同志社香里中学・高校ダンス部顧問 東久保 愛美さん [Voice(ボイス)] – 大阪日日新聞 – 大阪日日新聞

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Voice(ボイス)

 大阪を舞台に活躍している“旬な人物”にスポットを当てた大型インタビュー企画「Voice」。それぞれが抱く思いとは。今後の大阪や次世代へ贈るメッセージを語っていただく。

本気でぶつかった 自主性促し全国制覇

 高校ダンス部日本一を争った今夏の「第13回日本高校ダンス部選手権(スーパーカップダンススタジアム)」で、同志社香里(寝屋川市)が2年ぶり6回目の優勝を果たした。最多優勝を誇る道のりで注目すべきは、生徒の主体性にある。自分たちで楽曲を選び、振り付けを考えている。技術的な口出しをせず、自主性を促す顧問の東久保愛美さん(40)は、同志社香里の強さについて「本気でぶつかり合った結果」と話す。指導者としての心得を聞いた。

■ゼロからのスタート

 私自身、中学、高校、大学でダンス部に所属していた。出身地・鹿児島県の中学で、本当はバスケットボール部に入るつもりだったけど、ダンス部を見学した友達に付き添い、ダンスは面白いと感じた。踊りを通した表現で、見ている人の心を動かせる。最先端のダンスに触れたくて東京女子体育大に進み、卒業した2003年に同志社香里中高の保健体育教諭となった。

 同志社香里はもともと男子校で、私が赴任した頃は男女共学化が始まったばかり。ダンス部は無かったけど、「ダンスをしたい」と言う女子生徒はいた。私も、ダンス部の顧問をしたかったので、生徒と一緒に、創部に向けた申請書を学校へ提出した。まずはダンス研究会を発足させ、同好会を経て、部活動として認められた。

 03年に中学1年だった子どもたちが、高校3年になった08年、ダンススタジアムは始まった。その第1回大会で、同志社香里は優勝した。小学校を卒業したばかりの子どもたちがダンス部を創るため、ゼロから積み上げていく。「いいクラブとは」「周囲から認められるクラブとは」と考え、悩んでいた。その姿を思い返すと、優勝はまるでドラマのサクセスストーリーだった。

■コーチ不在

 創部の時もそうだったけど、私は口を出さないことにしている。私が満足するための部活では意味が無いから。練習のメニューも、後輩への指導方法も、振り付けも、楽曲や衣装選びも、生徒たちに決めさせている。ダンスは「表現する」「創る」ものであり、そこが楽しい。だから、生徒たちが自らすべきだと思う。自分たちで創ったダンスで、見る人が感動することに意味はある。大会で認められたいなら、そんな部を創ればいいし、楽しい部を創るならそれでいいと考えている。

 生徒の自主性を促す考え方は、同志社香里が中高一貫校であり、6年間という時間の有利さがあるから、コーチ不在でもできる。これが、他校のように高校の限られた時間の場合は事情が異なる。3年間で目標を達成するため、コーチの指導を受けることは自然だ。

■お情け一切なし

 同志社香里が全国で優勝する強さの背景には、生徒たちの妥協しない姿勢にある。今夏のダンススタジアムでも、直前になって楽曲を変更した。もっと踊りたい楽曲と巡り合ったから。もやもやが残る中で出場したくないと生徒たちは思っていた。最後までこだわるところに、強さの理由がある。

 お情けも一切ない。先輩、後輩の間でも本音で向き合う。私自身も、大会直前リハーサルのダンスが良くなかった際は「先生の心は1ミリも動かなかった」とはっきり言うことにしている。人の心を感動させるのは本当に難しい。妥協したダンスで、誰が感動するというのか。私はそのことを教えたい。

 現在、ダンスが中学1、2年で必修化されている。「仲間と共に感情を込めて踊ったり、イメージを捉えて自己表現することに楽しさ、喜びを味わう」との狙いは、すてきだけど、授業を受け持つ先生は大変だと思う。はやりのダンスの振り付けを「完コピ(そのまま覚える意味)」することに、私は疑問を感じてしまう。ダンスは自分の心の中から出てくるものを表現することが大切なのではないだろうか。

■「1期生のつもりで」

 同志社香里のダンス部員は中学生113人、高校生73人を数える。当初は1学年に4人程度だったけど、共学化によって女子生徒が増え、部員数も多くなった。全国優勝の常連校にもなったけど、これは、ダンスが好きで部を創り、本気でぶつかり合ったことで、付いてきた結果だ。スマホが普及した現在は、参考になるダンス情報が簡単に入手できる。ある意味、今の生徒たちは「出来上がった」部にいるようなものだ。だからこそ、私は「1期生のつもりでやりなさい」と話している。

 実を言うと、今の私は、創部当初に比べて、部活動と距離を置いている。生徒たちが創りたい部を創ってほしいから。ダンス部で良かったと社会人になった時に思い返してほしいから。いつまでも支え合える仲間をつくってほしいから。

 ひがしくぼ・あいみ 1980年、鹿児島県生まれ。東京女子体育大卒。2003年に同志社香里中学・高校に保健体育教諭として赴任。ダンス部顧問、生活指導副主任。子どもの頃に見たテレビドラマ『3年B組金八先生』で、武田鉄矢さん演じる金八先生が訴え掛けるシーンに憧れ、教師の道へ。

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