「ウミガメを救うビニール袋、どう作ればよいか」実際の中学入試に出たSDGs問題。あなたならどう解く? – ハフポスト日本版

花のつくりとはたらき

「中学入試」と聞いて、あなたはどんな問題を思い浮かべますか?

複雑な計算問題や、語呂合わせで暗記した知識を問われる「歴史」、登場人物の心情を選択肢から選ぶ長文読解…?

もしそうならば、今の小学生が解く入試問題に少し驚くかもしれません。

気候危機や少子高齢化など、唯一の解がない課題が山積みの現代社会。知識や経験をもとに自分なりの意見や考えを問う学校が増えてきているのです。SDGs(持続可能な開発目標)に絡んだ出題も目立ちます。

そこで今回は、数々の中学入試問題のなかから、大人も唸る「良問」を紹介します。

未来を担う子どもたちへの希望と問いが詰まった入試問題。あなたはどう答えますか?

■ 「古い電気機器を新しいものに買い換える」→SDGsのどの目標に該当する?

【実際の解答例】

目標4「質の高い教育をみんなに」

最新の機械を使うことによって、教育を受けられない子にも教育を受けさせることができる

目標10「人や国の不平等をなくそう」

私たちが電化製品を買い替えると中古製品が出るので、それを途上国に送れば格差の解消やリサイクルにもなる

【採点の基準】

整合性が取れていれば、どの目標を選んでも良い。

【出題の意図】

多角的な視点で物事を捉え、考えを正確に表現する能力をはかる狙い。「ごみが増えてしまう」というデメリットだけに注目するのではなく、考え方によってはメリットにもなるという点を伝えたかった。

■ あなたが変えたいと思う「現代の常識」は?

【出題の意図】

本文を踏まえて常識とは何かを考え、理解した上で、どのような問題意識を持っているかを問いたい。

「常識にとらわれていては何も生まれない」というのは本校の1つのスタンスでもある。フェリス女学院は1870年に創立したが、当時の日本で女子教育を行うことは非常識なことだった。その常識を打ち破ったことからフェリスはできている。日能研による出題校担当者へのインタビューより

■ ウミガメがビニール袋を誤飲してしまう問題。「ビニール袋をなくさずに」問題を解決するには?

【実際の解答例】

・ビニール袋をウミガメの天敵と同じ形にする

・ビニール袋に、ウミガメが苦手な匂いをつける

・ビニール袋の素材を海水に溶けるものにする

【採点の基準】

空欄でない限りは基本的に点数を与え、内容に応じて減点。「ビニール袋として通常使用できる便利さは失わない」という設問を踏まえていることが重要。「水に溶ける」などの解答もあったが、雨の日に使えないなどの不便さが生じてしまうので減点対象となる。

【出題の意図】

工業大学の附属校なので、開発した製品の「その後」を想像できる生徒に入学してもらいたいという狙い。出題のポイントは「ビニール袋として通常使用できる便利さは失わない」という条件を付けた点。(実社会における)海洋プラスチック問題へのアプローチには、当然「ビニール袋を使わない」という観点もあるだろう。しかし、「作る」という発想を持つ子どものほうが芝浦工大付属中学校での学びを楽しめるだろうと考え、あえてこのような問題にした。これからの時代は、「文明を保った上で環境を守る」というような、サステナブルな視点が重要だと考えている。

■ 日常生活で「算数」に感動した経験、ありますか?

【採点の基準】

「実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事」が説明できていれば、特に内容は問わない。

【出題の意図】

問題意識を発信する力をはかる狙い。駒場東邦中学・高等学校では「自分で考え、答えを出す」力を育む教育をしている。日々の勉強が日常生活にも繋がっているということを意識してもらいたいというメッセージを込めた。

■ あなたが国連の食糧問題の担当者だとしたら…?

