日本は人生の自由度と他者への寛容さが低い
国連が世界149か国・地域を対象に調査し、3月に発表した幸福度ランキングで56位だった日本。前年の62位からランクを上げたものの、なぜこんなに幸せを感じていないのか。日本人がもっと幸せを感じて生きるには、何をどうすればいいのか。4年連続1位になったフィンランドへ留学経験があり、「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」(ポプラ社)などの著書があるフィンランド大使館職員の堀内都喜子さんに聞いた。
【写真】ラウンジやバルコニーも併設! フィンランド大使館にある大使が利用するサウナの実際の写真
国連が発表する幸福度ランキングにはフィンランドをはじめデンマーク(2位)、アイスランド(4位)、ノルウェー(6位)など、北欧諸国が上位を占める。なかでもフィンランドが4年連続1位になった。
「フィンランドは自然が豊かで、安心・安全に暮らせて、ライフワークバランス(仕事や家庭、趣味などのバランス)が良いので満足度が高いのだと思います。いろいろな意味で、平等性、公平性が大事にされていることも大きいと思います。また、新型コロナウイルス感染症の拡大で、より人とのつながりや国への信頼度が高くなったあたりも評価されたようですね」
国連が発表する幸福度ランキングは、1人当たり国内総生産(GDP)、社会保障制度などの社会的支援、健康寿命、人生の自由度、他者への寛容さ、国への信頼度という6つの項目を基にランキング化されている。
「日本は健康寿命が断トツに高いのですが、人生の自由度と他者への寛容さが低いんです。フィンランド人の人生の自由度について考えてみると、たとえば高校から大学へ進学する場合、すぐに進学する人は少なく、一度、社会に出てから大学に進学したり、学校の先生などの専門職で40代前後まで働いたとしても、『ほかに天職があるかも』と考えて全然違う分野を学び直したりしています。こういう例は珍しくなく、個々人が自分の人生を考えて、柔軟に自由に選択しているんです。学校の授業料が基本的に無料なので、自由な選択をしやすくなっています」
日本では2018年、大学受験において浪人生や女子学生を不利に扱う医学部不正入試問題が発覚し大問題となったが、フィンランドではありえないことのようだ。
「フィンランドは個人の権利を大事にしていて、それがおかされてはならない、機会は誰にも平等・公平に与えられなければならない、という考えが強いんです。だから年齢、性別、生まれ育ち、貧富の差にかかわらず、能力があればチャンスは与えられなければならない、と。フィンランドではかつて、学校の先生に女性が圧倒的に多いことが問題視され、大学教育学部の選考にクオータ制を設けて男性が4割以上になるような政策が取られていたことがありました。でも、男女平等法の施行後の1989年にクオータ制は撤廃されました。男女の別ではなく、能力の高い人間がその職についたほうが、結局は国や組織にとって良い、と考えられたからです」
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