【連載】『Infinity』第5回 長距離 石塚陽士×伊藤大志 – wasedasports.com

【連載】『infinity』第5回-長距離-石塚陽士×伊藤大志-–-wasedasports.com 花のつくりとはたらき

 長距離ブロックに強力なルーキーが加わった。高校3年時に1500メートル当時高校歴代3位をたたき出し、高校生ながら日本選手権決勝を経験している石塚陽士(教1=東京・早実)。佐久長聖高で主将を務め、5000メートル高校歴代2位をマークした伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)。既に世代トップクラスの活躍を見せる2人は、早稲田での競技において、どんなビジョンを描いているのかーー。

※この取材は4月23日に行われたものです。

石塚「(陸上を)内側から理解できるような勉強がしたい」

笑顔で話す石塚(左)と伊藤

――お二人はよく話すのですか

伊藤 中学の時からある程度知り合いだったので、会ったら話すみたいな。初めて話したのは中3の全中(全日本中学校選手権)くらいですね。表彰の控え室でみんなで話したりみたいな。

石塚 流れで入賞した人で話すことが多くて。それで初めて話したという感じですね。

伊藤 最後に話したのは高1の国体くらいですかね。それ以外はあまり話してないです。

――では久しぶりに話されたのはいつだったのですか

伊藤 3月くらいに石塚が入寮した時ですね。僕は福岡クロカン(日本選手権クロスカントリー)に競走部から一緒に行かせていただいたので、僕だけ1週間早く入っていました。

――大学に入ってお互いの印象は変わりましたか

石塚 そんなに印象は変わらないですね。変わるほどまだ関わっていないというか(笑)。 逆に2カ月で変わったら今までどれだけ猫かぶってたんだみたいな。

――お二人の紹介をしていただけますか

伊藤 こいつ(石塚)はちょっと他のやつより頭のネジがいかれてますね。ここだという感じではないんですが、ふわっとした雰囲気的に他のやつとやっぱりちょっと違うな、みたいな。 長距離はここまで来ると大体そんなやつばっかりなので、やっぱりこいつもかという感じです(笑)。

石塚 大学で長距離やるなんて、頭のネジが外れてないとここまでは続けられないんで、なかなかいかれてないとできないと思います(笑)。

――伊藤選手についてはいかがですか

石塚 伊藤は逆に思ったよりネジがはまってたかなと(笑)。わりと常識人だったと思います。常識人で自分の芯を持っているというか、自分の先のことをちゃんと考えていて、しっかりしているなあと思っています。

――他の1年生とも仲良くなりましたか

伊藤 長距離は入寮して結構経ったのでもう仲はいいです。短距離も一緒(の寮)で、最初の方は少し壁があるかなという感じはしたんですが、だんだん当番とかもやっていくうちにすごく仲良くなって。今はもう普通ですね。

――寮生活は慣れましたか

伊藤 僕は寮生活4年目なので。高校が厳しかったので、むしろここの寮は天国だなと思っています。

石塚 だいぶ慣れましたけど、僕は寮生活が初めてだったので今までのびのびしていた分ちょっと制約があるかなとは感じています。やっぱり今まで家族以外で集団生活がないので、勝手が違いますね。

伊藤 やるところはしっかりやって、それ以外は楽しんで、みたいな。

石塚 秩序を保ってという感じですね。

――授業も始まりましたがいかがですか

石塚 すごく忙しいです。まだ死なないですけど、ゴールデンウィーク明けぐらいからは死ぬんじゃないかなと(笑)。 

伊藤 僕はスポ科(スポーツ科学部)というのもあって、あまり授業は多くないというか。僕は教職を取らずにアスレチックトレーナーの資格を取りたいと思っていて、そうするとどうしてもコース選択をする2年生から必修が増えてくるので、1年はまだ少ないかなという感じですね。石塚に比べたらだいぶ楽です。

