少人数学級ぜひ/228議会が意見書 国に要求 – しんぶん赤旗

花のつくりとはたらき


2020年10月17日(土)

228議会が意見書 国に要求

 国に少人数学級の実現を求める地方議会の意見書が、少なくとも228自治体で採択されていることが本紙の調べでわかりました。北海道、岩手、山梨、和歌山、鹿児島の1道4県の議会も含まれます。県庁所在地・政令指定都市では札幌、金沢、甲府、名古屋、松江、福岡、北九州の各市議会であがっています。(染矢ゆう子、堤由紀子)


 鹿児島県議会は委員会が発議した「安心安全な教育環境のための少人数学級を求める意見書」を全会一致で採択しました。

 新日本婦人の会鹿児島県本部が、県内の教育委員会にアンケートを実施。安全で豊かな学びを保障するために至急必要なことは、20~30人以下の少人数学級だと7教委が回答しました。同本部は県議会にはたらきかけるだけでなく、12自治体に「国の責任による『20人学級』を展望した少人数学級の前進を求める意見書」の採択を求める請願や陳情を提出。4市1町で採択されました。

 同県本部教育部長の樋之口里花さん(49)は「保護者の願いが届いた。今、国を動かさないと、と思います」と話します。

 北海道議会は2日の本会議で、「少人数学級の拡充を求める意見書」を全会一致で可決しました。原案を日本共産党議員団が作成。政策審議協議会での調整をへて、可決に至りました。

 「今議会では、各会派から少人数学級を求める質問が相次いだんです」。共産党の真下紀子道議はこう振り返ります。「コロナ禍で、少人数学級への要望は非常に強いものがあった。文部科学省も自民党も少人数学級の必要性を認めていたので、議員団は全会一致でとの強い決意でのぞみました」

50人超える教室も

一人ひとりに目が届く学級に

■鹿児島県では

 鹿児島県では、国の基準と同じで小学3年生から40人学級です。

 公立小中学校に特別支援学級があり、同学級の児童生徒の大半は国語と算数の時間以外は「交流学級」で過ごします。「交流学級」は50人を超えることもあります。

 新日本婦人の会鹿児島支部の萩原浩子さん(45)の小3、小4の子どものクラスは、それぞれ43人と44人です。

 小4の子どもは特別支援学級に在籍していますが、朝の会や理科、社会などの教科、給食、掃除、帰りの会まで「交流学級」で1日の大半を過ごします。「支援学級の子どものなかには、人が近くにいることで緊張する子もいます。隣の子と20センチも離れていない教室で1日を過ごすのは、大きな負担です」と萩原さんはいいます。

 「実態として40人学級でさえありません。支援が必要な子どもが多いほど、目が届かないしくみなのもおかしい。国の責任で少人数学級にして、日本のどこでも、個性に合わせた教育が受けられるようにしてほしい」

 同支部の木下加奈さん(36)には小1と小4の子どもがいます。「クラスの人数が多くて、わからないところがあってもどんどん授業が進みます。具合が悪くても、高い熱がなければ学校は休めません。せめて子どものペースに合った授業にしてほしい」と願っています。

 鹿児島市議会にも請願を提出。木下さんが趣旨を説明しましたが、否決されました。県議会が国に意見書をあげたことを受けて、同市教委との懇談を10月末に予定しています。「国に要望が届くのはすごくうれしい。市教委にも子どもによりそう姿勢になるよう要望していきたい」(木下さん)

 全会一致で採択された意見書について、樋之口さんは「ほぼ私たちの要望が全部入りました」と喜びます。本会議後に議員にあいさつに行くと自民党議員が口々に「50人を超えるクラスがあると聞いていて、何とかせんといかんと思っていた」「いいタイミングでした」と話しました。

■新潟県では

 新潟県では新潟県教職員組合は30人以下学級、新日本婦人の会新潟県本部は20人学級を求めてそれぞれ請願を提出。12市議会が少人数学級実現を求める意見書の請願・陳情を採択しました。

 同県では小学1、2年は32人、3年生から35人と国の基準より手厚い学級編成にしています。しかし、小学5年生以上は「1クラス25人以上」の下限設定があり、35人以上の学級がある学校もあります。

