教員の働き方改革の一環として、外部指導者による部活動の指導が全国的に進んでいる。埼玉県内では、戸田市が指導料を全額負担して民間企業にコーチ派遣を一括委託し、生徒から「来年度も来てほしい」と好評を得ている。人材確保や費用負担など課題はあるが、県教育委員会も外部指導を広める方向で市町村教委への働きかけを進める方針という。
保護者から「部活動負担が重く、勉強や家族の時間がなくなる」との声が上がっていた戸田市は、短時間で高い質の部活指導を実現するため、2019年度に全国約2600カ所でスポーツ教室を運営するリーフラス(東京都港区)に人材確保を委託した。
20年度は市内の中学校6校中3校の計6部がコーチ派遣を受ける。新曽中には、女子ソフトテニス部、男子バスケットボール部、陸上部にスポーツ教室での指導経験豊富な同社のコーチが派遣されている。女子ソフトテニス部の鈴木麻鉱部長(2年)は「これまでの練習は同じことの繰り返しだった。今はサーブの練習にしても、打ち方やトスの上げ方など毎日メニューが違う。成長を実感できて楽しい」と話す。
戸田市の場合、教員の働き方改革が主な目的ではなかったため顧問の同席も必要だが、指導案作成や技術指導などはコーチが担う。リーフラスは単独での指導・引率について「(市町村に)保険会社と登下校時なども含めた包括的な契約をしてもらえれば可能」としている。
課題は指導料の負担だ。戸田市では六つの部活動で週2~3日、計約630時間をコーチが指導する予定で、1時間あたり5000円を同社に支払う。年間の予算は計約500万円に上る。
一方で、文部科学省が規則で定める「部活動指導員」の場合、指導料は国と県が3分の1ずつ負担する。ただし学校が自ら指導員を確保しなければならず、人材集めが容易ではない。県教育委員会によると、20年度は当初、市町村教委から計217人の指導員採用の希望があり、最終的に108人分が予算化されたが、実際に任用されるのは73人(運動部64人、文化部9人)にとどまる見込みだ。
県教委保健体育課の担当者は「部活動指導員は教員の働き方改革につながるので、増やす方向で市町村教委へ適切に働きかけていきたい」と話す。
一方、部活動指導員は時給の上限を国が1600円と定めていることもあり、定年退職した元教員が多い。日本部活動学会初代会長の長沼豊・学習院大教授(教科外教育)は「部活動指導員は有益な仕組みだが、勤務時間が短いため高齢者と大学生が多くなっている。午前中は体育の授業をサポートするような雇用形態も考えられるのではないか」と提言。戸田市のような民間企業への委託については「工夫の一つ。学校教育や子供の心理への理解など、指導者の質が担保されるのであれば良いのではないか」と話している。【山越峰一郎】
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