茨城県立高校の入試で採点ミスが相次いで見つかった問題で、県教育委員会は30日、昨年度の採点でも58校で457件のミスがあったと発表した。県立中学・中等教育学校の適性検査でも、今年度までの2年間で計35件のミスが判明。昨年度の検査では、本来合格とすべき1人を不合格にしていたこともわかった。
今年度の高校入試でも、新たに88件のミスが判明した。小泉元伸教育長はこの日会見を開き、「児童、生徒の将来を左右しかねない重大な場面でのミスで、誠に遺憾」と頭を下げた。
牛久栄進高を不合格とされた受験生の保護者からの開示請求を契機に採点ミスが相次いで発覚したのを受け、県教委は全ての県立高校と中学・中等教育学校に過去2年分の答案の再点検を指示していた。
中学・中等教育学校の検査では、今年度が7校で21件、昨年度が5校で14件の採点ミスがわかった。
このうち、合否の誤りが判明したのは、並木中等教育学校(つくば市)の昨年度の検査。算数や理科の知識を問う「適性検査Ⅰ」(100点満点)で、余白に手書きされた「8」の部分点を、合算する際に「0」と見誤っていた。ミスがなければ、全体の順位が10~20人分繰り上がっていたという。生徒は現在、市町村立の中学に通っている。県教委は29日に生徒側に謝罪し、希望すれば転学できると説明した。
昨年度の高校入試では、58校で457件の採点ミスが判明。ミスは5教科全てにわたり、最も多かった下妻二では59件が見つかった。県教委は、いずれも合否に影響はなかったと説明している。また、今年3月末まで保管することになっていた答案を、11校が誤って廃棄しており、再点検ができなかったことも明らかにした。
小泉教育長は「現場の意識だけでなく、構造的な問題もある」と説明。県教委は4月に第三者委員会を立ち上げて検証を始め、同月内に再発防止マニュアルを公表する方針。(久保田一道)
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茨城県の高校入試で相次いだ採点ミス問題を受け、県高校教職員組合は29日、県教委に要求書を出した。
書面では、問題の背景について「長時間に及ぶ採点業務に対して県教委の指導もなく放置されていた」と指摘。採点に費やす日数を増やすことや、勤務時間を超えて採点業務をしないよう徹底することを求めた。
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「起こるべくして起こった」。ある県立高校の男性ベテラン教員は、現場への過剰な負担が一連の採点ミスを引き起こした最大の要因だと指摘する。自身が勤務する高校でも、合否に影響はなかったものの、5件以上のミスが見つかった。
この高校では、1日で採点を終わらせることになっていた。当日は午前9時から採点を開始。正誤と配点それぞれに、3人ひと組でチェックを繰り返す態勢だ。昼休みのほかは、短時間の休憩を除いて午後11時まで作業が続いた。
最終確認にあたる3人目の教員がチェックした段階でも間違いが見つかることが多く、同僚と「まだ見逃しているミスも絶対にあるよね」と言い合ったという。「集中力も限界に近く、時間も遅くなっていた。もう一度チェックしようとはならなかった」
採点が長時間に及ぶ要因として男性が指摘するのが、記述式で答える設問が増える近年の傾向だ。今年は社会の記述式が大幅に増えた。記号問題が中心だった数年前と比べ、採点には2倍以上の時間がかかったという。県教委によると、もともと記述の多い国語のミスが最多で、次に多いのが社会だという。男性は「書かせることは大切だが、教員の負担につながっているのは間違いない」と指摘する。
もともと年度末は、新年度の時間割を組んだり、指導案を作ったりと、1年でも一番忙しい時期。男性の高校では、多くの教員が休日を犠牲にして対応しているという。「1~2日でミス無く採点するなんて不可能。外部委託やマークシートの導入など、現場の声を聞いて改善して欲しい」と訴える。(佐々木凌)
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