コロナ禍で2度目の新学期が始まり、1カ月が過ぎた。子どもたちは授業中のマスク着用や「3密」回避など、従来とは異なる形で学校生活を続けており、心身の影響を懸念する声もある。特に5月は年度初めから続く緊張が大型連休で途切れ、だるさや憂鬱(ゆううつ)感など「五月病」と呼ばれる症状が現れやすい季節。沖縄県内小中高の7人の養護教諭にコロナ禍の1年を振り返ってもらい、子どもたちの影響や今後の課題など本音を聞いた。(社会部・下里潤)※養護教諭の本音を聞くため匿名で掲載しました。内訳は小学校3人、中学校3人、高校1人です。
■マスクの影響
―――授業中のマスク着用による影響は。
小学A「子どもたちの顔と名前がなかなか一致せず、声が聞き取りづらい場合もある。以前は保健室の入り口に立っている時点で調子が悪いことが分かったが、マスクで顔が見えず、唇の血色や表情を確認できなくなった」
小学C「口元が見えないので言葉が伝わりにくく、何度も話を聞き返すことも増えた。一方で、マスクをすることで安心感を持つ子もいる」
中学C「顔を覚えにくく友達がつくりにくいと思っていたが、それなりに適応できていると思う。今ではマスク着用が当たり前になった」
―――「3密」を避けるなど感染予防対策への影響は。
小学A「学習の中での話し合いなどが困難になっている。給食は一方向を向いて黙食しなければならず、楽しみが減っているように思う」
中学B「教室は十分なスペースがなく、分散登校でない限り、ガイドラインで示された机の距離は保てないのが現状だ。授業は2方向で換気が行われているが、休み時間はそうもいかない。教師が休み時間も見守りを続け、密にならないようにと毎日根気強く声を掛けている」
高校A「厳密に指導しすぎると精神的な負担も懸念される。どこまで注意するか線引きが難しい。新しいクラスになじめないという話も聞く」
■体力や精神の変化
―――子どもたちの体力的・精神的変化は。
小学A「定期的に体育の授業があり、放課後にスポーツをしていた時に比べ、不注意によるけがが増えたと思う。危険を避ける力は落ちたように感じる」
小学C「不要不急の外出を控えているせいか、体力の低下や運動不足などから体調不良を訴える子が増えた。休憩やこまめな水分補給などの配慮が必要だ」
中学A「イライラする子や突然泣きだす子もいる。スマートフォンやゲームが原因かとも思うが、生徒や保護者と一緒になって解決に向かうことが大事だ」
―――保健室登校や不登校が増えたとの指摘もある。
小学B「昨年度は休校が続いたため、母親など家族離れがスムーズにできず、登校を渋る新入生が多かった。大半の子はしばらくすると通常通りになったが、発達に困難のある児童の中には臨機応変に対応しなくてはならない場面が増え、ストレスや不登校になるケースも見られる」
高校A「不登校などは原因が一つではなく、明確にコロナの影響とは言えなくても、クラスになじみにくくなったなど、引き金の一つになっていると思う」
―――巣ごもりで長時間ネットをするなど生活の乱れは感じるか。
小学A「体調不良の背景に長時間のメディア接触を感じることは多々ある。ただ、今後はリモート学習を身に付けなければいけないことを考えると、悩ましいところだ」
中学C「スマホの影響で睡眠時間が短くなり、昼すぎに登校してくる生徒も若干だがいる。健康のためにも生活習慣を立て直さなければならない」
■行事の工夫
―――学校行事について
小学C「学校行事は児童・生徒の成長の場。今のところ感染防止対策をしつつ、実施の方向になっている。半面、実施に強い不安を持つ保護者もいる。どちらの理解も得られるよう規模を縮小したり、分散したりする工夫が必要だ」
中学C「感染状況によっては中止も仕方がない。代案を出しながら行事を実施できないか模索している。昨年度は多くの行事が中止や縮小になったが、思った以上にたくましく成長している子もいた。コロナ禍の経験が今後の人生に有意義に生かされるケースもあるはずだ」
高校A「昨年度は約1カ月半休校し、例年4月に実施していた遠足や球技大会が中止になった。行事がない中、クラスになじめるか不安の声も聞かれた。行事はクラスが団結するために重要な役割を果たすと実感している」
―――子どもたちへの影響で気になることは。
中学B「マスクを外せない生徒がいる。知覚過敏だが我慢してマスクをしている生徒もいる。そのことを言えない生徒もいる。教員側は見守るアンテナを張り巡らせているが、緊張がいつまで持つか分からない。教員の健康も心配だ」
高校A「保護者の経済状況を気にして志望大学を県外から県内へ、大学志望から就職へと進路を変える生徒もいると聞く。将来への不安を抱える生徒も多いのではないか」
■連休明けの懸念
―――大型連休明けで懸念されることは。
中学C「連休明けは保健室利用者が多くなる時期。生徒の不安に寄り添い、免疫力を高める保健指導などを行っていきたい」
高校A「連続欠席であれば、それが体調不良なのか、学校へ足が向かない理由があるのか、しっかりと確認することが大切だ。教室へ行きづらさがあるなら、保健室など別室登校を促したり、スクールカウンセラーの面談を勧めたりする必要がある。風邪症状があれば出席停止となるため、体調なのか精神的なものか見分けるのが難しい」
―――今後の課題は。
高校A「一つ目はオンラインでの学習保障を進めること。現在、感染者や濃厚接触者の生徒には各教科担任が課題を出す対応をしているが、学習不安の声が出ている。二つ目は校則。特に服装指導に関する事項を柔軟にすることだ。冬場は感染症対策で換気しているため、防寒具を認めたり、衣替えをなくし、体調に合わせて夏服・冬服を選んだり、教育委員会が積極的に後押ししてほしい」
中学B「消毒や検温など教員の業務負担は大きいが、習慣となっているので昨年度より気持ちは楽。初心に戻り、これまでの対応を引き続き行うしかない」
小学A「教諭一人一人が試行錯誤で得た成果を情報交換し、子どもたちに寄り添っていくことも求められる」
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