教員の長時間労働の軽減策の一つとして、「部活動指導員」の導入が佐賀県内で進んでいる。外部の人材が中学や高校の部活で顧問を務める仕組みで、2020年度初めには15市町の中学校で47人が採用されている。ただ、勤務時間の融通が利く担い手は限られ、人材確保のハードルは高い。
週末、佐賀市の城北中の教室に伸びやかな歌声が響いた。指揮者は市内の百武清昭さん(62)。音楽教諭の経験があり、週3回ほど合唱部の部活動指導員を務めている。合唱は専門的な指導者が限られているため「部活動の存続にも関わる」と百武さん。3年生の担任で顧問の久富杏子さん(33)は「放課後は会議で部活をみることができない日もある。非常に助かっている」と話す。
部活動指導員は教員の負担軽減策として、17年4月に文科省が制度化した。以前の外部指導者は、顧問の教員と一緒に指導や引率をしなければならなかったが、部活動指導員は単独での指導や大会引率が可能になった。勤務は週6時間で年間35週を想定し、報酬(1時間1600円)や交通費が支給される。国、県、市町がそれぞれ3分の1ずつ事業費を負担し、県は20年度当初予算には1031万5千円を計上した。
県内では18年度から運用が始まった。県保健体育課によると、国の補助が中学校だけにとどまることなどから、任用先は全て中学校になっている。指導員は18年度が12市町で28人、19年度が15市町で49人、20年度当初は15市町で47人だった。20年度の内訳は企業などの退職者が15人、会社員8人、自営業7人、元教員4人などとなっている。
多くの市町で導入が進む一方、人材の確保に頭を悩ませている自治体もある。伊万里市では運用開始以来、指導員を確保できていない。運用したくても「条件に合う適任者が見つからない」という。県保健体育課も「会社員や公務員の誰もが仕事後にできるかというと、時間的に難しい。元教員や時間の融通が利く自営業の人など、担える人は限られる」と説明する。
部活動指導員の取り組みに続き、文科省は新たに23年度以降、公立中高の休日の部活動を地域や民間団体に委託する「地域部活動」の方針をまとめている。県教委は21年度、地域部活動のモデル校を設置する市町との調整を進めている。ただ、県保健体育課は「部活動指導員の確保が困難な中、地域部活動の人材確保が難しい市町も出てくるだろう。現在の部活動指導員の人たちなどが、うまく移行できればいいが」と話す。
顧問として活動する指導員は、大会などに合わせて休日の対応も求められる。別の指導員からは「時間は不規則。好きでなければできない」という声も上がる。現職教員の負担軽減を目指す施策だが、指導員の熱意で成り立っている側面も垣間見える。(岩本大志)
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