【話の肖像画】作家・湊かなえ(47)(9)締め切り、家事、PTA…奮闘 – 産経ニュース

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広島県・因島の実家で、赤ちゃんだった長女と

広島県・因島の実家で、赤ちゃんだった長女と

 《平成20年、デビュー作『告白』がベストセラーとなり、10社以上の出版社から執筆依頼が殺到する。小説を3本同時に連載しながら、家庭の主婦として家事や子育てにも奮闘した》

 『告白』が出たとき、娘は小学1年生でした。映画化された22年は、ものすごく忙しい年でしたが、PTAの役員になり、各家庭から集めたベルマークの外枠を1つずつ、はさみでチョキチョキ切って整え、種類ごとに製氷皿に仕分けたりしました。

 中学校で役員を決めるときは、普段は風邪なんかひかないのに、その日に限って熱っぽくて、代わりに夫に行ってもらったんです。そしたら、くじで保健体育部の副部長になったといって、分厚いファイルを持って帰ってきました。会計と書記を兼ねた結構大変な仕事で、月に1回か2回は集まりがありました。

 締め切りがあるのに時間がないと焦っていましたが、ナース服のまま学校に来てベルマークの作業をしたり、みなさんお仕事をしながらPTA活動をされていたりしました。私は自分で仕事の時間を決めることができるのだから、よかったのかなと思いました。

 《執筆は、子供が就寝した深夜から明け方にかけてこなした》

 執筆も何もかも投げ出したいというときも、朝が来たらごはんを作って、娘を学校に送り出さなきゃいけない。泣き言は言えないんです。

 この仕事をしてなかったら、もっと口うるさい母親だったと思います。忙しくてちょうどよかったんじゃないですかね。私は、頭のやわらかい子供のうちに、県庁所在地や首都、百人一首などを詰め込むくらいがちょうどいいと考えていて、娘とは勉強のことでぶつかることもありました。夫は、仕事のことに干渉せず、いい感じで距離を保ってくれています。

 デビュー以来、休まず書き続けることができたのは、家族が健康だったからでしょう。私も風邪をひいたり、寝込んだりすることがほとんどないので、締め切りにどうにかこうにか間に合ってきた。仕事に没頭できたのも、日本各地や外国に出張して家を空けることができたのも、みんなが健康で、娘がちゃんと学校に行ってくれたからだと思います。

 《今春、長女が大学生となり、子育てが一段落した》

 コロナウイルスの影響でオンライン授業中は家にいたのですが、6月からは家を出ていきました。ああ、もう朝はお弁当を作らなくていいんだ。試合や運動会を見に行くこともないんだな。今年は、七夕の行事も忘れていたので、クリスマスにケーキを食べないかもしれない。そう思うと、ちょっと寂しいですね。

 時間ができたので、執筆がはかどるのかと思ったら、まったくそれはありません。むしろ、娘の弁当作りや塾の送り迎え、授業参観がメリハリになって書けていたようです。

 家で猫を飼っているので、今は猫と会話しています。この前は、ママ友とランチ会をしました。これからは夜も飲み会ができるよね、と話していて楽しみです。(聞き手 横山由紀子)

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