンパクトボディを持つICT教育支援コンピューター「エデュコン」だ。同製品はタッチペン対応の抵抗式タッチパネルにアナログ式のゲーム風のスティックと入力ボタンを配置、Raspberry Pi Compute Module 3+ Liteを活用したICT学習端末だ。小学生が持ち帰りやすいコンパクトボディは、自宅学習にも活用できるよう配慮されており、OSや学習ソフトウェアを搭載したマイクロSDカードを差し込んで、様々な教育プログラムを学習できる仕様だ。
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RaspberryPi Compute Module 3+ Liteを活用する「エデュコン」は、3つのUSB、microUSB、GPIOポートが備わる。通信はUSB接続の外付けWi-Fiドングルを使う
「エデュコン」は、アクセサリーも充実しており、電気スタンド型の投影カメラを使って撮影した映像を共有する「実物投影機」、同社が提供するロボット学習素材「アーテックロボ」、デジタルマイクロスコープ、Webカメラ他、それぞれ組み合わせて独自の教育プログラムを演出できる。学習以外にも標準装備のGPIOポートを活用し、ICTカードリーダーを活用した入退室管理システムやセンサーと組み合わせたIoTシステム運用なども可能になる。
今回の展示会では、同社の看板商材ともいえる「アーテックロボ」も展示されていた。同製品は初号機「アーテックロボ1.0」とBluetooth、Wi-Fiなどのネットワーク機能が追加された最新機「アーテックロボ 2.0」の二つのラインナップを柱にそれぞれの学習プログラムにあったセット商品を展示していた。
今回の展示品の中で特に力が入っていた商品は、専用のカバーも用意された理科教育に特化した「理科専用キット」。基本セットでは、「点滅ライト」、「扇風機」、「電気自動車」、「街灯」などの4つの実験に対応し、授業をサポートする教師用授業ガイドもセットで提供される。応用編であるDXセットでは、基本セットに加えて「衝突回避自動車」や「感温扇風機」など、8つの実験に対応している。
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ハイエンド版である「アーテックロボ2.0」で活用する「Studuino:bit」は、前バージョンよりコンパクトな上、光センサー、温度センサー他複数のセンサーに5×5フルカラーLED、加えてWi-FiやBluetoothなどネットワーク機能も搭載
高機能を求める一方で、同社は予算の足りない自治体などにも対応、小学校の理科教育”電気の利用”にのみ特化した廉価版も用意。人感センサー、温度センサー、明るさセンサー、ボタン付きタッチセンサーを搭載し、”人感ライト”や”衝突回避カー”の理科実験を行うことができる。電気実験のみに対応したバージョンなので比較的安価にサービスを提供できるとしており、本年度中のリリースを目標にしている。
今回の展示会のもう一つの注目教材は、本年7月に販売が予定されている新商品「アーテックロガー」。同製品は自然観察の授業に活用される百葉箱のデジタル化をコンセプトに開発されたもので、センサーにより、温度、湿度、気圧などの気象情報を取得、Bluetoothでリアルタイムにパソコンやタブレット端末に観測データを送信することができる自然観測ツールだ。
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「アーテックロガー」は、3つのセンサーで同時測定が可能。測定したデータはアプリケーションでグラフにリアルタイムで出力、CSV形式で保存も可能、保存された気象データを元に本格的な気象分析を行うこともできる
展示会場では今回紹介したもの以外にも高校、大学、専門学校で利用できるプログラミング教材やゲームキャラクターを使ったプログラミング教材など、複数の教育商材が展示されていた。今後の展開については、担当者によれば、昨年のプログラミング学習必修化のタイミングに間に合わなかった学校への新規の提案に力を入れていくと同時に、タブレット端末用のアクセサリーや関連グッズなどの付属品開発に力を入れてラインナップを更に広げたいとしている。
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