高価格帯の炊飯器や、オール電化の住宅に導入されるクッキングヒーター(電気コンロ)の多くは、「IH(アイエイチ)」方式を採用しています。
「IH」って一体何なのでしょうか?(写真は山善のIHクッキングヒーター「YEN-S140」)
そもそも、「IH」とは一体何なのでしょうか。一般的な電気を使うヒーター(熱源)とは何が違うのでしょうか。
IH=Induction Heating(電磁誘導加熱)
IHは「Induction Heating」の略で、日本語に訳すと「電磁誘導加熱」という意味になります。
「電磁誘導」は、金属の近くで磁石を動かすことで電気が生じる現象のことを言います。中学校の理科の授業では「銅線で作ったコイルで棒磁石を出し入れして電気が発生する」という形で習ったと思います。
電磁誘導は「磁石を動かすことで電気が発生する現象」として学習したと思います(出典:関西電力)
この時に生じた電流のことを「渦電流(うずでんりゅう)」と言います。渦電流を発生している金属には、熱が生じます。IH方式の炊飯器やクッキングヒーターは、この仕組みを活用して、温める対象物(釜、鍋やフライパン)との間に渦電流を発生させることで、対象物を直接発熱させて温めます。
電熱線(ヒーター)を炊飯器やクッキングヒーターは、電気を使うこと自体は同じですが、発熱するのは対象物ではなく電熱線です。対象物は間接的に温められることになります。
IH方式の炊飯器やクッキングヒーターは、電磁誘導により対象物(釜、鍋やフライパン)を直接加熱します(出典:TDK)
IH方式のメリット
IH方式の炊飯器やクッキングヒーターのメリットは、何よりも温めるべきものを直接温めるので効率が良いことにあります。電熱線を使う炊飯器やクッキングヒーター、ガス式の炊飯器やコンロとは異なり、周囲の温度が上がりにくいことも特徴です。
クッキングヒーターに絞って話をすると、基本的に表面はガラス素材なので、吹きこぼれや飛び散りがあった場合でもすぐにふき取れれます。
IH方式では温めるべきものを直接温めるので、電熱線やガスを使う調理機器と比べると無駄が少ないとされています(出典:象印マホービン)
IH方式のクッキングヒーターは、手入れが楽なのもメリットです(出典:パナソニック)
また、特にガス式のものと比べた際のメリットとして、炎が出ないので火事のリスクを極小化できます。ただしゼロになることは決してありませんので、そこだけは注意してください。
IH方式のデメリット
一方、IH方式の炊飯器やクッキングヒーターにはデメリットもあります。特に、クッキングヒーターではそれが大きく出てしまう傾向にあります。
まず原理上、非金属の鍋やフライパンは原則として利用できません。また、金属素材の鍋やフライパンでも、サイズや形状によってはIHクッキングヒーターでは使えなかったり、使えても効率良く熱を加えられなかったりします。
IHクッキングヒーターで使う鍋やフライパンは、「IH調理器対応」をうたっているものを選ぶようにしましょう。
IHクッキングヒーターに組み合わせる調理器具は、IH対応をうたうものにしましょう
また、IH方式の炊飯器やクッキングヒーターは、不快な音が出てしまうことがあります。
先述の通り、IH方式の調理器は電磁誘導で生じる渦電流によって対象物を温めます。そのため、対象物によっては共振が発生し、甲高い音が生じてしまうのです。ただし、重量のある鍋やフライパンを使ったり、置く位置を工夫したりすることで、共振は抑制できます。
停電した場合に一切使えなくなることも注意が必要です。災害時などに備えて、カセットボンベ式のガスコンロを用意しておくと良いでしょう。
災害などによる停電時は、電気を使う調理機器は一切使えなくなります。カセットボンベ式のガスコンロを用意しておくと、万が一の時に便利です(画像は岩谷産業の「カセットフー CB-AS-1」)
IH方式の調理器具のおすすめは?
IH方式の炊飯器やクッキングヒーターの中で、手頃なもの(≒入門用途におすすめのもの)を幾つか紹介します。
SR-KT069(パナソニック)
パナソニックの3.5合炊きのIH式電気炊飯器です。ボディーカラーはブラックとホワイトの2つで、税込み実売価格は1万5000円程度です。
タッチキーとガラスパネルを使ったデザイン重視のモデルですが、2段IH機構を備え、備長炭釜を内釜として採用するなど、炊き上げ具合にもこだわっています。玄米コースは従来モデルよりも時短で炊き上げるように工夫しています。
1〜2人暮らしでの利用にピッタリです。
極め炊き NP-VZ10/VZ18(象印マホービン)
象印マホービンの5.5合炊き(VZ10)、10合炊き(VZ18)のIH式電気炊飯器です。ボディーカラーはブラウンで、税込みの実売価格は5.5合炊きモデルが1万4000円前後、10合炊きモデルが1万7000円前後です。
IH方式の炊飯器としては比較的手頃な価格ですが、ご飯の甘みを引き立てる「熟成炊き」や30時間までおいしさを維持して保温できる「うるつや保温」など、ご飯をおいしく食べられる機能を備えています。健康米メニューやパンメニューも備えています。
5.5合炊きは3〜5人暮らしの家庭、10合炊きは6人以上で暮らす家族での利用におすすめです。
IHK-T38(アイリスオーヤマ)
アイリスオーヤマの1口タイプのIHクッキングヒーターです。ボディーカラーはブラック、ホワイト、ピンク、ブラウンの4つから選べます。税込みの実売価格は5000円弱です。
最大消費電力は1000Wで、そこそこ強力です。火力は5段階から調整できる他、揚げ物を調理する際は油温ベースの調整も可能です。コンパクトなので、テーブルで鍋などを囲んで調理するといった使い方もできます。
YEM-W1456(山善)
山善の2口タイプのIHクッキングヒーターです。税込みの実売価格は1万2000円前後です。
2口タイプでありながらも交流100V電源で動作するので、自宅のキッチンに置いて使うこともできます。別売の「専用調理台」を用意すれば、ガスコンロと同じくらいの高さにすることもできます。最大消費電力は1400W(2口合計)です。
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