全国一斉の長期休校、大都市圏では緊急事態宣言下で初の本番を迎えた大学入学共通テスト、一部大学の個別試験中止……と、異例ずくめだった2021年度大学入試。そんな「逆境」の中で合格実績を伸ばしたのは、どの高校だったのでしょうか。大学通信の安田賢治常務が解説します。(とくに断りのない限り、本連載の合格者数は、併願可能な私立大で複数の学部・入試方式での合格者を重複して数える「延べ合格者数」を採用しています)
今年の私立大一般選抜(一般入試)は、延べ志願者数が激減した。昨年比およそ12%減で、下げ幅は戦後最大とみられる。大規模大学も軒並み減っており、私学の雄、早稲田大、慶應義塾大ともに志願者数は前年を下回った。早稲田は3年連続の減少で、1972年以来49年ぶりに志願者が10万人を割り、9万1659人にとどまった。昨年より1万2917人、12.4%の減少だ。慶應も4年連続の志願者減で3万6681人にとどまり、平成以降、最少の志願者数となった。
早稲田は政治経済、国際教養、スポーツ科学の3学部で入試改革を行い、共通テストを受験しないと一般選抜を受けられなくなった。この改革を敬遠して3学部の志願者が大きく減ったことが響いたようだ。
その早慶合計の合格者数トップは、15年連続で開成(東京)の411人だ。早稲田は14年連続、慶應は8年連続の首位だ。学部別合格者数を見ると、早稲田は政治経済、法、基幹理工、先進理工の4学部、慶應は理工学部でトップだった。
2位は昨年より101人も増えた日比谷(東京)の383人、3位は渋谷教育学園幕張(千葉)の351人、4位は浅野(神奈川)の314人、5位は湘南(神奈川)の306人、6位は麻布(東京)の301人で、ここまでが300人超えだ。
東京圏の公立高が躍進、「ローカル化」進む
今年の特徴は公立高の躍進が目立ったことだ。トップ10に日比谷、湘南、横浜翠嵐(神奈川)、浦和・県立(埼玉)の4校が入っているが、昨年の公立高は2校のみだった。自治体ごとに大学進学に力を入れてきた成果とみられる。コロナ禍による地元志向の高まりから、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の公立高が躍進した可能性もありそうだ。
早慶の当初合格者数で見ると、東京圏からの合格者は、早稲田が76.8%で、昨年の73.2%より3.6ポイント増えた。慶應も75.4%で、昨年の73.3%に比べ2.1ポイント増だ。10年前の2011年には、早稲田は66.9%、慶應は65.1%だったから、10年前は3人に2人が東京圏からの合格者だったのが、今は4人に3人に増えている。早慶の「関東ローカル化」が進んでいる。地方からの志願者が減り、地元合格者が増えたということだろう。
東京圏以外の学校のトップは43位の西大和学園(奈良)の133人、次いで54位の東海(愛知)、60位の旭丘(愛知)、67位の土浦第一(茨城)、69位のラ・サール(鹿児島)の順だった。このうち西大和学園、旭丘、ラ・サールは、慶應の合格者数が早稲田を上回っている。東京圏外では慶應人気が高いということかもしれない。
安田賢治 大学通信常務取締役
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