石塚 僕がちょっと異常なだけです(笑)。

――今も忙しいのですか

石塚 春学期に基本的に授業がいっぱい入っていて、秋学期は少し落ち着くという感じなので、そこに教職とか入れているとキツキツという感じになります。

――ではそれを来年体験するかもしれないと

伊藤 そうですね。トレーナーコースは東伏見でやるらしいので、移動が大変かなと。本キャンに行かないだけまだましですけどね。

石塚 伏見は急行止まらないから面倒くさいかもね。

伊藤 そうしたらチャリで行こう。チャリ好きなんですよね。

――自転車が好きなんですか

伊藤 去年の自粛期間くらいに自転車競技にどっぷりはまって、やる側もはまっちゃって。ツールドフランス全部見たり。結構しっかりはまってます(笑)。

――行きたいと思っている場所はありますか

伊藤 どうしましょう、思いつきでパッと乗っちゃうんで…。飯能の辺りとかぐるぐるしたいなと思ってますかね。ここからだったらお手軽に行けるかなと。

――石塚選手は何かはまってることはありますか

石塚 趣味ないんですよねー(笑)。こういう趣味あるのいいなと思います。昔はスキーとか好きだったんですが、今は足首の骨折が怖いのでなかなかできなくて。

――学部は教育学部の生物学専修ですが、なぜそこを選んだのですか

石塚 生理学系に興味があって。スポ科とかもいろいろ考えたんですが、教員にもなりたくて、教職を理科で取りたいというのもありました。まず理科をやりたいのも、やっぱり陸上はただスポーツなだけじゃなくて理系的な側面もあって、そこを理解していかないと、表面的ではないしっかりした理解ができないと思うので。そういう構造的な、内側から理解できるような勉強がしたいなと思いました。

伊藤 何も考えてないようでちゃんと考えてるからすごいんですよね(笑)。

――実際の授業で面白いものはありますか

石塚 まだ3回ぐらいしかやってないんですが、今一番好きなのは生理化学ですかね。体の反応を化学式で書き換えるみたいな。

伊藤 2年でやるんだろうな、生理化学…。思いやられるぜ。

――そういうのはあまり好きではないんですか

伊藤 そうなんですよ。あまり理系が得意じゃなくて。それでなんでAT取ろうとしてるのかって話なんですが(笑)。

――では授業と部活の両立はいかがですか

石塚 本キャンで4限、5限まであるので、練習をちょくちょく欠席するんですが、そこぐらいですかね。オンラインがあるだけ本来の時間割よりはだいぶ楽になっているので、それで救われている部分はあります。

――練習の話になると、大学の練習には慣れましたか

伊藤 だいぶ慣れてきたかなと。もともと高校ではチームで距離を踏んだりとか、質の高い練習というよりも、寮生活で規律を正していこうとか、走りの合間の補強を頑張って差をつけていくタイプの練習方法だったんですね。なので大学に来た時は先輩がすごく距離を踏んでいたり、ポイント練習の質が高いことにすごく驚いて、新鮮でした。2カ月ぐらい練習してきてだいぶ慣れてはきました。

石塚 僕もそうですね。

――石塚選手は同じ練習をされているんですか

石塚 今は別のメニューで、1500メートルと5000メニューで分かれてるという感じですね。半澤さん(黎斗、スポ4=福島・学法石川)とかと一緒に練習しています。

――オフの日の過ごし方は

伊藤 僕インドアが苦手なんですよね。映画見ててもすぐ飽きちゃうんですよ。映画館で見る分にはいいんですが、一人で部屋で見ようとなるとすぐ飽きてインスタに走っちゃったりするんで。部屋にこもっているよりはどこか行きたいなという感じです。外出自粛とかがなかったら、ふらっとアウトレットとか行きたいですね。買わずに見るのだけでも好きなので。そういうの見たりとか、電車乗ったりとかがしたいんですよね。あとは睡眠を思う存分取る(笑)。

――アウトレットに行くとなったら一人で行かれるのですか

伊藤 そうですね。友達と行くのも楽しくて、みんなでワイワイするのも好きなんですが、一人でふらっと入っちゃうのも好きなので。一人旅とかも全然行けちゃうタイプです。

――石塚選手はいかがですか

石塚 もう引きこもりです(笑)。出たくないです、練習と授業以外では。

伊藤 授業でいっぱい出るんで、疲れるんですよねきっと。

石塚 暇だったら買い物とかしたいんですが、そんな気力ないという感じなんです、今は。いつかアウトレットに連れてってもらいたいなという感じですね。

伊藤 チャリでもいいよ、俺が引っ張ってってあげるから(笑)。

石塚 今、このシーズンの私服が4着ぐらいしかないんで。対面が(週に)4回なんですが、ぐるぐる回している感じになってて(笑)。そろそろ買わないとまずいなと。シューズもなくて、練習用の靴に私服で本キャン行ってるので(笑)。高校時代も全然外に出なくて私服用の靴がなくて、いい加減買わないと浮きそうなので、早く買いたいなと思います。

