初の大学入試共通テスト、出願開始 形式で迷走、コロナ休校…現場「粛々と準備」 – 東京新聞

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大学入試センターで始まった大学入学共通テストの出願受け付け=28日午前、東京都目黒区で(共同)

新型コロナウイルスの感染拡大による高校の長期休校に配慮し、当初予定の来年1月16、17日を「第1日程」とした上で、同30、31日に「第2日程」を設けた。大学入試改革元年は異例の形となる。

出願は郵送で受け付け、締め切りは10月8日(当日消印有効)。センターによると、大学や短大など計860校以上が共通テストを利用する見通しだ。

共通テスト創設は入試改革の目玉の一つ。「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」を一層評価するために導入が決まった。

英語では民間検定試験を活用し、国語・数学には記述式問題を導入するはずだった。しかし、民間試験は経済格差や地域格差を広げ、記述式も採点ミスの可能性があるとの批判が広がり、昨年、中止となった。センター試験と同様、マークシート式のみで実施される。

第2日程は、校長が新型コロナの影響で学習遅れがあると認めた現役生が受験可能。第1日程に申し込んだ受験生が病気などで受けられなかった場合も、第2日程にスライドできる。第2日程を選んだ受験生が欠席した場合に備え、2月13、14日に特例追試験が設けられた。

◆「みんな不安、だから強気でいこう」

全国の高3を対象にした7月の文部科学省調査では、第1日程を検討しているのは約43万人で、第2日程は約3万人。コロナの影響で高校によっては授業が遅れ、今後の流行状況も見通せないため、大学の個別試験では、高3で学習する内容の一部を試験範囲から除外したり、追試験日を設定したりする。

来年1月に初めて実施される大学入学共通テストは、改革の目玉となるはずだった記述式問題と英語民間検定試験の導入が見送られた。今春は新型コロナウイルス感染拡大による高校の長期休校も。高3生は外部環境に振り回され続けたが、高校側は学習遅れに対応しながら「粛々と準備するだけ」と冷静に受け止める。

「基礎、基本をやっておくべきことに変わりはありません」。26日、東京都内で大手予備校の代々木ゼミナールが開いた共通テストの研究会。参加した高校教員は、講師による模擬問題の分析や出題傾向の説明を熱心に聞いていた。

大学入試センター試験と同じくマークシート式のみだが、出題スタイルや配点には一部変更点もある。神奈川県立湘南高の池上新悟教諭(37)は「問われ方が変わる部分もあるが、センター試験と大きくは変わらない。生徒には『みんな不安を感じているから強気でいこう』と伝えている」と話す。

◆受験生「気が楽と言えば楽」

記述式などの中止が決まったのは、本番まで約1年と迫った昨年。英検を受けたり、記述式を含む対策模試に取り組んだりしていた東京都品川区の高3の男子生徒(18)は「大きな変化がなくなり、気が楽と言えば楽」。

ただ、休校中は家庭学習で、再開した6月以降も短縮授業が続き、元通りの授業時間になるのは10月から。「残り3カ月半しかないが、少しでも得点を伸ばせるように頑張りたい」と気を引き締めた。

◆「救済にならず」第2日程に疑問の声

全国高等学校長協会の萩原聡会長(都立西高校長)は「表面的には学習が終わっても、定着や深い理解が厳しい可能性もある」と懸念を示す。一方、約3カ月間休校した静岡聖光学院中・高(静岡市)の田代正樹副教頭(43)は「学習遅れの影響はほぼなく、やるべきことを進めている」と説明する。

多くの教員が疑問視するのが、コロナ対策で設けられた第2日程だ。同じ日やその直前に入試をする私立大もあり、ある都立高の教員は「救済策や配慮になっていない」と批判した。

(共同)