【実際の解答例】

世界の食糧不足の問題を教えた上で、給食を残さず食べるように指導する

【採点の基準】

「世界の食糧不足の問題を教えた上で(アプローチ)+給食を残さず食べるように指導する(手法)」というように、アプローチと手法が併記してある解答が望ましい。回答内容の善し悪しは、点数には反映しない。

【出題の意図】

大宮開成中学校ではSDGsを取り入れた授業を実施していることから、入試問題にも「学校からのメッセージ」としてSDGsに関連した問題を取り入れた。SDGsを「知っている」だけでは意味がないように、知識を実社会で使いこなすことのできる教養力を持った大人を育てたい。そのため、できるだけ考えさせる問題を出題するようにしている。

■ トイレの男女別の「ピクトグラム」、なぜ問題なの?

【解答例】

「男性はズボン、女性はスカート」「男性は黒、女性は赤」といった「らしさ」の押し付けにつながる可能がある。

【採点の基準】

正解の基準は、トイレのピクトグラムが「男性らしさ / 女性らしさの押し付け」になっていることを説明できていること。出生時に割り当てられた性別と自分が認識する性別が一致していない「トランスジェンダー」の視点に立った解答が1〜2割を占めた。

【出題の意図】

小学生にも身近なピクトグラムのトイレ標識から、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を考えてもらうことが狙い。

■ “児童会長は男子で、副会長は女子と決められている”→「ジェンダーフリー」の観点から、どこがおかしい?

【解答例】

番号:「い」

理由:会長の資質は性別によらないから

【採点の基準】

自分の意見を表明し、理由が書けているかどうかで加点する。「男女平等でないといけない」など、受験対策で学ぶような「お決まりフレーズ」だけでは満点にならない。つたない表現でも自分の言葉で理由が書けているかがポイント。

【出題意図】

毎年、世の中で話題になっているテーマに基づいて、答えがひとつではない記述式の問題を作成している。(この問題を出題した)2004年当時の社会では、女性の社会進出の遅れが話題になっていた。学校の学びを身近なことに落とし込める生徒や、ニュースや身の回りの出来事に「おかしいな」「おもしろいな」とアンテナを張れる生徒に入学してもらいたい。

■ 2050年のプラスチックごみの発生量を計算せよ!

【解答】

(問1)6.5

(問2)(記号)④

(問3)①、③

【出題意図】

小学校の算数では、与えられたデータをグラフで表したり、逆にグラフからデータの様子を考えたりする学習をする。その時に題材として与えられるデータは、比例や反比例の傾向を持つものがほとんど。しかしこの問題では、あえてそのような傾向を持たないデータに触れてもらいながら、自分にとって身近な未来のことを考えてもらった。小学生には「数学は未来を予測する道具として活用されている」ということを知ってもらいたい。

*この記事でご紹介した入試問題は、日能研「シカクいアタマをマルくする」シリーズよりハフポスト日本版が厳選。学校に再取材したものを掲載しています。

Maya nakata / Huffpost Japan

身近な話題からSDGsを考える生番組「ハフライブ」。5月のテーマは、教育とSDGsです。

環境問題や貧困、ジェンダー不平等などの社会問題について考える時、「結局は、教育が変わらないといけないよね」という言葉を耳にすることがあります。でも、本当にそうでしょうか?たしかに教育には課題もたくさんありますが、働き方やライフスタイルが変化するように、実は教育内容もかなり変化しています。

番組では、そんな「教育の今」を入り口にして、SDGsの課題について考えていきます。

番組概要:

変わるべきは「大人」?教育から考えるSDGs

・配信日時:5月25日(木)夜8時~

・配信URL: YouTube

近藤春菜さんが最新の中学受験問題を解いてみた!「教育×SDGs」 #ハフライブ
どんな番組?<ゲスト>近藤春菜さん/お笑いコンビ・ハリセンボン川﨑レナさん/ユーグレナCFO(最高未来責任者)大畑方人さん/ドルトン東京学園中等部・高等部教諭<メインパーソナリ...

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