伊藤「(早稲田の)チームカラーが自分に一番合っている」

進学の経緯を語る伊藤

――石塚選手は早稲田実業高校出身ですが、早大を意識したのですか

石塚 そうなりますね。早稲田(大学)を目指して高校(早実)に入ったという経緯があります。

――伊藤さんは早稲田に進学された理由は

伊藤 いろいろ選択肢はありましたが、どこに行こうかと考えたときに、自粛期間中の集団練習ができない時に、自分で考えて調子に合わせて練習をやるというのが合っているなと感じて。選手の自主性を重んじている早稲田大学のチームカラーが自分に一番合っているかなと思いました。あとはさっきも話したようにアスレチックトレーナーの資格を取りたいなと考えていたので、スポーツ系の大学に行ったほうが取りやすいなと。中谷(雄飛、スポ4=長野・佐久長聖)さんにも少しお話を伺って、練習の量とかの話を聞いている中で決めましたね。

――中谷選手とは仲がいいのですか

伊藤 早稲田に決めるとき、悩んでいるぐらいの時期に先輩を通して連絡先をもらって、そこからずっと結構話して仲良くさせてもらっています。

――トレーナーというのは将来的に何か考えている部分があるのですか

伊藤 もともと中学校で長距離を本格的に始めたぐらいから、トレーナーの先生、整骨院の先生に診てもらった時に、人間の体と陸上競技がつながるのってすごく面白いなと思って。陸上をやっていく中でもトレーナーの先生にいろいろお世話になっていたので、やっぱり引退後はそういう道に進みたいなと考えていました。

――伊藤選手は5000メートル13分36秒で早大トップのタイム(※取材当時)を持って入学されました。このタイムを出したレースを振り返っていかがでしたか

伊藤 出した僕が一番びっくりしました。その前のレースは故障明けから数日後で14分一桁ぐらいだったのですが、その時の同期の越(陽汰、現東海大)が13分台で走って。そこで僕と越が1区か3区どっちかという話だったので、そういうところでも結構プレッシャーがかかっていました。

 記録も狙わなきゃいけないなというところでしたが、コーチ陣から、今回はタイムを狙うんじゃなくて駅伝につながる走りをしなさいとお話をもらってスタートしました。なのでタイムというよりかはレース中はできるだけ駅伝につながるように、速い集団についたり、引っ張ったり、とにかく前に前に出るレースをして走ってたら、13分36秒が出ちゃったという(笑)。

――タイムを狙っていなかったレースで出たという

伊藤 全然タイムを気にせずゴールして。タイムが出たことよりも、ちゃんと速い集団について勝負できたことがすごくうれしくて。最後ガッツポーズしてゴールしたら13分36でした。それをしてなかったら13分34までいけたかなと(笑)。自分のタイムはリザルトを見てから知りました。

――そうだったんですね。皆タイムが出たガッツポーズだと思っていますよね

伊藤 みんな思ってるんですけどね。とにかくつけてやったー、と。極度のプレッシャーの中で走ったので。その前の組でその時1年生の子が13分51秒で走っていたり、そういったプレッシャーがあったので、その集団の中で走れた達成感でガッツポーズが出て。タイムを見たら36秒でした。

――プレッシャーには強い方ですか

伊藤 トラックのレースではある程度自分のプレッシャーには勝てますね。でも駅伝だと一人のミスがチームの結果につながってしまうので、自分の責任以上のものがあるというプレッシャーがちょっとまだ苦手で。それで駅伝の苦手意識というのが高校時代からあります。

――駅伝には苦手意識があるのですね

伊藤 高1から都大路に出させてもらってますが、トラックは失敗しても自分の責任一つなのでパッと切り替えて次にいけるんですが、駅伝となるとやっぱりチーム全員で結果として出てしまうので、高校3年の都大路(全国高校駅伝)はすごいプレッシャーで。自分では関係ないと思っていたのが知らず知らずのうちに出たのかなという感じですね。

