海外ともつながる「ふれあい天文学」—ヤンゴン日本人学校の事例— – 国立天文台

花のつくりとはたらき
ヤンゴン日本人学校でのオンライン授業のようす

国立天文台が2010年より行っている「ふれあい天文学」(注)は、天文学者が全国の小中学校へ出向いて授業を行う事業です。2020年度からは新型コロナウイルス感染症対策として、従来の訪問授業に加えてオンライン授業も開始しましたが、このことは、日本国内に限らず海外の日本人学校等と講師をつなぐ授業も可能にしました。結果、海外の学校での「ふれあい天文学」オンライン授業は、2020年度は30校、2021年度の現在も43校に上っています。

その中から、在ミャンマー日本国大使館附属ヤンゴン日本人学校(以下、ヤンゴン日本人学校)で実施された「ふれあい天文学」授業をご紹介します。

ミャンマーとのふれあい

かつて国立天文台の事業でよくご一緒していた三鷹市の小学校教諭の方が、ヤンゴン日本人学校に赴任されたのをきっかけに、ミャンマーでの「ふれあい天文学」が始まりました。授業の依頼があった当初は、海外への講師派遣は難しく現実的ではないと思われましたが、隣国への出張と合わせてミャンマー訪問が可能な研究者がいたことから、現地での「ふれあい天文学」が実現しました。2019年2月のことです。その後も、2021年2月、2021年12月と、ヤンゴン日本人学校での「ふれあい天文学」がオンラインで実現しています。

そもそも、ミャンマーと国立天文台とのつながりは「ふれあい天文学」が初めてではありませんでした。2017年、マンダレー大学を会場に開催された国際会議に合わせて、「君もガリレオ!」という教育事業のワークショップを開催したところ、多くの理科教員や学生が参加し、国立天文台スタッフとの交流が生まれました。「日本への留学経験がある大学の先生や日本への留学を希望している学生も多く、友人もできた。今後もさらに交流が進むとよいと感じた」と、スタッフの一人はそのときの印象を語っていました。私たちとミャンマーとの“ふれあい”の種は、このときすでに作られていたのでしょう。

ふれあい天文学「宇宙人はいますか?」

2021年度のヤンゴン日本人学校での「ふれあい天文学」は、2021年12月8日に小学部、中学部の児童生徒を対象に、縣 秀彦(あがた ひでひこ)准教授がオンラインで行いました。授業のテーマは、「宇宙人はいますか?」です。

授業に先立ち、「自分が想像する宇宙人の姿を描いてみよう!」という課題を出しました。自ら宇宙人の姿をイメージして宇宙と生命の不思議について疑問を持つとともに、授業への期待を膨らませてもらうことが狙いでした。当日は、現地の児童生徒だけでなく、帰国中の児童生徒や教員も含めて41名が授業に参加し、「宇宙人とは?地球人とは?」という課題を通じた交流ができました。オンライン授業ながら、皆さんは熱心に、そして積極的に授業に参加していました。

ヤンゴン日本人学校の児童生徒が事前課題で描いた宇宙人の姿(例)

「ふれあい天文学」授業を終えて

今回の「ふれあい天文学」に参加した担当の先生と児童から、感想を送っていただきました。その例をご紹介します。

ヤンゴン日本人学校の先生のお手紙より:

子どもたちはとても楽しみにしていました。本番までの理科の授業では、あれもこれも質問したいと興味津々でした。「宇宙人はいますか?」というテーマも、子どもたちにとって身近なテーマでした。当日はオンラインでの講演でしたが、宇宙について理解を深められました。講演後も疑問が尽きず、お礼の感想に質問をたくさん書いていました。オンラインでもふれあえる、本当に素敵なイベントをありがとうございます。

ヤンゴン日本人学校の児童のお手紙より:

今日は宇宙人は居るのか?居ないのか?という話をメインに話してくれましたね!聞いていて面白かったです!宇宙のことも私が知らないことがたくさんあったので勉強になりました!

事後に送っていただいた感想のお手紙(辻あゆみさん、小学6年生)

昨年2月のクーデター発生から1年。窮屈な生活を強いられているミャンマーの皆さんに私たちができることは、天文学の楽しさを伝えることであり、それが遠く日本からミャンマーの皆さんに送るエールだと思っています。今回、このようなテーマを選んだのは、国籍や人種は本質的には何の意味もなく私たち全員が「地球人」であるという意識を持ってほしかったからです。送られてきた感想からヤンゴン日本人学校の皆さんにも私たちの思いが届いたように感じられました。

今回お世話になった関係者の皆様、ありがとうございました。

文:藤田登起子、縣 秀彦(国立天文台 天文情報センター)

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