 新婦人の各支部では、学校アンケートや学校訪問を実施。分散登校を経験した教員から「20人だとノートが全部見られた。全員の顔が見られて、全員に声がかけられる」という声を聞いてきました。

 三条市にある二つの支部は、合同で事前に35人以上の学級がある学校を調べ、38人の学級がある同市の小学校を訪問。校長先生から「机が置けなくて大変」という実態を聞きました。

 現場の声をもとに新婦人が提出した請願は、三条市を含む4市で採択されました。棚橋尚子事務局長は「一人ひとりに目が届く20人程度の少人数学級のよさをすべての子どもたちに届けたい」と話しています。

北海道議会で全会一致

変形労働制・コロナ禍 粘り強い運動



(写真)「ゆきとどいた教育をすすめる西いぶり連絡会」による街頭署名=10日、登別市

 北海道議会で全会一致で意見書が採択された変化の背景には、市民や保護者、教職員の地道な取り組みがあります。

 「教員の変形労働時間制を許さない運動が、少人数学級を求める取り組みに発展しています」

 こう話すのは、ゆきとどいた教育をすすめる西いぶり連絡会代表の佐茂厚美さん。「西いぶり」は室蘭市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥(そうべつ)町、洞爺湖(とうやこ)町の3市3町です。

「一緒にやれる」

 教員を苦しめる「変形労働時間制」の法律が昨年12月に成立。学習を重ね、意見書採択に向け議会の第1会派への申し入れを続けてきました。

 ある自治体では、若い無所属の議員が「大いによくわかる」と会派を取りまとめ、全会一致で採択。2市1町で意見書があがりました。「さまざまないきさつはあっても、教育問題では一緒にやれると実感しました」(佐茂さん)

 こうした変化が、少人数学級を求める活動への反響にも表れています。

 会では、少人数学級など教育条件改善を求める「ゆきとどいた教育署名」に取り組んでいます。9年目の今年は街頭署名を6回実施。高校生や看護学生も参加しました。

 署名への反応も変わりました。昨年までは年配者が「自分が小中学生のころは、クラスに50人いた。甘えなんじゃないか」と話しながら署名しましたが、「今年はそういう声はない」と佐茂さん。「自分が署名するだけだった人も、集めるために署名用紙を持って行ってくれるようになった。保育所でも職員がみんな署名してくれました」

 昨年から始めた商店街回りも、今年は規模を拡大。署名用紙を置かせてくれる店も増えました。

 現在、道教育委員会は、40人学級の維持を前提にして、高校のクラス数を減らす「間口減」を迫っています。「少人数学級にすれば、間口減は必要ありません。このコロナ禍で40人学級のままはひどい」と要請文と声明文を、胆振教育局の局長に提出。室蘭市教委にも出しました。その後、室蘭市の意見交換会の傍聴にも呼ばれ、道教委でも発言をしています。

 「国は30人学級を10年かけてなどと言いますが、遅すぎます。早期の実現へ、さらに取り組みを強めたいです」

職場にポスター



(写真)「北海道は今年度から3カ年計画で小学校3・4年生に35人以下学級を順次拡大」などの成果も書かれたポスター

 少人数学級の実現は、教職員の多忙化解消にも大きく影響します。釧路管内では、全釧路教職員組合の生権部「多忙化・長時間過密労働解消プロジェクト」(TKプロ)が6月、ポスター「今こそ! 30人以下学級へ」を作成。9月、新たに「ブラックを変える 今すぐにでも20人学級を!」を作り、各職場に広げています。

 政府の教育再生実行会議は9月8日、少人数学級を推進する中間答申をまとめました。「世論とコロナ禍に押されてのことだと教職員に知らせながら、署名をさらに広げようという気持ちをこめました」。こう話すのは、同教組生権部の鈴木健さんです。同プロジェクトは同様のポスターを11号発行、その10号目がこの「20人学級を!」。A4判でモノクロ印刷したチラシも配っています。

