【茨城新聞】ICTで変わる体育の授業 茨城県内各地で模索続く 動画で理解深化、通信環境整備に課題も – 茨城新聞

基本問題

2021年2月9日(火)

ICTで変わる体育の授業 茨城県内各地で模索続く 動画で理解深化、通信環境整備に課題も

タブレット端末でクラスメートの試合の様子を撮影する児童=鹿嶋市鉢形台の市立鉢形小

学校の体育授業がICT(情報通信技術)導入で大きく変わろうとしている。これまで教員が口頭で指導したり、児童生徒間の話し合いで改善したりしていた実技が、タブレット端末による撮影で改善点が一目瞭然になるためだ。動画データを繰り返し視聴できることで理解深化も期待されており、茨城県内各地でICTを活用した体育授業の模索が続いている。

国の実践研究協力校となっている鹿嶋市立鉢形小(塙保彦校長)で1月に行われた研究授業。5年生約40人が、体育館でバスケットボールのミニゲームに取り組んだ。館内には、グループごとに配備したタブレット端末12台に加え、教員用パソコンや大画面モニターも設置された。

館内いっぱいに広がった児童たちは、自ら撮影したゲームの動画を確認しながら、どうすればゴールを決められるかを議論。「パスしたらすぐに動く」などの意見を端末に記入して発表したり、改善点を意識しながら次戦に臨んだりした。

この日は、数人が1台の端末を共有して学ぶ「協働学習」。鹿嶋市教育委員会の神宮司剛指導主事は授業終了後、「端末が1人1台になる前段として最適な授業では」と評価した。

■撮影後、すぐ再生


1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、学校のICT化を進める「GIGAスクール構想」。動画が体育授業にもたらす効果に、教員の期待も高まる。

「撮影した動画をすぐに再生し、見本との違いを確認できるのがいい」。県教委の研究推進指定校となっている龍ケ崎市立城ノ内中(小林孝太郎校長)。保健体育を受け持つ風間亮教諭はそう語り、動画導入の利点を強調する。

これまでの体育授業は、チームティーチングなどで補完されてきたものの、教員から生徒個人へ指導できる回数は限られていた。端末の1人1台配備によって、児童生徒は見本と自身の動画を見比べたり、技能向上の過程を確認したりできるようになるため、個人学習の充実や意欲向上が期待されている。

同中によると、これまで発言の少なかった生徒が、端末を使うグループ学習を通して自分の意見を出すようになるなど、意識の変化も表れたという。

■アナログも併用


動画導入で進化が期待される体育授業だが、単元ごとに授業の場所が変わるという特有の課題も抱える。

主に教室で実施される国語や数学などと違い、体育は運動場や体育館、プール、武道場など実施場所はさまざま。県内では、土浦やひたちなか、鹿嶋など多くの市町村教委が、小中学校の体育館にネットワーク環境を整備する予定だが、運動場へのネットワーク環境整備は今後の課題。運動場では当面、オフラインで使える端末機能とホワイトボードなどアナログ器材を併用した授業になる見通しだ。

また、体育授業では一定の運動量を確保する必要もあり、教員にはICT活用と両立させるために授業ごとのマネジメント能力が求められそうだ。

スポーツ庁政策課の塩見英樹教科調査官は、通信環境整備の必要性を訴える一方、児童生徒の運動量確保のために「(端末は)活動そのものの低下を招かないように留意すべき」と指摘する。

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