福岡県八女市の八女学院中に来春、女子サッカー部が創設される。「九州の女子サッカーの育成環境を向上させたい」と考える指導者と、スポーツによる地域活性化を期待する地元の思いが一致。将来的には小学生から高校生までを指導する、女子サッカー教育の拠点にしたい考えだ。6月28日には体験説明会が行われ、県内外から小中学生24人が集まった。
監督には、Jリーグアビスパ福岡のアカデミー(下部組織)の元コーチで、今春から同校保健体育教師となった樋口貴史さん(38)=八女市=が就任する。樋口さんは福岡大卒業後、いったん中学の保健体育教師になったが、サッカーの指導者になる夢を追い求め、2008年からアビスパに。以来12年間、小中学生世代の監督やコーチを務めながら、アマチュアの指導者で最もレベルが高いA級ライセンスを取得した。
樋口さんは、各地域の有力選手を育成する日本サッカー協会のナショナルトレセンで女子も指導していた。11年には、日本代表「なでしこジャパン」がサッカーワールドカップで世界一に輝いたものの、女子サッカーの裾野は期待したほど広がらなかった。多くの選手が中学進学を機にサッカーを辞めたり、受け皿の乏しさから九州の選手が関東や関西に出て行ってしまったりする現状にも歯がゆさを感じていた。
そんな中、八女学院中高OBの牛島啓太さん(39)=八女市=と出会った。牛島さんは同校サッカー部の創設メンバー。現在は地元で製茶業を営んでおり、八女をサッカーで活性化したいとの思いがあった。樋口さんが、選手とじっくりプレーの質を高められる中高一貫での指導を希望していたこともあり、牛島さんが同校に女子サッカー部創設を働きかけた。
八女学院は女子サッカー部の発足を機に、校内設備を改修して中学寮を設けるなど、受け入れ態勢を整える。将来的には高校の女子サッカー部も創設する。中学のサッカー部はクラブチームとして登録し、他校の選手も受け入れる。また今夏にも小学生を対象にしたサッカースクールを開設する予定だという。
体験説明会に参加した宮崎県川南町の橋口陽菜乃さん(13)は「各地から選手が集まる環境でプレーしたい。将来は日本代表を目指したい」と目を輝かせた。筑後市西牟田の田島百華さん(12)は「小学校でドッジボールをしているけれど、中学からどのスポーツをするか迷っている。兄がしているサッカーに興味があります」と話した。
樋口さんは5年後の九州一、10年後の日本一を目標に掲げる。「福岡の子どもは福岡で育て、日本代表も雲の上ではなく、手を伸ばせば届くことを伝えたい」。今後も月1回程度、体験会を開き、選手を募っていく。 (丹村智子)
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