中学、高校の部活動について、福井県教委は2021年度、休日の活動を地域や民間団体の運営に移行するモデル校を設ける。教員の働き方改革の一環だが、指導者の確保や指導の一貫性、費用負担の在り方など課題は多い。学校現場は、負担軽減につながるかどうか行方を注視している。
■時間外勤務の4割
県内中学職員の時間外勤務のうち約4割を部活動が占めるとされる。長時間労働の解消に向け県教委は3月に策定した県スポーツ推進計画で、地域のスポーツクラブなどに移行検討を進めるとの方向性を示した。杉本達治知事は9月、文部科学省への重点要望で、部活動を学校教育活動外に位置付けるよう求めた。
モデル校の設置は、文科省が9月に示した改革方針に基づく取り組み。21年度は各都道府県の実施拠点2カ所で実践研究を行い、23年度以降の段階的な地域移行を目指すとしている。豊北欽一県教育長は9月県会で「一部の学校や地域でモデル的に受け皿づくりを進め、段階的に拡大していきたい」と答弁した。
■人間的な成長の場
受け皿団体に関し、県保健体育課は「中学校にある部活動と同じ競技を、その地域のスポーツクラブが指導しているケースはほとんどない」と指摘する。住民主体で運営される県内27の総合型地域スポーツクラブが候補になり得るが、「大会を目指す中高生を受け持つことができる指導者がどれだけいるかは不明」という。
「部活動は勝つことだけが目的ではなく、人間的な成長の場。学業との両立にも配慮が必要で、学校の内情が分からない人に任せられるのだろうか」。県内高校で運動部の監督を務める教諭は疑問を呈す。平日は教員、休日は地域団体と、指導者が変わることにも「指導の一貫性が保てなくなって生徒が戸惑うのでは」と指摘した。
■手当と変わらない
文科省は休日の指導も希望する教員は、兼職や兼業の許可を校長らに得た上で地域指導者の立場で従事可能とした。労働時間管理や割増賃金の支払いは今後、考え方を整理するとしている。
県教委は今夏、教員アンケートを実施。部活動の地域移行後も指導者として関わることに対し、回答があった教員941人のうち331人が前向きな姿勢を示した。一方、ある学校関係者は「超過勤務の教員に手当を出すのと変わらない」と話すなど、働き方改革につながる道筋は明確になっていない。
県教委は、年度内に示される国の考え方などを確認した上で、市町教委などと協議に入る方針。県内の中学校長は「部活動の指導に情熱を持った教員にも配慮した上で、負担が軽減される制度になるかどうか。内容を確認するまでは、教員たちに期待させるようなことは言えない」と慎重な構えを見せた。
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【教員の働き方改革と部活動】
県教委は2019年2月に県学校業務改善方針を策定。過労死ラインとされる月80時間以上の残業をする公立校教員を、21年度までにゼロにする目標を掲げた。合わせて策定した「部活動の在り方に関する方針」では、複数で指導できるように中学校の部活動数を教員数のおおむね2分の1に減らすなど、指導体制の見直しや活動時間の適正化を盛り込んでいる。
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