生徒遺族と面談60回 再発防止へ教育長自身が行動(岐阜新聞Web) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

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 「苦しいのに、我慢して学校へ行くことはありません。命を懸けてまで行く所ではありません」。岐阜市立中学校3年の男子生徒がいじめを苦に自殺した「重大事態」が起きた2019年、岐阜市の早川三根夫教育長=当時=は9月の市議会定例会で、そう子どもたちへの思いを述べていた。「今、あなたが悩んでいる、班とか、学級とか、部活は狭い世界です」

 先月限りで退任した早川前教育長は、重大事態の発生から退任までの間、亡くなった男子生徒の遺族と約60回の面談を重ねている。「本当にすてきな人たちなんだ」。退任が決まった先月24日夜の市教育委員会臨時会の後にも、その日のうちに遺族を訪ねている。

 いじめ防止対策推進法に規定し、子どもの生命、心身や財産に重大な被害が生じた疑いがあると認められる場合を指す重大事態の発生件数は19年度、全国で723件に上った。教育長が引責辞任するケースも多い中、教育長自身が遺族と対話を重ねて信頼関係を構築し、再発防止策につなげたのは異例といえる。先月には、20年度から全ての市立学校に配置した「いじめ対策監」のようにいじめ防止の担当教員を置くなどの取り組みを定めた覚書を、同市と羽島市など近郊3市3町の教育長で締結。当事者意識を市外にも広げていく方向性を示した。

 教育長に就任した12年から、「5年先行く教育」を掲げ、才能開花教育をテーマにした土曜授業「ギフティッド」、日本語なしで過ごす「イングリッシュ・キャンプ」など、先進的な施策を推し進めた。「子どもたちの可能性を芽吹かせる場所を、市内にたくさんつくりたかった」。一方で、重大事態を契機に気付かされたのは「狭い世界の中で苦しんでいる子どもたちがいる」という事実だった。

 「学校は子どもたちが輝ける場所。でも本当に、全ての子どもにとってそうだったか」。高校入試に向けて内申点を上げるために学級のリーダーに就いたり、授業で挙手を繰り返すことで評価を得ようとしたりといった競争がストレスを生み、不登校やゲーム依存の一因をつくっていたと省みる。「子どもたちが学校の都合に合わせていただけで、同調圧力や過剰適応を強いていたことに目が向いていなかった」。悩みを相談しようにも、先生たちは忙しい。重大事態でも、同級生から助けを求めるメモが担任に渡されるなど学校現場は前兆をつかみながら、何も動かなかった。「学校から男子生徒の両親に一本、電話で状況を伝えることができていたら」

 いじめは人の生き方や有りように直結する問題だと感じている。「誰もが遭遇し得ることだからこそ、多くの人が向き合い、考え続けてほしい。『うちの子は関係ないから』ではない」

岐阜新聞社

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