初の共通テストを振り返る
愛光、松山東、済美平成に聞く
新年度を迎えて以降、県内の高校のホームページに2021年度の大学合格状況や進路一覧が掲載されるようになった。21年度は、方針が二転三転した末に実施された「大学入学共通テスト」の初の受験生でもある。出題傾向はどうだったのか、合格実績との相関、さらには22年度共通テストに向けた対策について、県内有数の進学校である愛光高校、松山東高校、済美平成中等教育学校に聞いた。
異例ずくめの展開
愛光高校の合格状況
共通テストは、大学入試改革の中核で、思考力・判断力・表現力を測ることがうたわれていた。ただ「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問う英語民間試験や、国語と数学の一部での記述式問題の導入といった「目玉」は、疑問・懸念が相次ぎともに見送られるなど、異例ずくめの展開をたどった。愛光は「高校2年から記述対策を行い、生徒にどの英語民間試験を受験させるかといった検討をしてきた。共通テストには相当振り回された」(山岡利郎進学主任)と振り返る。
実施されたテストは、例えば数学で100メートル走を速く走る方法を数学的に求める問題が登場したり、会話文を取り入れたりといった新しい趣向が凝らされていた。愛光は「知識に頼ることなくしっかり考えないと解けない問題が出題されていた。よく練られていた良問だったと思う」と妥当な内容だったとの見方。松山東も「各教科で文章量や図表の活用が増え、内容は大きく変わったという印象だ。ただ予想されていた内容とは大きな違いはなかった」(玉井直樹進路課長)と想定の範囲内だったとする。
出題の意図を測りかねているとするのが済美平成。「予告通りとはいえ、全ての教科で日常の身近な場面に関する問題や、資料を読み取る問題を出したのは少しやり過ぎではと思う。今は、25年度からの新課程での入試までの通過点で、試行錯誤の最中なのかもしれない」(久門昌哉進路指導課長)とみる。
「難しくはなかった」
松山東高校の合格状況
平均点は大幅に下がるとみられていたが、予想に反して高く、数学Ⅱ・数学Bのように前年度を10点以上上回る科目もあった。松山東は「受験した生徒からは時間がなかったという声はあったが、それほど難しくはなかったと言っていた。それが結果にも表れていた」。普段から記述形式の2次試験対策を重点的に取り組んでいるので、それが思考力を問う共通テストにもスムーズに対応できたと分析する。
済美平成は上位層がやや伸び悩んだが、中・下位層は健闘したそうだ。「医学部を志望する層がもう一歩点数が出なかった。点の出方自体は全国的な傾向と同様だが、もう少し基礎基本的なところをしっかりしておけばよかったかもと思う」と反省点を挙げる。
愛光は20年度のセンター試験より平均点を下げたという。「文系は中・下位層が多かったのと、理系は上位層が少なかったことが背景。共通テストだから下がったという見方はしていない」
合格実績には満足
済美平成中等教育学校の合格状況
合格実績については、各校ともおおむね満足している様子だ。共通テストの平均点が下がった愛光も東大の現役合格者は13人(既卒者を含め16人)で20年度の10人を上回り、国公立医学部、国公立全体の合格者も前年とほぼ変わらない。「東大は上位の生徒が多く受験してくれたことが大きい。加えて今年は国公立の推薦入試をうまく利用できた。20年度9人だったのが21年度は25人で、うち医学部が18人を占めた」。米国コロンビア大の合格者もおり「校内では今年の方が良かったという評価」だそうだ。
松山東は、国公立大の合格者が279人と、20年度の243人を大きく上回った。「一番は生徒自身が頑張ったから。新型コロナウイルスによる休校で危機感を持って取り組んだ面もあるのだろう」。東大は既卒者含め5人。県内の教育関係者が衝撃を受けた18年度の東大ゼロ以降、19年度1人、20年度8人と復調傾向にある。「公立校のトップなので、教員の間では『東大、京大を意識した進路指導を』という話はしている」。東大に現役合格した3人の中には高3になって東大を志望した生徒もおり、その成果が表れているようだ。
済美平成は現役生の国公立合格が事前の見通しより大幅にプラスになった。共通テストの善戦もあり「難しいかもと思っていた層が思いのほか合格していた」と解説する。東大、京大はおらず、難関国立10大学の合格者数も20年度を下回ったが「そもそも受験した生徒自体が少なかった側面もある。21年度は例年になくメディカル系人気と、地元志向が高かった。共通テストや新型コロナ、元々の学年特性、原因は混在するので、はっきりした答えは分からない」という。愛媛大の合格者28人は過去最多だった。
22年度は難易度上昇か
共通テストについては、各校とも22年度は難易度が上がるとの認識で一致する。松山東は「21年度の難易度は、センター試験を受験した浪人生への配慮もあったのかもしれない。22年度は、より意識しておかないといけない」と警戒を強める。
「鍵を握るのは英語」との見方も共通する。リーディングでは発音やアクセントの単独問題がなくなり、単語数が増加。リスニングでは音声が1回しか流れない「1回読み」の問題が多かった。「リスニングの強化が必要になる。イギリス英語や、英語を母国語としない人の英語といった、多様な英語を聞いて耳慣れすることが大切だ」(愛光)、「英語は急に取り組んでも身に付かない。1年生の段階からリスニングと読解力には力を入れていきたい」(松山東)と準備を進めていく考えだ。
一方で受験生には、テストの形式変更にとらわれすぎない心構えも肝要となる。済美平成は生徒にこう説いていくつもりだ。「共通テストが終わった段階で(合格可能性が最も低い)E判定から、2次試験で逆転合格した生徒が10人以上。過去1番多いくらいだった。勝負しないといけない場面はこれからいくつも出てくるので、そこでチャンスをつかめるだけの力を付けていこうと伝えたい」
22年度の共通テストは1月15、16日。間もなく残り250日となる。(坂本敦志)
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