――一番プレッシャーを感じた試合は

伊藤 やっぱり高3の都大路ですね。僕がキャプテンということもあって、チームを引っ張りながら優勝ということを考えていて、13分36秒を持った状態での1区というプレッシャーもありました。1区だとチームの流れを決めるので、失敗できないというのもありましたし、やっぱり佐久長聖は伝統校で、23年連続で都大路に出て、7年連続入賞となると伝統校のキャプテンの重みをすごく感じて。それを崩したらどうしようというのは感じていましたね。

――石塚選手は2020年の日本選手権で9位になりましたが、そのレースを振り返っていかがですか

石塚 日本選手権は高校生以外、シニアと走るのが初めてだったので、その意味で貴重な経験でした。日本選手権ではやっぱり実績を積んできた選手ばかりなので、スタートもある程度落ち着いた走りで、レース中にもいつ出るんだという緊張感があって。その緊張感は今まで感じたことがなかったので、経験できて良かったなと思います。

――大会前は緊張されるのですか

石塚 あまりしないタイプで。緊張しないように持っていきます。さっき大志はタイムの重圧とかいう話をしたんですが、そうした重圧とかがないように思考を変えていくというか。見方を変えればチャレンジャーなので。そういう気持ちで、高校歴代3位というのを忘れて、未知の世界に飛び込んでいくんだ、チャレンジャーの精神なんだ、と意識するとあまり緊張しなくなるので、それを意識してやっています。

――伊藤選手もかなりうなずいてますね

伊藤 僕もやろうとするんですけどね。緊張すると動きも悪くなっちゃうし、緊張した状態でのレースは嫌なので、大丈夫大丈夫と言い聞かせて走るんですが、思えば思うほど動きも空回りしてしまうので、うまくいかないです。それがうまくできるのはすごいなと思いますね。

石塚 いつも失敗してもいいなくらいに考えてる。でも逆にそういう考えだから1位が全然取れなくて…。そこのバランスが難しいな。

伊藤 1位は取れないよな。勝ち切れたことないんだよな…シルバーコレクターで…。陸上始めてから1回も勝ったことないんだよな。

石塚 えー?(笑)

伊藤 県のレースとかだと、ある程度のタイムで押してどれだけ耐えられるか、みたいな感じで、あんまり調整しないでいけるんですが、北信越とか全国とかのレベルになると競り負けちゃうというか。いつもなんですが、勝てる走りじゃなくて負けない走りをしちゃうんで。安全パイを取っちゃうというか、ここで鶴川(正也、現青学大)が出たけど、ずっと耐えて耐えてラストをちょっと上げて2位、みたいな。そういう走りしかできなかったので、そこは変えたいなと思いますね。

――やはりそこは課題だと思いますか

伊藤 大学では勝ち切れる選手になりたいですね。高校時代はそこで都大路でも後悔したので、速さ以上の強さというのはよく言われるんですが、それが欲しいなと思います。

世界での戦いを見据えて

今後のビジョンを話す石塚

――お二人とも大学でメインとする種目はどう考えていますか

石塚 とりあえず自分は1500メートルでやっていくという感じですね。ロードシーズンは駅伝に合わせていくと思います。

伊藤 5000メートルか1万メートルに出たいかなと思っていますね。やっぱりトラックが得意だというイメージがあるので、5000か1万で基本的にやっていって、あとはチームの3大駅伝3冠という目標に向けて箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝)みたいなハーフ以上の距離にも対応できるようにしていきたいです。

――自分の走りの強みを聞かせてください

石塚 自分は大きな失敗をしないですね。100点とか120点の走りはあまりしないんですが、平均的に80点ぐらいの走りをするので。一応全国レベルの大会で皆入賞はしているので。1、2位とかには食い込んでないんですが、3~8位の中でうごめいているという感じで、どんな時でもある程度のレベルまでにはまとめられます。そのレベルを大学では上げていかなきゃいけないんですが、大外しはしないという感じですね。

伊藤 僕は、単発的な100(メートル)とか200のスピードは他の選手には劣るところはあるんですが、レース展開から見たラストスパートというのは自信があるかなと思っていて。レース展開をしっかりと考えてある程度の集団についたり、位置取りを考えたりとか、レースの中で冷静な判断をすることには得意意識があるので、今後も生かしていきたいなと思っています。

――逆に課題としているところはありますか

石塚 僕は一番は勝ち切れないところですね。

伊藤 僕も同じです(笑)。勝ち切れないのと、長距離をある程度一定のペースを押していくというのがちょっと苦手かなと思っていて。特に箱根とかになるとその力がすごく必要だと思うので、ラストスパートも大切なんですが、ある程度前半仕掛けてそのまま一定のペースで押していくという、両方の力のいいとこ取りをしていきたいです。

