2022年度から高校の保健体育の授業で「精神保健」が教えられることになった。学習指導要領の改訂により約40年ぶりに復活することになる。なぜ子どもたちに、心の健康や精神疾患を教育する必要があるのか。学習指導要領改訂に携わった精神科医で、東邦大学教授の水野雅文医師に聞いた。
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――2022年度から、高校の保健体育の学習指導要領に「精神疾患」にかかわる項目が入るそうですね。
そうです。まず、学習指導要領というのは、全国どこの学校でも一定の教育水準が保てるように文部科学省が設けている「教育課程(カリキュラム)の基準」です。小学校から高校まで、それぞれの教科の目標や大まかな教育内容を定めていて、子どもたちの教科書や時間割は、これを基に作られているんですね。
学習指導要領の内容はおよそ10年に1度、社会情勢の変化などに応じて改訂されています。これまでには、小学校で英語教育を新たに始めるとか、中学校の体育でダンスが必修になるなどさまざまな改訂が行われてきた中、最新の改訂で2022年4月から高校の学習指導要領に「精神疾患の予防と回復」が盛り込まれることが決まりました。
実は学習指導要領に精神疾患にかかわる項目が収載されるのは今回が初めてではなく、40年ぶりの再登場になります。
――40年前にはあったのに、一度消えて、また復活。どうしてでしょうか?
授業時間には限りがあります。40年前は教えるべきことが増えていく中で、相対的に優先度が落ちていったというのが、一番の理由でしょう。その後しばらく、学習指導要領に採用されるところまでは優先順位が上がらなかった。しかし近年は子どもにかぎらず心の病気になる人が増え、職場でストレスチェックが導入されるなど、精神疾患はひとごとではなくなってきています。
さらに精神疾患の約75%は20代前半までに発症するため、若い人たちにとってより切実な問題で、ぜひとも知っておいてもらう必要がある。
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