多くの自治体でGIGAスクール構想による端末整備が完了し、本格活用が始まる新年度を前に、東京都の八王子市立第七中学校(三田村裕校長、生徒498人)ではこのほど、教員らが校内研修を行った。生徒に配布される予定の端末「クロームブック」を実際に操作しながら、グーグルの授業支援ツール「クラスルーム」で、課題や小テストへの回答にトライした。

仮想の「クラス」で生徒役に
クロームブックの機能を説明する竹川教諭

卒業式が終わり、1、2年生は午前授業となった3月23日の午後。春風が吹き込む八王子市立第七中学校の職員室には、端末を手にした教員が集まっていた。GIGAスクール構想で整備された1人1台端末が3月上旬に学校に届き、生徒への配布が始まる新年度を前に、基本的な機能や使い方を確認するための校内研修会が開かれたのだ。

研修の指揮を執ったのは技術科の竹川理貴(りき)教諭。GIGAスクール端末に関する研修は今回が初めてで、その目的は「どういうことができるのか、イメージを持ってもらうことだ」と話す。

同中で生徒に配布する端末はクロームブックだが、教員用端末はウィンドウズのタブレット。さらに、教員が校務用に使っているのはウィンドウズのパソコンで、学校には合わせて3種類の端末がある。

この日の研修に使用したのは、生徒用のクロームブックだった。竹川教諭は「今後、教員は生徒用の画面を見る機会が少なくなるが、どのように進むかを把握していれば、操作が理解しやすくなる」と、その意図を説明する。

研修の冒頭で竹川教諭が強調したのは、「必ず授業で使えというものではない」「鉛筆やハサミのように使えるようにしておくことによって、できることや、やれることが増えるという観点が大事」「生徒の理解が深まり、より深い学びになるために活用できる場面で活用する」の3点だ。

職員室に設置された2つのスクリーンには、それぞれグーグルの授業支援ツール「クラスルーム」の教員用画面と、生徒用画面が映し出された。研修では教員らで仮想の「クラス」を作成し、竹川教諭が教員役になって教員用画面を、他の教員が生徒役になって生徒用画面を操作する形で進んだ。

生徒用のクロームブックは、同中の教員が通常使っているパソコンとはキーボードの配列などが異なる。また、クラウドを基本としているためソフトではなく、ウェブブラウザのタブを切り替えて「クラスルーム」の機能を使う必要がある。こうした違いに当初、教員らには戸惑う様子も見られた。

竹川教諭はこうした教員の状況を踏まえ、基本的な使い方からスタート。まずはクラスルーム上に「俳句を一つ作りなさい」という課題をアップした。「こうして共有すれば、(教室の後方の生徒からの)『先生、見えません』がなくなります」。間もなく各教員の生徒用画面にこの課題が反映され、教員らは文書作成ツール「ドキュメント」を使って課題を作成。提出された俳句は、前方のスクリーンに映して共有した。

「提出された課題は、採点してコメントを付け、返却することができます。提出状況がデータとして残るので、『出したはずなのに見当たらない』ということもなくなる。先生方が自宅に端末を持ち帰れば、紙のプリントを持って帰ることなく採点ができます」。竹川教諭の説明に、教員たちからは「へぇ」「すごい」と声が上がった。

進めながらルールを改善
若手教員がベテラン教員に使い方を教える場面も

研修ではほかにも、アンケート作成ツール「フォーム」を使った小テストや、ウェブ会議ができる「ミート」にチャレンジ。研修に出席した英語科の小柳恵美子主任教諭は「英作文の添削ができそう」、保健体育科の阿部哲也主幹教諭は「フォームの小テストは実際に使えそう。実技では録画の機能も使いたい」と話した。

鈴木啓太副校長は「教員にはとっつきやすかったのではないか」と話す。同中は今年度、学級通信や通知表の所見をなくすなど、校務の精選をはじめとした働き方改革を集中的に進めてきた。「『この機能を使えば、採点や小テストがこれだけ楽になる』という発想で、働き方改革の延長線上に今回の研修を位置付けることができた」と評価した。

同校では併せて、昨年から新型コロナウイルスの感染拡大に備え、マイクロソフトのウェブ会議ツール「チームズ」を使った遠隔授業の準備を進めていた。ツールの種類こそ違うものの、こうした経験によって教員がICTの意義を理解し、活用に向けた一歩を踏みだす素地ができていたという。

当面の課題は、端末の使い方のルールなどを決めていくことだ。「正直、どこでトラブルが起きるか、全ては想定できていない。端末の活用を進める中で、使いにくい部分を共有していき、進めながら改善していくことになる」と竹川教諭はみる。

例えば「授業中にも端末を使っていろいろ(インターネット上で)検索できるが、これは授業改善に役立つ一方で、悪い方向に使うケースもないとは言い切れず、生活指導部などの連携も必要。学校での運用規定を考える上では、セキュリティーの管理に重点を置きつつ、その中で生徒の活用のしやすさ、教員へのメリットを合わせて考えていくことになる」と、活用に向けた方向性を説明する。

「新型コロナウイルス、働き方改革、そしてGIGAスクール構想という時代の流れの中で、教員たちは前向きに取り組んできたと思う」と鈴木副校長は振り返る。同中は5月の連休明けをめどに、生徒が端末を自宅に持ち帰り、家庭学習に活用できるようにすることも検討しており、1人1台端末の本格的な活用に向けた態勢作りを急ピッチで進めている。

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