――課題克服のためにどんなことに取り組んでいきたいですか

石塚 スピードを持っている先輩方がいっぱいいるので、ラストの1本とかで競い合ったり、ラストで競り負けないように、練習から勝ち切るところを意識したいです。

伊藤 僕はまずフィジカル面を強化したいと思っています。レースで安定したペースで刻んでいっても、後半にうまく体が使えなくて失速するパターンが多かったので、そのフィジカル面を強化して、安定した走りができる体をつくりたいです。それを第一に考えているので、今は補強や、ポイント練習以外の高校時代からやっている練習を増やしたりしています。

――尊敬している先輩はいますか

伊藤 中谷さんはそうですね。佐久長聖の先輩で、早稲田大学でも先輩で、高校時代からずっと第一線で活躍していて、それこそ勝ちに強い先輩なので。

 大迫さん(傑、平26スポ卒=現ナイキ)はもう尊敬というか憧れに近いですね。佐久長聖とか早稲田に決める前から大学駅伝で活躍しているスター選手だったので。他にも關先輩(颯人、SGホールディングス)とか名取先輩(燎太、コニカミノルタ)とか教育実習で来てくださって、練習でも一緒に走ってくださったり。

――高校の先輩を尊敬されているんですね

伊藤 そうですね、身近ですかね。あの過酷な環境でやってきて、そこから大学でも第一線で活躍しているので。やっぱり親近感を感じますし、OBの先輩の活躍は自分の原動力になります。直近というわけではないんですが、目標としやすい先輩方なのかなと思います。

石塚 僕は大迫さんが町田市出身なので、大迫さんと言うようにしています。でも実際のところは、尊敬してるとかライバル選手を聞かれるんですが、本当はいない寄りです。

 それは尊敬とかライバルとか作っていると、それを超えられない気がして。そこがゴールになっちゃうというか、そこから先に進めないような感じがしちゃうので作らないようにしています。気にしたり注目はしてるけど、神格化というかその領域まではいかないみたいな。すごいな、速いな、くらいですね。

――伊藤選手はライバルはいるのですか

伊藤 同期の越は、ずっと中学の時からやっていたので、強いて言うなら越かなと思います。今はチームが変わってしまいましたが。鶴川とか石田(洸介、現東洋大)とかは、ライバルというほど意識してないというか。もちろん記録を出した時は、「うわ、先に行かれたな」という感じは少ししましたが、かといって勝つためにやるとかはあまりしないですね。

 高校だと越が一緒に練習していたので、身近な練習パートナーというか。それこそずっと一緒にポイント練習でも競っていたので、直近の指標というか、今回は勝った、今回は負けた、みたいな抜きつ抜かれつの関係でした。

――トラックと駅伝を比べていかがですか

石塚 トラックの方が好きですね。さっきプレッシャーを感じないという話をしましたが、駅伝はチームスポーツなので、どんなにチャレンジャーの精神といってもやっぱりチーム競技というプレッシャーはかかるんですね。もちろん駅伝は駅伝の楽しさがあるんですが、一人で戦わない、自己完結しないというか、他の要素に依存してきてしまうので、自分でしっかり決着が付けられるトラックの方が好きかなと思います。

伊藤 トラックは5000(メートル)という距離の中で駆け引きして、そこで勝ち切ったり、順位を狙ったりというのがすごく楽しくて快感を覚えたので。大学ではそういうところを突き詰めたいですね。

――大学駅伝に関するビジョンはありますか

石塚 1年目からしっかり走りたいですね。今年が一番3冠に近い年ではあるので、そのメンバーにしっかり入って活躍して、3冠に貢献できる選手になりたいなと思います。

伊藤 僕もしっかり駅伝を勝ち切りたいですね。もちろんトラックも楽しいですが、駅伝は駅伝ならではの楽しさがありますし、やっぱり大学に入ったら箱根駅伝は関わってくるというか。それがメインになってくると思うので、それだったらやっぱり箱根駅伝を走ってみたいですし、箱根で勝ちたいです。箱根で勝てるチームにいると思うので、学生3大駅伝という、言ってしまえば陸上の中で一番注目される大会ではあると思うんですが、そんな大会で勝ち切れる選手になっていきたいなと思います。

