高校の保健授業で妻の出産映像流し生徒3人が体調不良に 専門家の受け止めさまざま – 神戸新聞

基本問題

 阪神地域の兵庫県立高校の男性教諭が昨年秋、保健の授業で妻が出産する様子を撮った映像を流し、それを見た女子生徒3人が体調不良を訴えたことが、兵庫県教育委員会などへの取材で分かった。校長は「学習指導要領に基づかない私的な物を教材に使うべきではない」と男性教諭を指導し、教諭は女子生徒の保護者らに謝罪した。一方、「一概に悪いとは言えない」「配慮に欠ける」など専門家らの受け止めはさまざまで、知識や経験の違いに幅がある高校生への性教育の難しさも浮き彫りになった。(斉藤絵美)

 県教委や高校によると、男性教諭は昨年9月、当時2年の2学級で妊娠や出産の仕組みを教える際、それぞれ大型テレビの画面に妻の出産シーンを流した。両学級とも3~4分間の映像で、陣痛に苦しむ妻の上半身を映した場面が主だった。

 先に映像を流した1学級は生徒に特別な反応はなかったが、もう1学級では女子生徒1人が机に伏せて映像を見ず、音声で気分が悪くなって倒れた。その生徒を見た別の女子生徒2人も体調不良を訴え、3人はしばらく保健室で休んだ。

 授業後に状況を知った当時の校長は男性教諭に「生徒はさまざま。気分が悪いと感じる人は映像を見聞きしないでいい、と事前に伝えるなど配慮が必要だった」と指導。男性教諭は「身近な生きた教材を使うことでより伝わることがあると思った」と話し、以降は授業で映像を使っていないという。

 県教委は昨年末、外部からの指摘で事案を把握。「配慮に欠けるが、指導から逸脱はしていない」とし、男性教諭の処分は検討していない。

 県内の県立高校で保健体育を教える別の男性教諭(35)は「授業で生々しい動画を見せたことはない。レアケースではないか」としつつ、「高校には中絶経験がある生徒もいる。生徒を指名して答えさせる場合は細心の注意を払い、グループワークもあまりしない」と難しさを語る。

【助産師で性教育に詳しい関西国際大(同県三木市)の齋藤益子教授(72)の話】出産での出来事を子どもに伝えると自己肯定感が増すという研究もあり、映像を流すことは一概に悪いと言えない。出産は痛い、怖い、大変というだけでなく、母親と赤ちゃんとの対面シーンなど素晴らしさを伝える内容にすべきだった。学校現場は、教材で使うことを前提に撮影する、映像を見せる前にリラックスできる言葉を掛けるなどの工夫をしてほしい。

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