 「フリー素材の画像を使い、題名のフレーズや吹き出しのセリフは教職員の思いが表れるものをと検討している」と鈴木さん。『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰作)の吹き出しに「分散登校20人。良かった! 子ども達にも自分達にも」「政府もついに少人数学級を目指し始めた。国民世論と3密を避ける『新しい生活様式』に押されて」と書きました。

 教職員からは「ホント20人にしてほしいよね」「35人でもいいから少なくしてほしい」「40人なんて無理」と声が次々と。「4・5・6年生が40人でびちびち」の学校からは特にこんな声が聞こえてくると言います。

 「いつものシリーズのポスターだと受け止めている職場では、『また組合が動いてくれている』と期待されているようです。組合員はまだ少ないですが『要求の多数派』をつくるために、教職員の思いや要求を形にしたポスターを作りたい。そして少人数学級を必ず早く実現させたいです」

意見書をあげた自治体

北海道 北海道、札幌市、歌志内市、帯広市、伊達市、深川市、名寄市、函館市、留萌市、夕張市、砂川市、士別市、根室市、登別市、石狩市、稚内市、芦別市、富良野市、赤平市、松前町、八雲町、士幌町、江差町、せたな町、足寄町、厚沢部町、比布町、中川町、興部町、標津町、和寒町、津別町、豊頃町、浦河町、美瑛町、下川町、小清水町、知内町、中富良野町、置戸町、清水町、池田町、上士幌町、新得町、浦幌町、新ひだか町、新冠町、上川町、幕別町、芽室町、由仁町、更別村、占冠村、中札内村

岩手県 岩手県、北上市、久慈市、滝沢市、八幡平市、奥州市、二戸市、宮古市、岩手町、雫石町、西和賀町、金ケ崎町、平泉町、住田町、大槌町、洋野町、野田村

宮城県 多賀城市

福島県 須賀川市

埼玉県 富士見市、上尾市、新座市、桶川市、吉川市、松伏町、杉戸町

千葉県 流山市

東京都 中野区、八王子市、国立市、小金井市、調布市

神奈川県 座間市、秦野市、南足柄市、平塚市、綾瀬市、逗子市、伊勢原市、厚木市、中井町、松田町

新潟県 佐渡市、三条市、十日町市、見附市、村上市、新発田市、阿賀野市、上越市、魚沼市、胎内市、妙高市、柏崎市

石川県 金沢市、羽咋市

山梨県 山梨県、甲府市、山梨市、南アルプス市、上野原市、中央市、甲州市、甲斐市、笛吹市、都留市、北杜市、富士吉田市、大月市、韮崎市、身延町、市川三郷町、富士河口湖町、早川町、南部町、昭和町、西桂町、小菅村、山中湖村、鳴沢村、道志村、丹波山村、忍野村

長野県 飯山市、千曲市、中野市、佐久市、須坂市、駒ケ根市、小諸市、塩尻市、伊那市、松本市、佐久穂町、御代田町、立科町、高森町、小海町、上松町、坂城町、池田町、木曽町、箕輪町、小布施町、飯島町、辰野町、山形村、生坂村、川上村、南牧村、小谷村、王滝村、野沢温泉村、泰阜村、喬木村、中川村、南箕輪村、宮田村、下條村、栄村、高山村、木島平村、南相木村

岐阜県 笠松町

愛知県 名古屋市、扶桑町

滋賀県 東近江市

京都府 八幡市

大阪府 枚方市、羽曳野市

兵庫県 西宮市、伊丹市、相生市、芦屋市、赤穂市、川西市、猪名川町

奈良県 川西町、三郷町、広陵町

和歌山県 和歌山県、橋本市、海南市

鳥取県 境港市、倉吉市、湯梨浜町、琴浦町

島根県 松江市、吉賀町

広島県 広島市、呉市、大竹市、尾道市、庄原市

高知県 香美市、いの町

福岡県 福岡市、北九州市、古賀市、朝倉市、筑前町、広川町、東峰村

大分県 宇佐市、九重町、玖珠町

宮崎県 国富町

鹿児島県 鹿児島県、志布志市、伊佐市、曽於市、出水市、東串良町

沖縄県 糸満市

(参議院請願課提供資料、全国市議会議長会意見書ボックス、本紙報道等から作成、15日現在)



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