――現時点で走ってみたい区間はありますか

伊藤 出雲1区とか楽しそうだけどな。楽しそうというかやばそう(笑)。バチバチに戦う感じが。

石塚 勝ち切れないやつが行っちゃだめだよな(笑)。

伊藤 1区キャラのやつが行かないとな。あとは、箱根の5区とか1回体験してみたいけど。今年の箱根終わって、芽吹さん(鈴木芽吹、駒大)に「5区お疲れ様でした」って言ったら「二度と走りたくない」って言ってたので、そんなにすごいのかなって(笑)。高校時代に芽吹さんと同じ感じで上り担当だったので、ちょっと上り行ってみたい半分、怖いが半分ですね。怖いもの見たさに走ってみたいなと。

石塚 自分は中学の顧問に、お前は2区か5区と言われて、本当にそうなのかというのを楽しみにしていますね。本当に尊敬している、陸上の基礎を作ってくれた先生なので、どこまで当たっているのか、興味があって楽しみですね。

――上りは好きですか

石塚 上りか下りかと言ったら上りが好きですね。

――大学4年間で達成したい目標はありますか

伊藤 ここまで陸上をやってきているので、世界での戦いを見据えていきたいです。なので4年間で世界大会に出場できるくらいのレベルまでいって、後々は世界で対等に戦えるような選手になりたいです。

 今後の競技の進め方によって、トラックで狙っていくのか、マラソンやロードでやっていくのか、正直可能性はいろいろあると思うので分からないですが、共通して世界を狙えるような選手になっていきたいと思います。

石塚 僕も同じで、まずはしっかり日本で勝ち切れるようになって、そこからは世界を見据えて戦っていきたいです。あとは自分は一応理系で、理系で活躍している選手はほぼいないので、そこで理系でも成功できるんだよと4年間で示していけたらいいなと思います。

――1年目、今シーズンの目標をお願いします

伊藤 世界大会は最終的な目標として、1年目はまずは長い目で見て基礎づくりをしっかりやっていきたいと考えています。シニアや大学のレースで勝ち切れるような体をつくりたいのと、石塚も言ったように日本で勝てなかったら世界には行けないと思うので。

 そういったものを考えて、全カレ(日本学生対校選手権)、日本選手権、グランプリのレースとか、ホクレン(ディスタンスチャレンジ)とかタイムの出やすいレースでもしっかり勝てるようにならないと、世界大会のレースは口に出せるような選手にはなれないと思います。まずは目の前のレースを一つ一つやっていく、流れをつくっていく1年にしたいと思います。

石塚 4年間でしっかり戦っていくという計画を立てていて、日本で勝ってない人が世界で勝てるわけがないので、1年目にまずはしっかり日本で勝っていきたいです。1500メートルはターゲットナンバーが通るか分からないですが、そこでしっかり上の順位を狙っていきたいです。

 世界は1年目から狙っていく必要はないと思っていて、もちろん見据えることは大事ですが、出るという意気込みはそこまで大事じゃないと思っていて。基礎構築の時間だと考えているので、4年間ベースで見たときにはウェイト系をやっていきたいです。あとは単純な勝負強さを時間をかけてつくっていかないと、小手先の練習では変えられない部分があると思うので、そこをしっかり培って過ごしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 朝岡里奈、布村果暖)

話すテンポが合うのか、トークがとても盛り上がった石塚・伊藤ペア。最後は色紙とともに、満面の笑みを見せてくれました!

◆石塚陽士(いしづか・はると)(※写真左)

2002(平14)年4月22日生まれ。170センチ。東京・早実高出身。教育学部1年。理系かつ教職のため授業が週21コマと、かなり多忙な生活を送る石塚選手。勉強との相乗効果でさらなる進化を見せてくれるか。既にエンジデビューを果たしていますが、より一層の活躍が期待されます!

◆伊藤大志(いとう・たいし)

2003(平15)年2月2日生まれ。171センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部1年。大好きな自転車の話を本当に楽しそうに語ってくれた伊藤選手。自転車を整備している姿も目撃されているようです。4年生からも「心が少年」「無垢」と言われていました。その純粋な心のまま日本のトップ、そして世界へと羽ばたいていってほしいです!

Powered by the Echo RSS Plugin by CodeRevolution.

タイトルとURLをコピーしました