あなたの子どもの勉強方法は合っている? チェックシートを使って確認しよう/わが子が勉強するようになる方法 ① – ダ・ヴィンチニュース

花のつくりとはたらき

中学受験を取り巻く社会環境は大きく変化し、今までの受験対策では対応できなくなっています! 偏差値が高くても試験に落ちることも。そこで、「伝説の家庭教師」が、自分の力で生きていける子どもを育てるための、38の実践的なルール・方法の中から抜粋してご紹介します。

『わが子が勉強するようになる方法 2500人以上の子どもを超有名中学に合格させた「伝説の家庭教師」が教える超実践的な38のルール』(西村則康/アスコム)

チェックが一つでも付いた方、子育てのやり方を見直してみませんか。

このままでは、お子さんが勉強を好きになれませんし、近年変化する中学受験に対応できない可能性があります。

また、急速に変化する予測困難な社会で、お子さんは自立して生きていく力を身に付けることができません。

チェック項目の詳細は、本書の中で詳しく解説しています。

本書で紹介する38のルールを実践することで、お子さんが主体的に勉強に取り組み、成績を上げることができます。

はじめに

「地アタマ」のいい子に育てる。そんな言葉がしきりに使われはじめたのは、今から20年ほど前のことです。

「地アタマがいい」の定義にはっきりしたものはなく、あいまいですが、一般的に偏差値だけでは測れない、本質的な能力を持つ人を指す場合によく使われています。

 たとえ一流大学を出ても、今は社会人としての生活が生涯にわたり保証されているわけではありません。まして、未知の疫病である新型コロナウイルスに見舞われた2020年は、将来に対する不安が浮き彫りとなり、一方で「リモート」という新しい働き方、学び方が打ち出された「時代の節目」ともいえる年でした。このように、急変するどんな状況下でも、たくましく社会を生き抜ける力が必要です。それは、人生で訪れるいくつもの荒波を乗り越えて、いえ、時にはその荒波さえも楽しみながら、自らの道を邁進していく力と言い換えてもいいでしょう。

 ですが、たくましく生き抜く力は、イコール「地アタマ」がよければ発揮できるというものではありません。「地アタマ」は生き抜く力の一部分にしかすぎず、そのほかにも多方面からさまざまな能力が求められるのです。

 それらのなかから特に重要なものに注目しました。それは、論理的な思考法や多様な発想法、とっさの判断力、その思考や判断を実現する力です。文部科学省が、『学力の3要素』として、「1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」と定義づけていますが、その中の2つ目、思考力・判断力・表現力にあたるものです。本書では、これらを「3つの力(思考力・判断力・表現力)」と呼んでいます。

 私は集団指導塾の講師や家庭教師として、これまで40年にわたり私立中学の受験指導をしています。家庭教師に転向したのは15年ほど前からですが、これまでに、御三家、灘中など最難関校に合格させてきた生徒の数は2500人以上にのぼります。なかには、受験を決めた小学5年生の段階で、そもそも偏差値が志望校の合格圏にはまったく届いていなかったにもかかわらず、私が指導することで10以上偏差値が伸びて、見事、難関校に合格した子どももいました。

 ところで近年、実感しているのが、私立中学校の受験問題の変化です。

 以前の中学入試というのは、算数も理科も国語も社会も、とにかく学習内容を丸暗記さえすれば合格することができました。算数ですら解法のパターンは少なく、しかも応用の種類も多くはありませんでした。

 しかしこの数年の中学入試では、明らかに子どもが「3つの力」を持っているかどうかを判断するものに変化してきています。つまり、

「あなたは、この問題を解くための知識や道すじを見つけることができますか?」

 という、子どもの思考そのものを問うような試験が増えはじめているのです。

 そうした入試動向に対して、有名塾も入試問題の分析の精度を高めてきました。その結果、新しい解き方がひとつのパターンとして翌年のテキストに載るようになる。そしてまた翌年、新しい解き方が追加される、といういたちごっこがくり返され、テキスト自体がどんどん分厚くなっています。

 必然的に問題数が増えて、子どもは量をこなし、パターンを暗記することだけで精一杯になってしまいます。ところが入試当日に出題された問題は、ちょっとしたことに気づきさえすれば解答できるはずなのに、暗記したパターンから引き出そうとして、むしろ解答できなくなってしまう。また答えられたとしても、所詮暗記の賜物であり、本当の意味での「理解」はしていない。そんな現象が起きています。つまり、入試問題の現場と塾のテキストの乖離が著しくなっているのです。

 ではいったい、どうすれば前述の「3つの力」を持つ子どもに育てられるのでしょうか。

「3つの力」を持つ子どもは、たとえば算数なら、公式の本質そのものを理解しています。そのため今まで解いたことのない問題に出合ったとしても、過去の知識を総動員して、「これには過去に使ったどんなプロセスが利用できそうか」「どれくらいの時間がかかり、どれくらいの手間が必要になりそうか」という予測をします。その「予測」を「実行」に移し、それが正しいかどうかを自ら「チェック」して、正解を導き出していきます。

 このような頭脳の動かし方こそ「3つの力」の特徴です。私は、中学受験のための学習を通じて、この頭脳を獲得してほしい、そして、この学習は「3つの力」をつけるのに、うってつけだと常々発信してきました。

「3つの力」は意識的に訓練しないと身につきません。ただやみくもに長い時間をかけて多量の勉強をすればいいというわけではないのです。

 この「3つの力」は、子どもが成人し、社会に出てからも有用です。前述した「予測→実行→チェック」という一連の流れは、仕事のプロセスとまったく同じですから、「3つの力」の持ち主が社会人になると、目の前にある物事や課題からいくつかの必要な要素を抜き出して、単純化されたモデルのなかで思考を進めていくことができます。

 それは最短最速で、最高の結果を出すことのできる能力です。努力はしているのに結果が出ない、またはやる気そのものが湧いてこないという社会人像とはまったく対極にあります。

 さらに「3つの力」を持っていれば、自らの人生を、実のともなうすばらしいものにデザインすることも可能です。人生の目標を設定し、そこに向かうためのプロセス管理をして、自らの望みを見事に叶えることができる。なぜなら、人生設計というのもまた「予測→実行→チェック」の連続だからです。

 21世紀の社会は複雑で、原因と結果がストレートに結びつくことはほとんどありません。現代においては、複雑にからみ合った出来事を自分なりの視点でひもとき、未来を自分なりに理解できる「3つの力」が不可欠だと言えるでしょう。そしてそれは、現代の実力社会を生き抜く力そのものと言っても過言ではありません。

 働き方改革やコロナ禍による生活様式の変化、スマホやSNSの普及、そして入試問題の変化と、世の中は急速に変化しています。いま時代の子育てに、さらに即したものとなるよう、以前に執筆した『御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える頭のいい子の育て方』(2013年発行)を改題し、再編集(一部加筆・修正)したのが本書です。

 この本では、子どもたちの「3つの力」を育むための秘訣や具体例をたくさん挙げました。子どもの将来の幸福を願う親御さんの一人でも多くの方に、実践してほしいと願ってやみません。

西村則康

<第2回に続く>

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